村2
妄想の続きです。
私たちは村長さんのところに元『聖獣』は帰ったと報告する為に向かおうと振り返ると、一番近くの家の影から皆がぞろぞろと出てきた。
……絶対キース気付いてたよね?……
「ありがとうございます!ユキリア様!」
一人の獣人の人が泣きながら、私のそばにやってきて御礼を言った。
「…お前たち、見ていたのか!」
お父様が鋭い目付きに変わった。
…あ、この目付きはヤバい…。
「オーランス様、この村の者たちは大丈夫ですよ。何回か通っている間に見極めましたから」
「…キースが言うなら…」
「ユキリア様は『神の愛し子』様なのですね」
村長がそう言いながら前に出てくると、膝を付き、胸に手を当ててお辞儀をした。他の村人も女性もカーテシーではなく、男性と同じように敬礼している。
私はこういうのが苦手なのでおろおろしているとキースはにっこり笑って前に出た。
「皆さま、ユキリア様はそのように持て囃されるのは苦手です。今まで通りにして下さい」
「…!?…しかし…!…」
「しかしなんてありません。言う通りにできないのであれば滅します」
……な!?……キース!?なんてこと言うの…!?…
私が青ざめた顔でキースを見ながら首をふるふるすると、キースは冗談ですよ。と笑顔で答えた。
……キース、……絶対、本気だったよね!?…
村長さんたちはキースの言葉に恐怖し、とりあえず恐る恐る立ち上がっていた。
「お前たち!このことは絶対誰にも言うな」
「もちろんでございます!そもそも、この村自体が秘密の場所のようなものではありませんか」
私は意味がわからなくて、首を傾げた。
「……ヘックシュン!…あ。ごめん!」
今までずっと大人しくしていたタクスがくしゃみをした。どうやら今まで空気を読んで、ずっと喋らずにいたようだ。
「あぁ、皆さまずぶ濡れです!…とりあえず、この家に!お湯を準備します!」
一番近くの家で皆お風呂を借りて暖まった。私だけ女の子なのでキースが抱っこしてくれて、走って私たちの畑の家まで連れて来てくれた。着替えもあるから安心でゆっくり湯船に浸かって暖まった。ロウガもハクトも一緒に走って着いてきてたので一緒に入る。キースは私たちがゆっくり入っている間にお父様たちの着替えを持っていったようだった。
私が出るとキースはもう乾いているようで、キースは入らなくて大丈夫と言っていたけど、手が冷たかったのでキースも入るようにと、無理矢理入れた。
私は魔道具で髪を乾かしたり、ロウガとハクトを乾かしたりで時間かかるから、キースもお風呂に入ってちょうどよかった。
さっきの家に向かうと、もう皆が話し合いをしていた。
「ユキリア様、おかえりなさい」
村長さんが今までと同じような感じに戻っていたので安心する。
「キースが大丈夫と判断したから、今までの経緯を説明していたところだ」
「はい。ユキリア様のことは誰にも言いませんし、今までと同じようにすると、決心した所です!……ところで、ノエル様は?」
…村長さん…ぶれないねー。…うん、これは安心だわ…。
ノエルは外が晴れたから、畑に貯まった水をすくっていると言うと、あからさまに肩を落としていた。
「ねぇ、お父様。この村が秘密のようなものってどういうことなの?」
「私から説明しますね」
村長さんが今までのこの村の経緯を説明してくれた。
元々、この村は村長さんたち2人しかいなかったが、魔森を抜けて来る者が度々現れて、ここに住ませるようになったそうだ。そして、さらに昔、村長さんたちがここに来る前の話、まだここまで人族とエルフ、獣人と交流が持てないほどの魔素がひどくなく、魔森を普通に通れる時代は人族とエルフ、獣人の交流もあったそうだ。しかし、エルフも獣人も貴族階級はなく、そこから誤解されだし、人族は寿命が短いこともあってか代替わりする毎に徐々に差別したり、奴隷にしたりと扱いが酷くなっていったようで、交流が持てなくなった今になっても、エルフの中にも獣人の中にも、人族を嫌っている者も多いらしい。お父様が辺境伯として、爵位と土地を与えられた時に、ここを見つけ、揉めたこともあったらしい。
だが、ここは人族の国の土地であり、なお、その時は魔物が多く、人とこの村の人が争っている場合ではないひどい状態であったと。幸い、先王の時代から、差別、奴隷化を禁止しているので、それをなんとか説明し、魔物はお父様たちが退治するようにして、お父様たちとこの村の人たちは和解したようだ。
それでもしばらくはギクシャクしていたが、お父様が食糧を調達したりしている間にギクシャクも緩和され、更に王様がアカリさんを連れてきてくれて、この辺りの土地を少し浄化してくれたらしい。そして、何とか畑ができるようになり、魔物を苦労して狩って食糧を手に入れなくてもよくなり、この村の人々は余裕ができ、お父様たちに感謝するようになったそうだ。
それで、この村はお父様の領地の一部になったらしい。だが、やはり人にはまだ差別、奴隷は根付いているところもあり、こっそりとエルフや獣人を奴隷としている人もいると聞き、ここは王様の計らいもあって公にはされず、地図にも載せてないそうだ。王様は奴隷としている者を見つけ次第、罰し、奴隷にされていたエルフや獣人をここに避難させているんだとか。この村は魔森と隣接しているので人は近寄らず、今までもバレずにいるらしい。
王様もこの村は気にかけてくれているようで、牛や羊、犬なども王様から送られてきたようで、今となってはここの村の者たちはもう人族の国の者という気持ちでいると教えてくれた。
それでも、やはり母国というのは気になるもので、先程の『聖獣』様が母国を守ってくれるというのは、とても頼もしく、私には感謝しかないと、また獣人の人たちが泣き出した。
この国は今、『聖女』がいることでかなり平和らしい。エルフの国も獣人の国も何とかなっているが魔物の出現は絶えない状態がずっと続いているようだ。この村の人たちは母国が心配ではあるが、魔森をもう一度引き返す勇気はないらしい。ここまで来るのに何名か命を落としてしまっているようで魔森は恐怖であると。
この国に現『聖女』が現れる前に現れたのがエルフの国で、その前が獣人の国だったらしく、獣人の国は『聖なる者』が現れてから、だいぶ年月が経ってしまっていることと獣人の国には神聖樹がないことで、更にひどい状態だと泣きながら教えてくれた。その為、また『聖獣』様が復活し、救ってくれることの安堵と感謝は計り知れないものだという。
「…この世界って、ほんとに大変なんだね。…下手したら滅びそうなくらい…」
「そうですね。神様も『聖なる者』が足りないと仰られていたので、また送られてくるかもしれないですね」
「…あの、…キース様はなぜ神様が仰られていることを知っているのですか…?…お告げですか?」
「あれ?お父様、キースのこと言ってないの?」
「まぁ、説明がめんど……分かりやすくなるように省いたとこもあるからね…」
……お父様、今、面倒くさいと言おうとしてましたよね…?…こうなったら、どこを言って、どこを言ってないのかわかんないじゃん!
「…はぁ、この村の者たちはもうユキリア様の配下のようになりつつありますので、全て説明しますね?」
………はい、…どうぞ…。
こうして、また私の経緯全てを一から説明し、キースのことも言うと今度は村長さんが泣きながらキースの手をとり、感謝の言葉を述べていた。
現『聖女』アカリさんが訪れてから、何とか畑はできるようになったものの、採れる作物の質は悪く何とか食べれるぐらいまでの物しかできず、また牛や馬も魔物に襲われることもあったらしい。私とタクスが産まれた辺りから質が良くなり、魔物も激減したそうで不思議に思っていたが、今、私のことの話を聞いてから辻褄が合い、キースに私のことをお願いしますと泣きながら言っていた。どうやら、エルフと獣人には『神の愛し子』と『聖なる者』はまた別者という認識らしい。『神の愛し子』は魔物を浄化して魔物と契約できるという認識で辺り一面浄化できることは知らなかったらしい。まぁ千年間、『神の愛し子』はいなかったから人族もどういう認識をしているかわからないけど。
「ユキリア、ほんとに国が創れそうだな!」
タクスはわかってなのか、わかってないからなのか軽い感じで言ってくる。
……うん。……『始祖』様、わかりました。…こうして、国が出来上がったのですね……。
「はい!もうここで終わり!俺たちもキースのことを『守護者』様という扱いは禁止されているんだ。この村の者たちも巻き添えだ。俺たちと同じ思いを抱きながら、普通にするように!」
お父様は笑顔でそう言った。まるで仲間ができた!という表情だ。ここでは領主として一人称を私にしてたのに、もう崩れている。
そして、村長さんは村の代表として返事をして、今まで通りになんとか戻ったので私たちは帰った。まぁ、村長さんや村人さんたちはキースのこと今までも様付けして呼んでたから、あまり変わらない気もするけどね。
誤字、脱字、読みにくいなどあったらすみません。
読んでくれた方に感謝を。




