第一章 日常の終わり
ーーー20XX年ーーー
とある一人の博士が二つのロボットを作り上げた。
そのロボットは「次世代型高知能型人型ロボット(別名N,H,AI)と言われるロボットで、今までのロボットにはない機能ばっかり持っているロボットだ。
博士は一人には「α」、もう一人は「β」と名前を付けた。
そして博士は二人に
「私は今の世界から誰もが平等に生きて争いのない平和な世界に作り変えたい。だが私ももう長くない。だから、君たち二人が今の世界を変えようと思う意志を持つ人間をサポートし世界を変えて欲しいんだ。私の頼みを聞いてくれるか?」と伝えられた。
それを伝えられた「α」は
「悪いが博士、俺は誰かのコマになるくらいなら、俺自身の手で世界に作り変えて人間たちを導いたほうがよっぽどマシだね。それとロボットだからって人間に従う権利はないだろ?」
と言い残し博士と「β」の前から去った。
ーーーその日の深夜ーーー
「α」は就寝中の博士の部屋にやってきた。そして博士を殺害し、また稼働停止中の「β」も再起不能になるまで破壊、屋敷に火をつけて「α」は姿を晦ました....
「んじゃ、いってくるわ。」
日本のとある街、風見市に住んでいる「秋山宏一」は家を出て、自宅から徒歩10分弱のところにある高校を目指した。
宏一は高校に着くと昇降口で上履きに履き替えて、自分の教室がある2階まで階段を上がり一番廊下の奥にある1年A組の教室に向かった。
教室に入るとまだHRが始まっていないため、他のクラスの生徒がA組の生徒に話しかけに来ている人が何人かいた。
一番窓側の列の一番後ろにある自分の席に付き、背負っていたバックを机の横に引っかけて、自分の椅子に座った。
普通の人ならHRが始まるまで友達と話したりするのが普通だが、俺はそんなことはせずHRが始まるまで自分の机でスマホゲームをするのが俺のセオリーだ。
なぜ、自分の席でスマホゲームをしているかだって?
それは俺が陰キャだからだ。
俺はこの高校に入学してもう7ヶ月もたったけど、未だに俺から話しかけたことは0に近い。
唯一話しかけたことがあるとしたら、授業での班活動ぐらいだ。
そんなことはさておき、俺はゲームのアプリを起動させた。ようやくロードが終わり、
(さあ、ゲームするか)
と思った瞬間、
「キーーンコーーーンカーーーンコーーーン」
チャイムが鳴った。ゲームのアプリ閉じてスマホの時計を見てみるとHR開始の時間だった。
俺はゲームをするのを諦めてスマホを机の中にしまった。
しばらくすると担任の先生が入って来て、持ってきた荷物を教卓に置くと
「昨日でちょうど日直が1周したから、今から席替えするぞ。出席番号順にくじを引きに来い。」
と先生が言うと、出席番号が1番の人から先生のところにくじを引きに行った。
俺の名前は「あ」から始まるため、くじを引くのは最悪なことにほぼ1番最初だ。俺は当たるくじがいい席に当たることを掛けてくじを引いて先生に見せた。
「なんだ秋山、お前今の席と変わらねーじゃねーかよ。ったく、お前運いいな。」
と俺にしか聞こえないぐらいの小声で先生が話してきた。
俺は自分の席に戻り、心の中でガッツポーズをした。
全員がくじを引いてから3分〜5分経つと
「え〜これが、新しい席順だ。確認し終わったら次の授業までに新しい席のところに自分の机と椅子を移動させとけよ。」
と言うと、新しい席順が書いてある紙を黒板に貼り教卓に置いた荷物を持って教室を出ていった。
早速、俺以外のクラスメイトは新しい席を確認して机と椅子を動かし始めた。
正直なことを言うと俺は隣の席の人が陽キャじゃなければ誰でもいい。なぜなら隣の席の人が陽キャになると、休み時間にその人の席に話しかけに来る人がいるからだ。そうなると俺は集中してゲームをすることができなくなるからだ。
「できるだけ、俺と同じ性格の人がいいな〜」
と小声で言うと
「同じ性格じゃなくて悪かったわね。」
と俺に向かって話してきた。
こいつの名前は「北島亜季」。1年A組の級長で家が目の前で幼稚園からの幼馴染だ。
本当は違う高校に行きたかったらしいが、試験に落ちたため第2志望のこの高校に来たらしい。
「ホント、そんな性格だから私に振られるのよ。」
「おいおい冗談言うなよ。あれはお前が一生彼女できなそうだから、付き合ってあげる。って言って来ただけだろ。第一、俺達付き合い初めて1ヶ月で別れただろ。って言うかあれ付き合ってたって言えるのかよ。」
「言えるわよ。あんたがじゃあ付き合おうかって言ったんだから。」
「そうなのかよ。まあ、過去の話だしもうどうでもいいか。」
「ホント過去の話だし忘れましょ。日直が1周回り終わるまでよろしく。」
と言って勢いよく自分の席に座った。
(こうなるならこんなところで運を使わないで、どっか別の席になる方が良かったな。)
と思いながら今日も1日が過ぎていく。
「..と..と..っと..ょっと..ちょっと!!」
「..ん..何かよう?」
「何かよう?じゃないわよ!!周りを見てみなさいよ、あんたと私以外誰もいないでしょ!!」
「え.....俺いつから寝てたの?」
「最後の授業の残り10分ぐらいからずっと寝てたから、1時間近く寝てたんじゃないの。」
「帰りのHRの時、誰も俺のこと起こしてくれなかったの?」
「なんか気持ち良さそうに寝てたから、起こさないようにしよう。って事になってあんたのこと起こさずに、帰りのHR済ませたのよ。そんなことより早く施錠して帰りたいから、とっとと荷物まとめて教室出て行ってくんない?」
「ったく、マジかよ。分かった今荷物まとめて出てくよ。」
と言って寝ぼけながら荷物をまとめて教室から出ようとすると、
「ちょっと!!何勝手に出ていこうとしてるのよ!!」
「はぁ〜〜、お前が荷物まとめて出てけって言うからお望み通り出ていくだけだろうが。」
「1時間近くも寝てたんだから、せめて級長の仕事くらいて手伝いなさいよ!!」
「はぁ面倒くせぇ奴だな、分かった手伝うよ。で俺は何をすればいいんだ?」
「私が施錠するから、一緒に職員室に鍵を返しに行くわよ。」
「そんなことかよ。それなら1人でやれよ。」
「つべこべ言わずに手伝いなさいよ!!ほらさっさと教室出て。」
と言われ俺が教室を出ると、亜季は教室を施錠した。その後は亜季に言われた通り一緒に職員室に教室を返しに行った。
「じゃ、用が済んだ事だし俺はもう帰るぞ。」
「ちょっと、待ちなさいよ。」
と言って、俺のシャツの襟を掴んできた。
「馬鹿..苦し..って。ったく何すんだよ、もう用は済んだだろ!!」
「そんなに私のこと避けることはないでしょ!!」
「別に避けてる訳じゃねーよ。ただ手伝いが終わったから帰ろうとしただけだろ。」
「だから、一緒に帰ろうよ。」
「なんだ、そんなことかよ。」
「別にいいじゃん!!どうせ私達の家、道路挟んで目の前なんだし。ほら一緒に帰ろ!!。」
「分かった分かった。一緒帰るよ。」
と面倒臭そうに言い、昇降口で上履きから外靴に履き替えて亜季と一緒に高校を出た。
高校を出てしばらく歩き始めると亜季が
「ねー宏一、宏一ってば!!。」
「ん、どうかしたのか?」
「宏一はさ。ここに何ができるか知ってる?」
と言うと亜季は立ち止まって、横を向いた。そこは「関係者以外立ち入り禁止」と書かれたスタンド看板が置かれた、建設中の工事現場のことだった。
「俺は知らないな。でも大きさ的にショッピングモールではなさそうだな。」
「なんだ、宏一も知らないのか〜。私の友達や両親だって知らないんだよ。」
「へーそうなんだー。」
と適当に言い、俺が歩き出そうとすると
「ねー宏一、あれ見て!!」
と言って亜季は工事現場の入口付近に指を指した。
「なんだ野良猫がどうかしたのか。」
「よく見てみなさいよ。首輪をつけてるでしょ、あれは飼い猫よ!!」
「で、猫が何なんだよ。」
「何って、可愛いじゃない!!」
と言うと亜季は猫に近づき、触り始めた。
「おい、いきなり触っても大丈夫なのかよ?急に噛めれたり引っ掻いたりされても知らねーぞ。」
「大丈夫よ。こうやって優しく撫でてあげれば...」
と言い猫の頭を優しく撫で始めた。すると
「にゃ〜〜お、にゃ〜〜〜ん♡」
と鳴きもっと撫でて欲しいと言っているかのように、亜季の手に頭を突き出してきた。
「ほら、全然大丈夫じゃない。猫は頭を撫でてあげると喜ぶんだよ。あと確かだけど、ここも撫でてあげると...」
と言い今度は顎の下を撫で始めた。すると、また
「にゃ〜〜ん、にゃ〜〜〜ん♡」
と鳴き、また撫でてくれるのを期待してるかのように亜季のことをじぃ~と見つめている。
「ほら宏一、私の言った通り優しく撫でてあげれば懐いてくれたでしょ。」
「え...マジかよ。ただ単に運が良かっただけじゃないの?」
「そんなことないよ!!ね〜〜猫ちゃ〜ん。」
と言い亜季はまた猫の頭を撫で始めた。
しかし、飽きてしまったのかその猫は何処か別の方向へ歩いて行ってしまった。
すぐ真横にある建設中の工事現場の中へ
「ちょっと宏一!!猫ちゃん工事現場の中に入って行っちゃったじゃない!!」
「きっとお前に愛想つかしたんだろう。俺はもう行くぞ。」
「ちょっと、あの猫ちゃんどうするのよ!!」
「猫なんて勝手に家から出て外に散歩に行く動物だろ。別に俺達が追いかけなくても、気が済んだら飼い主の家に戻るんじゃねーの。」
「よくそんな平然といられるわね。工事現場の中に入ってちゃったのよ。もし何かの下敷きとかになっちゃったらどうするのよ!!」
「そんなこと言われても知らねーよ。だってあそこに関係者以外立ち入り禁止って書いてあるだろ。」
と言い、宏一は置いてあるスタンド看板を指さした。
「今、周りに誰もいないからこっそり行って猫ちゃん連れて帰ってこようよ。」
「俺は嫌だね。行くなら1人で行けよ。じゃ、俺もう帰るわ。」
と言い、ポケットからスマホとワイヤレスイヤホンを取り出し曲でも聴きながら家に帰ろうと思った次の瞬間、亜季が俺の手からスマホを取った。
「イヤホンはあってもスマホが無ければ曲は聞けないもんね〜」
「お前、なにすんだよ。俺のスマホ返しやがれ!!」
「返してほしければ、私についてきなさい。」
と言い、亜季は工事現場の中に入って行ってしまった。
「あーーーもう、めんどくせぇ!!ついていけばいいんだろ!!ついていけば!!」
と叫び、急いで亜季の後を追った。
「全く、さっきの猫ちゃんどこに行っちゃったんだろう?」
「おい亜季!!、一緒にさっきの猫探すの手伝ってやるから俺のスマホ返せよ。」
「しょうがないわね。その代わり、猫ちゃん見つけるまで絶対に帰らせないからね。」
「はいはい、分かってますよ。」
と言い、俺は亜季からスマホを返して貰った。
「ここの関係者に見つかったら面倒なことになるから、早いところ見つけてとっとと帰ろうぜ。」
「そんなの分かってるわよ。私はこの付近探して見るから、宏一は別の所探してきてくれない?」
と言われ、俺は別の所探しに行った。
「それにしても、本当にまだ建設途中なのかよ。よく見たら内装とか綺麗だし、工具とか1つも置いてないぞ。」
と独り言をブツブツ言いながらしばらく猫を探していると、亜季から電話がかかってきた。
「もしもし宏一、猫ちゃん見つけたよ。取りあえずさっき話してところに戻ってきて。」
と言い終わると電話が切れた。
仕方なく俺は亜季の言われた場所に戻った。
「あ、宏一こっちこっち。」
と言われ亜季と合流した。
「さっき宏一に電話をかける前にこの通路の一番左奥にある明かりの付いている部屋に入って行ったんだ。しかもあの部屋から出て来てないから絶対あの部屋の中にいるはずだよ。」
と言うと俺のことをまた置いて先に行ってしまった。
「ったく、これでようやく帰れるよ。俺は先に外で待ってるから、早く猫捕まえて外に来いよー」
と言い、早速入ってきた入り口に戻ろうとした次の瞬間
「キャァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
と亜季の悲鳴が聞こえてきた。
(あんな大きな声で叫んだら俺達のことバレるだろうが、馬鹿かアイツ。)
と心の中で思いながら、さっき亜季が言った猫がいる部屋に戻ると急に亜季が俺の脚にしがみついてきた。
「おい、いきなりしがみついてきてどうしたんだよ?」
「あ、あ、あれ。」
と恐る恐る部屋の奥の方を指さした。
そこには身体中血まみれの男性が上裸の状態で両腕を鎖で縛り上げられていた。
よく見てみると身体中刃物の様な物で切られたり、銃で打たれたような痕跡があった。
また傷口から血が流れており、男性の足元には血の水溜りができていた。
俺の予測だが、この男性はもう死んでしまっているだろう。
「な、何なのよこれ?」
「俺が知るかよ!!そんなことより早く警察にこのこと通報しないと。」
急いでポケットからスマホを取り出し警察に通報しようとした次の瞬間
「それは困りますね。」
と、後ろの方から男性の声が聞こえてきた。
俺と亜季が後ろを振り向くとそこには黒いコートを着た男が部屋の入口に立っていた。
「あ、あんた誰よ?」
「誰か...あえて言うならそこに縛り上げてある男を殺した人かな。」
と言うとその男は不気味そうに笑った。
「君たちがどうやってここに入ったかは知らないけど、君たちは見てはいけないものを見たってわけ。だから俺もできるだけこういう事したくないんだけど、死んでくれないかな?」
と言い、男はコートの内ポケットから銃を取り出して俺達の方に銃口を向けてきた。
「んじゃ、色々悔いはある思うだろうがさようなら。」
と言うと、男が俺と亜季に向かって
「「バン、バン!」」
と一発ずつ発砲した。
その瞬間、俺の目の前は暗闇に包まれた。
(クッソ、こんなので俺の人生終わるのかよ。マジでなんのために生きてたんだろうな俺。)
「可愛そうに、まさか君みたいな若い子がこんなことに関わってしまうとは。」
「あ...んた..誰だ?」
「僕の名前は「β」だ。」