ダークサイドに行った七色
「もう、空っぽだ」
人間というものは、何かを得るのに時間がかかるが、何かを失うのは一瞬だ。
俺は全てを失った。俺の持っていた全てを失った。
新人のシコリストに勝負で負け、仲間2人を、凩まで奪われることになった。
今のままの状況で七色の極楽鳥花のリーダーを務めるなんて、口が裂けても言えない冗談だ。
まさに、最悪の状況。前までの極楽鳥花は、僕の力では取り戻せない。新しいギルドをまた作ってみようか。いや、それは何度も考えた。だが考えるたび、僕は自分が、あの二人の代わりを探しているような気がして吐き気がする。あいつらの代わりなんて、いないのに。なら、、
一度全てをリセットしてしまおう。
極楽鳥花の幻影を追っても、意味がないことはわかっている。あいつらは俺の唯一無二の仲間だ。だからこそ、俺はあいつらを引きずって惨めに生きるわけにはいかない。だから俺は、情けない自分にケジメをつけなきゃいけない。
もはや畜生だろうと、なんだっていい。そのために俺は今から、工藤と康二、凩、そして泰雄を殺しに行く。七色昴は一度死んだ。昔の俺を知っているものは、全て殺す。
はははははははははははははははははははははは!!
シコリストであろうと、仲間であろうと、玉魂特戦隊だろうと、スピリストだろうと!!!!!!!!!!!
殺す、殺す、殺す、殺す、殺す。
第二の人生の始まりだ。
ブー、ブー
『あれ、七色さんから連絡だ。どうしたんだ、出て行ってから音沙汰もなかったのに。』
そこには、
いつもの廃工場で、アスレチア最後の集会をする。
とだけ書かれていた。最後の、という言葉に不穏さを感じた私が廃工場に向かって歩き始めた、その時。真後ろからかなり強い衝撃が襲った。
「ぐあっ、なんだ!?」
「コレハコレハ、上位ギルドノ結界師、マモルコガラシジャナイカ。俺の金稼ギニ付キ合ッテクレルカ?」
私は、建物の屋上に敵がいるのを確認した。あの武器と顔は、おそらくギルド五位のリーダー、龍威。
「今はお断りします。私は急いでおりますので、邪魔をしないでもらえますか?」
「NO、デスネ!」
「多重磁結界!」
高密度の結界を押し出し、敵を穿つ技だ。
やつは地上に降り立ち、三節棍を高速で振り回し始めた。間違いなくやつは、私の結界を受けるつもりだ。
「アイヤーーー‼︎」
そう叫び、ロンウェイは私の最初の結界を叩き割る。だが、割られたのは一枚だけだ。あの光は、何百枚にもわたって結界が圧縮されたもの。すぐに次の結界がやつを貫くだろう。
しかし予想に反し、やつはさらに三節棍の速度を上げた。そして2枚目の結界に二撃目を当て、3枚目、4枚目と割っていく。
私はさらに結界を早く押し出した。
『アアァダァァァァ!』
「うおおおおおお!」
ドゴオオオン
奴の側から爆発音がして、あたりに石煙が充満した。私は当たったことを確信し、その場を去ろうと後ろを向いた。その時、後ろから強烈な殺気を感じた。
「なんだ?」
後ろを向いた。次第に石煙が晴れると、
「オモッタヨリヤワラカインデスネ、アナタノ結界ハ。」
筋肉量が明らかに増したロンウェイが姿を現した。やつは持っている三節棍をしまい、背中から寸胴のように大きなヌンチャクを取り出した。
「言ってくれますね!」
私はもう一度多重磁結界を放つ。しかし、やつは余裕の顔をして、片方のヌンチャクを投擲した。
バリバリバリ!
「なっ!」
一瞬で俺のバリアが割られ、ヌンチャクがこちらに迫ってくる。私は後退りをしながら結界を出し続け、自分に当たる直前のところでヌンチャクを押し戻した。そして顔を挙げると、ロンウェイがいない。
「ワタシノコウゲキハココカラデス!」
真上から声が聞こえ、奴のかかと落としが飛んでくる。
「ぐああっ!」
私は奴の蹴りをもろにくらってしまった。威力でわかる、私はこいつには勝てない。こんなところで足止めされている場合じゃないのに、くそッ!
「アァァーイ!」
すかさず奴の腹パンが飛んでくる。私は血を拭きながら、宙に吹き飛ばされた。そして私は、空中であることに気づいた。
「七色さん!?」
七色さんの魂力を感じる。しかし、私は今、廃工場からかなり遠い場所にいる。それなのに何度も感じるということは、高出力で何かと戦っているんだろう。
集会を奇襲されたのか?ならばいち早くいかなければ。私のせいで仲間が死ぬのは、もうごめんだ。
「ヨソミシテテイイノデスカ?」
ロンウェイが私の真横に現れる。そしてまた、かかと落としの構えをとった。このまま地上に叩きつけられたら、間違いなく死ぬ!!
ガスっ
「コレデオワリ、ハン?」
奴の踵が、私の頭に直撃した。しかし、
「誰が…終わりだって?」
凩は自分の足元に強力な結界を張り、自分を押し上げつつやつに両手を構えながら立ち上がる。
くそ、もう視界がトびそうだ。だが、ここしかない!
「多重磁結界!!」
「ウソ!」
やつは両腕で多重磁結界を受け、遥か遠くに吹き飛んでいった。
おそらく死んではいないだろうが、奴を遠ざけられたなら万々歳だ。
はっ!
また七色さんの魂力が。早くいかなければ。
凩はボロボロの体をひきづりながら、廃工場へと向かった。だが、彼が到着した時には日が暮れており、メンバーの魂力の反応は感じられなくなっていた。
「はぁ、はぁ。やっと着いた。みんなはどこへ…?」
凩は、ハッとして鼻を塞いだ。工場内から、死体が焼ける匂いが漂ってくる。凩は強烈な悪寒に襲われた。
七色さんは、大丈夫だろうか?
凩は息を殺して、工場のドアを少し開ける。そして、彼の目に映ったのは、、
仲間の死体を燃やし、座って俯いている七色だった。
「うわああ、みんな、何に襲われたんですか!ごめんなさい、また私はみんなを守れなかった。なんてことだ、、、どうして…‼︎」
「ああ、凩。来たのか。」
「七色さっ、!?」
凩は目に映ったものに、大きく困惑した。
そういえば、敵に襲われて、七色さんは生きているのに、敵の死体も血痕も見当たらない。なら、死んだみんなは狙撃でもされたんだ。きっとそうだ。だってそうじゃないなら、そうじゃないなら、、、
七色さんに着いてる返り血は、なんだって言うんだ…!
「わかったか?凩。」
「は?」
「俺は、もう昔の僕じゃない。生まれ変わったんだ。だから、俺は過去を完全に終わらせないといけない。みんなには、その犠牲になってもらった。」
「何言ってんだよ、七色さん?あんたは一番、ギルドのことを思って戦ってたじゃないか!」
「だが、お前達は俺に釣り合ってない。俺がいないと何もできないお前らには、もううんざりなんだよ。だからリセットしたんだ。」
「…あんたは私たちのことを…恨んでるか?」
「ああ、だがそれももう終わったけどな。」
あまりの言い分に怒り心頭の凩は、声を荒げる。
「バカを言うな!何がリセットだ!あんたを守ったあの二人は、二人は、自分の弱さを悔やんでたんだ。あいつらはよく、自分がいつかギルドを持ったら、七色さんみたいに強くて優しいリーダーでありたいって話してた、それだけあんたのことを尊敬していたんだ。でもあの時ピンチになって、追いやられて。それでもあいつらはあんたが勝つと信じて、自分の命まで捧げた!あいつらは、誰より強えよ。そして、あんたは弱え。弱さは恨むもんじゃなくて、悔やむもんだろ!!」
七色はハッとしたような表情をしたが、すぐに怒りを露わにした。
「黙れよ。。結界師の分際でよぉぉ!!」
七色が魂力を解放した。
「属性昇華:嵐!!」
七色の両脇に、雷をまとった大きな竜巻が降り立つ。
「ならば、弱さを悔やみながら、死んでくれ。」
2本の竜巻が、満身創痍の木枯らしを襲った。