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こんなところで、、死ぬのか?俺は確かに言ったよ。シコるだけの人生よりはマシだ、と。
だがまさかこんな初期の初期に。ダサすぎるぜ、俺。いや、それは元々か。しかし、変な最後だなぁ、まだ何もできてねえのに…
突き破った天井と、母の顔が思い起こされる。
せっかくの走馬灯なのに、結局記憶に残ることなんておナニーしかないらしい。息子の情景しか浮かばないなんて、。まだ何も…そうだよ、まだ俺は何もできてねえ!
「死んでたまるかああああ!」
俺は反射的に右手で振り払った。
そして数秒後、男の悲鳴が聞こえてきた。
「ぎゃああ、なんだこりゃあああああ!?」
恐る恐る目を開けてみると、衝撃的な光景が広がった。
2本目のナイフを持っていたはずの左手は吹き飛び、鼻も抉れている。
そして俺の息子は、またもやギンギンにボッキしていた。
やはり理解が追いつかず、大男の方を振り返る。
「お、済んだのかい?『金稼ぎ』」
「あんた、、」
男の手には、八つの玉があった。
「それは…?」
「奴らの金玉さ。」
「なんだそれ…あんたやべえなww」
!?なんだ?急にめっちゃ眠くなってきた。
眠気に襲われ、俺は地面に横たわった。
「おい、大丈夫か?」
大男が心配して駆け寄ってくる。
俺は完全に瞼が閉じる前、大男が殺し損ねたであろう荒くれが、ナイフを振り上げたのを
見た。逃げろと言いたかったが、俺の口はもう動かなかった。
「おっっっさん!!??」
俺は叫びながら目を覚ました。
どうやら、ここは集落の周りの山の頂上らしい。さっきの街が下に見える。
「おお、早いな、もう目を覚ましたのか。」
「っ!おっさん、大丈夫か?」
「何がだ?」
「あんた、最後殺し損ねたやつに刺されてたろ?動けるのか?」
おっさんは何食わぬ顔をして答えた。
「ああ、私はね、急所や致命傷になるような攻撃以外は全て効かないんだよ。
これが私の、『バース・シコリティ』なんだ。」
意味がわからない。それも今更か。
「つまり、一撃必殺以外は無効ってことなのか!?」
「そうそう、理解が早くて助かるよ!」
こうして、俺の右腕にまつわる、地上波で放送できない夢物語が、幕を開けたのだった。
「なあおっさん、名前なんて言うんだよ?」
聞くのを忘れてた。というか、いきなり興味が湧いた。
「んー、残念だけど本名は伏せてあるんだよねぇ。ただこっちの世界じゃ
『マキシマムtkb』なんて呼ばれている。まあ自由に呼んでくれたまえ。」
「マキシマム乳首か、よろしくww」*以下、乳首と略す
少し引き気味に反応してやった。てかそう呼び始めたやつセンスおわりすぎだろ…
その後、自己紹介も交えて少し話した。結局、乳首ネームの所以は聞き出せなかった。
「なあ、握くん。君はさっきの戦闘を経て、立派なこの世界の人間になった。だけどね、さっきの5人を殺して、俺たちにどれだけの金が入ってきたと思う?」
「まあ3万円くらいかな」
殺しだぜ?いくら治外の場所とはいえ、一人1万は貰えないとこのゲームは成立しないだろう。ただ、これは敢えて低めに答えておこう。
「ははは、あのレベルの雑魚を倒して3万も貰えるほど、イージーなギャンブルじゃないさ。」
まさかの。手練れた方法で隠し玉を使い、俺を殺しかけたあの男たち。彼らでさえも、この世界では’’雑魚’’らしい。
「うーん、じゃあ何円くらいになったんだ?」
「まあ全員あわせて、八百円てとこかな」
「まじか!!」
「これが君の取り分ね。」
驚く俺に、乳首はポッケから取り出した二百円を手渡した。
命をかけたってのに、これじゃコンビニ弁当すら買えないじゃないか。
とはいえ、おっさんがいなかったら即死していただろう。今は何も文句は言えない。
「あ、ありがとう。おっさん!ちなみに、俺の価値はどれくらいなんだ?」
奴らが百円単位なら、俺はうまい棒2本分くらいの価値しかないだろう。間違いない。
おっさんは、徐にスマホを取り出した。その後、困った顔をしてこっちを見た。
「いやぁ、バグなのかよくわからないんだけどね。握くん、あんた只者じゃないだろう。君の価値は、マイナス五兆円、らしい。」
「ん?」
聞き間違いだと思った。桁もめちゃくちゃだし、あとマイナスって言ったか?このおっさん。
「マイナスって、俺のことを殺したらそいつはどうなるんだ?」
頭をかきながら、おっさんは答える。
「この場合、その分の値段を逆に払うことになるだろう。無論、五兆円も持ってる人間なんて見たことないから、そいつは問答無用で借金を負わされることになるな。と言うか、マイナス自体そう見ない。前世で何かやったのかもな!ハハハ!」
「どうせ前世もシコリストだよw」
笑いながら答えた。
「てか、それって誰も俺を殺せないから、割と最強なんじゃないか?」
「そうだねえ、よっぽどの物好きじゃない限り、君を殺そうなんて思わないだろうさ。
君は運がいいねぇ本当に。」
「そうなの、、かな?」
そうは言われたが、素直に喜ぶことはできなかった。俺は本当にこの世界に入るのか?
入っていいのか?冷静になって考えても、やっぱり一つも意味がわからない。
そして、俺はこの先生きるために、大勢人を殺すことになるだろう。
そもそも、俺はまともに生きていられるのか?手練れの暗殺者が雑魚と呼ばれる世界だ。
さらに咄嗟に出たあの攻撃と、直後の昏倒。命を削っているようにも思える。
大人しく普通の世界に戻り、自分と向き合って生きていく方が大事ではないのか。
そんな弱気な考えすら浮かんできた。
「まあ、実感が湧かないのは当たり前だ。君はやつを、自分の意思で殺したわけじゃないからな。その点、今なら君はまだ実社会に戻ることもできる。この世界に入るか決めるのは、まだ早いんじゃないのか?」
乳首は、俺の心の中を見透かしたような質問をしてきた。
だが俺はー
「この世界に入る。」
「なに?」
「もちろん、金とか、シコってるよりマシなんて言う理由じゃねえ。俺は見つけたんだ。自分の居場所を…俺は実社会で、自分の息子も右腕を恨んで生きてきた。こんな体で最悪だって。でも、本当は逆だった。個性が俺の居場所を作るんじゃない、俺が自分の個性の居場所を作ってやらなきゃいけなかったんだ。どんなに過酷な世界だろうが、俺は自分を誇れる場所で生きるって決めたんだよ。」
俺は息を切らしながら自分の心情を明かした。そして息子もそれに答えたのか、少し
ボッキしていた。
「やっぱり君は面白いな、」
苦笑いしながら乳首が言う。
「んじゃあ疑似体験といこうか」
「模擬体験?何をするんだ?」
乳首は顔を変えて言う。
「握くん、いや、右腕のシコリスト。私と戦おう」