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『理なき世』に探偵は生きる  作者: 小 文具
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Page.10 罪人の標は幻想より出づる白き獣か:後編

《前回までのあらすじ》

魔獣の捜索から一転、魔獣を保護しながら逃走することになった探偵達。

二手に分かれ、イチコは警部と合流、センリはそれまで時間を時間を稼ぐ事に。


なんやかんやでダイナミックな逃走劇を広げるセンリと魔獣リーヴぺガスのツノネコ(仮称)だったが、見物をやめて本腰を入れた黒服の隊長格、キラーペイン・バグイーターの爆撃による包囲で追い詰められてしまう。


センリは奇襲をかけて切り抜けようとしたが、行動を見切られ、反撃で放たれた弾丸が彼の胸に突き刺さった。

「ふきゅーーっ!ふぅぅうーーーっ!」


左胸に穴が開き、仰向けに倒れて動かないセンリ。

ツノネコは彼を庇うように黒服達に威嚇するが、気にも止めない黒服の隊長、バグイーターに首根っこを掴む形で捕獲される。


「本当にバカだなぁ!必死こいて逃げ出したテメェも、テメェを庇って死んだコイツも!最初っから大人しくしてりゃあ、このバカも死なずに済んだのによォ!」

「ぐぅぅうぅーっ!ふゃぁっ!ふゃぁーっ!」


ツノネコは隊長の言葉を理解しているのか、凄まじい形相で暴れ藻掻き、必死に噛み付こうと牙を動かす。

しかし届く筈もなく、黒服が用意していた捕獲用ケースに放り込まれてしまう。


ガタガタと小刻みに揺れるケースを一瞥し、嘲笑する隊長。

彼の所業に耐えきれなかった黒服の1人が、流れを遮るように報告する。


「ば、バクイーター隊長!誘導に使用した、マイクロ爆弾による爆発の被害なのですが!幸い、住民に死傷者は無いようですが、使用量相応の破損被害が出ています!この後処理は、ゴハッ!」


報告の途中で、急に振り向いた隊長の拳が、黒服の顔面へとめり込んだ。

サングラスの破片が飛び散り、殴られた黒服は後頭部から地面へ激突する。その顔の側面を踏みつけ、睨んだ隊長が返事を返した。


「マイクロ爆弾?破損被害ぃ?お前、どうしようもないバカだな?街で起きた爆発事件は、この探偵が起こしたテロ行為!オレらはそれを止めた正義のヒーロー!違うか?」

「!! そ、そんな事、とても許される事では、ガアァァァァァッ!!!」


反抗しようとした黒服の顔を、何度も、何度も、容赦無く踏みつける。右手でクルクルと回した拳銃を、地に伏した黒服の背中に向けて言い放つ。


「死人に口なし、って知ってるか?生きた奴が絶対、死んだ奴は悪なんだよ!それともアレか?お前も『悪』になってみるか?」


「ぐうぅっ!さ、賛同出来ません!自分は!そんな罪を背負って、生きていけません!!」

「!! お、おいやめろ!隊長!彼は錯乱しているだけです!どうかここは、冷静な判断を!」


先程まで後ろ手を組んで待機していた大勢の黒服達も、隊長の行為を見てどよめきだす。

しかし、それらの雑音は、1発の銃声で全て掻き消えた。


「!! あぁっ!うわぁぁぁあぁっ!腕!腕がぁぁあっ!」


踏みつけた黒服の左腕から、血が流れていた。

持ち主は悲痛な叫びを上げ、周囲の黒服達は絶句する。

発砲した拳銃の煙を手首のスナップで払うと、隊長は全員に向かって怒りの籠った絶叫を放つ。


「ガタガタガタガタうっせーんだよバカ共ォ!!!テメーら仕事できねぇゴミ野郎のクセして、何オレに向かって口出ししてんだ!アァ!?このケダモノを確保出来たのも!このクソガキを誘い込んだのも!全部オレの功績だろぉが!!!無能で愚鈍でバカのクセに!口だけは大層な木偶の坊だらけだなぁ!?誰かになんか言われねーと動けねー、バカのフリーマーケット共がよぉ!?」


その主張に反論できる者は、今この場に存在しなかった。

知略と暴虐に支配された空間で、支配者に逆らう勇気がある者は、弾丸に胸を貫かれ、ピクリとも動かない。


黒色の静寂の中、隊長は未だに揺れている捕獲ケースを手に取り、1つ溜息をついて話を切り上げる。


「ケッ!まあいい、この辺にしといてやる。サッサとコイツを会長サマんとこに―――」


その時だった。

雲ひとつない空を駆け抜ける1つの物体が、この屋上目掛けて飛んでくる。


ズガァァァアンッ!と派手な音を立ててフェンスを突破し、隊長と黒服の間に静止したその物体の正体は、飛行形態に変形したバイクに跨った、ガルバノート・ガリウス警部と、彼の背中に必死で捕まっていたイチコだった。


圧倒的な威圧感でこの場を制していたバグイーターの表情が、一瞬で驚愕と焦燥に染まる。


「が、ガルバ、ノート!?どうしてココに!?しかも、そのガキは始末した筈!何故だ!?どうなっている!?」


そう聞かれると、警部は自分の耳元を指す。

黒服達が装備している、無線通信機がそこにはあった。


「悪いね、キミが追い込み作戦を伝えた時から聞いてたから、急いで飛んできたんだ。あと、始末したって報告したのもボクだよ」

「アンタの悪行三昧、全部筒抜けだぁこの野郎!ぎゃふんって言ってみなってんだ!」


激情が頂点に達したバグイーターは、捕獲ケースと足元の黒服を払い飛ばし、警部達の後方に居る黒服達に怒鳴り散らす。


「テメェらァ!ソイツら絶対ぶっ殺せェッ!!!じゃなきゃオレがぶっ殺すぞォッ!!!」

「ヒッ!う、うおおぉーーーっ!!!」


恐怖に支配された黒服達は、命令に従う他無かった。

しかし、正常な思考が出来なくなった彼等では、元特殊戦闘部隊のエースである警部に、束になっても適う筈が無い。


打撃、発砲、突進。その全てを尽く回避し、一撃を持って気絶させる。総勢50人前後の黒服達は、あっという間に全員、警部の手で撃沈していた。


警部はイチコに、捕獲ケースの解錠と負傷した黒服の手当、センリの容態を確認するよう伝えると、警戒態勢のバグイーターと向かい合い、会話をする。


「久しぶりだね、キラーくん。正直、こんな形でもう一度会うのは、凄く悲しいんだけどね」


「!! 何が、何が久しぶりだガルバノート!お前のせいで!お前のせいでオレの人生は滅茶苦茶だ!」


サングラスを投げ捨て、憎悪の目で警部を睨む。ずっと内に秘めていた感情を、糸が切れたように全てを独白する。


「いつも、いつもいつもいつもッ!オレの邪魔ばかりしやがって!オレよりバカでグズでノロマでっ!なのに!どいつもこいつもガリウスガリウスガリウス!参謀のオレより!図体だけのお前だけが賞賛された!テメェさえ居なければ!特殊部隊の隊長は、オレだったんだ!」


そう語る自分の姿を、悲しそうな目で見つめる警部にも気づかず、彼は喋る口を止めない。


「なのにテメェはッ!役を降りるどころか!突然脱退した!オレがテメェを越す機会は、あの日で2度と無くなったんだよ!しかも、オレはテメェの後釜にも選ばれなかったッ…!オレは!あんなバカ共より優秀で!誰より活躍していたのにッ!全部!全部テメェのせいだ!ガルバノートォォォッ!!!」


過去、同じ警察の特殊戦闘部隊に配属していた2人。

智略に長けるバグイーターの作戦を、強靭な肉体を持つガリウスが仲間を率先し、完璧に実行する。彼等は、特殊部隊の中心的な存在だった。


しかし、自分よりも手柄を立てたと周囲に持て囃されるガリウスの事を、彼は常に疎ましく思っていた。

アイツより目立たなくては、と躍起になった彼は、次第に問題を起こすようになる。彼が藻掻けば藻掻く程、周囲からの評価は下がる一方だった。


更に、ある事件を境に、ガリウスは特殊部隊を脱退してしまう。空席になった隊長の席に座るのは自分だ、と主張したが、彼は遂に、隊長に選ばれる事は無かった。

人選を理不尽に感じた彼は遂に暴動を起こし、特殊部隊から除名され、現在の組織に就いたのだという。


かつての相棒が起こした暴行の跡を確認した警部は、曇った顔で彼に謝罪する。


「キラーくん。キミがこんな事をする様になったのは、全部ボクのせいだ。ボクがもっと、キミの活躍を強く主張していたら、こんな事には…済まなかった。許してくれる筈も無い。けど、本当に、申し訳なかった。この通りだ」


深く頭を下げる警部の行為を、捻れ曲がってしまったバグイーターの頭脳は、謝罪ではなく挑発と認識する。


「て、テメェは、何処までオレを、バカにすれば、気が済むんだあぁぁああぁあぁぁぁぁあっ!!!!」


怒りで震える手で、拳銃を構える。

頭を上げた警部は、一切動じていない。


「ああ。キミはボクに、怒る権利がある。だから、好きにしていい」


それどころか、装着していた銃を捨て、羽織っていたコートも投げ出し、両手を横に広げて立ち尽くす。


「キミが満足するまで、ボクは一切抵抗しない。好きなだけ、殺していいよ」


「!?が、ガルバさん!?何言ってるんです!?」


ケースの解錠に苦戦していたイチコも、警部の発言に驚愕する。しかし、彼の眼には一切の迷いがなかった。


理解不能な行為に、バグイーターの頭は思考を放棄する。

スーツの内側から拳銃をもう1つ取り出し、警部の胸部に向けて突きつけ、叫ぶ。


「ガァ、ガルバノートォッ、ガリウスゥゥゥゥッッッ!!!!!」


左右の拳銃が火を噴く。計12発の弾丸が、警部の身体に命中する。

弾切れの拳銃を投げ捨て、スーツの(たもと)から、小型の爆弾を3つ投げつける。


「死ねェェェェェッ!!!!!」


スイッチを押し込むと、警部の居た座標から、強烈な爆煙が立ち上った。

ケースの解錠に成功したイチコは、その光景に愕然とする。


「ガ、ガルバさぁぁぁぁぁぁん!!!」


爆煙は暫く消えず、警部の姿は目視出来ない。

勝利を確信したバグイーターは、引き攣った笑顔で勝鬨(かちどき)を上げる。


「ひ、ひ、ヒャーーーッハハハハハハッ!!!バカが!バカが!大バカ野郎がァ!お望み通りぶっ殺してやったぞ!ギャハハッ、アーーーッハッハッハッハァ!」


が。

ジャリ、と、爆煙の中から土を踏む音が聞こえた。


煙の中から進んでくる人影は、徐々にその姿を明確に表し、最後には、全身から血を流し、身体中煤だらけの警部が、彼の前に姿を現した。


信じられない、と呆然と立ち尽くすバグイーターに、警部は、いや、ガリウスは問いかける。


「これで、満足かい?」


たった今、殺した筈の男が目の前に立っている恐怖に耐え切れず、バグイーターは半狂乱で殴り掛かる。


「あ、あ、ああ!うあああぁぁあぁぁあぁああぁっ!!!」


その拳が届く前に、彼の顎は強烈な左アッパーで砕け散り、その身体は宙に舞い、フェンスに激突した。

再起不能になった旧友を一瞥し、呟く。


「ごめんね。キミにボクは殺せないよ、キラーくん」


偶然か必然か、永い時を経た2人の男の闘いに今、完全な決着が着いた。

が、警部が息をつく暇も無く、イチコの声が耳に響く。


「ガルバさん、ガルバさんっ!せ、センリさんがっ!」


その言葉を聞くと、自分の状態も気にせず、すぐさま探偵の元へ駆けつける。


仰向けに倒れたセンリの横で、イチコと、解放されたツノネコが啜り泣いている。


「センリさん!センリさん!起きて、起きて下さい!うっ、ううっ…!」

「ふきゅーっ!ふきゅーっ!」


赤いコートを貫き、穴の空いた左胸を見た警部は、膝から崩れ落ちる。


「そ、そんな…!もう、遅かったなんてっ…!」


「センリさん!起きてよォ!事務所に、うちに帰りましょうよ!大家さんに、怒られちゃいますよぉ…!」


イチコは涙が詰まった声で呼びかけながら、センリの身体を揺する。しかし、彼の目は閉じたまま、動かない。


「死なないでって、言ったのに!なんで、なんでぇっ!ウソツキ!センリさんの、センリさんの!」


高く挙げた右手を、ぐったりと揺れる彼の顔に目掛けて、


「バカーーーーーーーーッ!!!!!」


全力で振り下ろし、強烈な張り手を喰らわせた。

衝撃で転がっていくセンリの身体。イチコは遂に顔を覆い、強く泣き出してしまう。


しかし。


「痛っっってぇーーーーーッ!!!え!何!?何今の!?クッッッソ痛いんだけど!?え!?ってか何コレ!?どうなってんの!?ココどこ!?今何時!?」


先程までピクリともしなかったセンリが、突然ガバッと起き上がった。

周囲を確認して困惑するセンリに、2人と1匹が助走付きで飛びかかる。


「うわぁーーーっ!センリくーーーん!良かった!良かったよぉーーーっ!ごめん、遅くなってごめんねぇーーっ!」

「うわーーん!死んだフリとか、趣味悪い事しないで下さいよーーっ!ホントに、ホンッッットに心配したんですからーーーーっ!!!!」

「ふきゅーーーっ!ふにゃぁーーーんっ!」


「だーーーっ!重い!重いってガルバさーんっ!てか、イチコ生きてんの!?そっちのが詐欺、あ゛ーーっ!ネコーっ!顔を舐めるなーっ!!!」


もみくちゃにされたセンリが皆を押し退けて立ち上がると、服の間から弾丸が零れ落ちた。


あの弾丸はセンリの身体を貫かなかったが、反動で倒れた時に強く頭を打ち、気絶していたらしい。


穴の空いたコートの裏側を確認すると、センリはツノネコを抱き上げ、右手に持ったものを見せた。


「成程な。お前、命の恩人、いや恩猫(おんびょう)?だな。助かったぜ、お前のお陰だ」


センリの左胸には、ツノネコが持ってきた、切断されたリーヴペガスの角が入っていた。亀裂の入った魔獣の角は、街を夕焼けに染める太陽の光で、翡翠色に輝いていた。



魔獣捜索騒動から数週間後。

強打した頭と火傷した右手が完治し、退院したセンリは、久しぶりに事務所の扉を開く。


「へーい、ただいまーっと。完全復活、最強探偵センリさんの帰還だぞー」


しかし出迎える人の姿は無く、代わりに大音量で流れるテレビの音が耳に入ってきた。


『ぐっ!何者だ貴様!この時代に、貴様のようなバクソウ戦士は居なかった筈だ!』

『当然だ!私はお前を追って、ここまで来たんだからな!ご無事ですか、先代の皆様!バクソウ01(ゼロワン)、曾祖父様!』

『せ、先代?ひいじい!?何言ってんだお前!?てか、誰なんだよ!?』

『私は、破滅の未来からこの世界に来た、タイムマシーンレーサー。バクソウ…99(ダブルナイン)!』


「か………カッコイイーーーーーッ!!!」


客間のソファーに座り、テレビでヒーロー特撮の録画を見ていたイチコは、叫びながらバタバタと足を動かし、大興奮の様子だった。


「おいイチコ、帰ったぞ」

「あセンリさん!今の見ました!?も〜今期のスーパー超隊、サイッコーにオサレでシビれるんですよーっ!初期の3人が01(ゼロワン)02(ゼロツー)03(ゼロスリー)と来て、4人目のブラックが00(ゼロナンバー)って変化球!えーって思ってたら!5人目のシルバーが、99(ダブルナイン)!しかもカーレーサー、ボートレーサー、エアレーサー、トライアスロンの次が、タイムマシーンレーサー!カーーーっ!最高だーっ!カックイーーーッ!!!」


最早病院帰りの人間の容態はどうでも良く、ヒーロー特撮の事しか頭にないのは火を見るより明らかだった。


「おいおい、流石にちったぁ心配してくれよお前、悲しくなっちゃうぞ」

「え〜?だって毎日お見舞い行ってたんで、無事なのは知ってますしぃ〜。正直、全身撃たれて火傷してたガルバさんの方が心配ですよ。ねー、ネコちゃ〜ん!」


イチコが後ろを振り返ると、ソファーの背もたれから、翡翠色の角を持つネコのような顔が出てきた。


「ふにゃぁーん!」


「あの、さ。なんでコイツが事務所に居んのよ?」


探偵は逃亡を共にした相棒、もとい、今回の騒動の元凶を指差し、イチコに質問する。

イチコは丁度良いと思ったので、センリ達が入院した後の経緯を語り出した。


「えーっと、あの後結局、依頼主さんの所に立ち入り調査が入って、色んな闇営業がバレてお縄、暴行や街内爆破の主導犯としてトカゲさんは即投獄、他の黒服さん達はやった事によってマチマチだそうで。あ、感電した人達と、爆発したトコに住んでた人達は無事だったみたいですよ」


魔石と爆発、どちらも自分が関係していたので気掛かりになっていたセンリは、死者が出なかったという報告にホッと胸を撫で下ろす。

イチコは続けて、依頼主が逮捕されたので、当然探偵達が受けた依頼はチャラになってしまったが、情報提供料と称し、警察から依頼料の半分程を受け取った、という話もした。


「で、依頼主さんの施設内で飼育された魔獣達は、動物園とかに寄贈されたんですけど、この子はどうする〜ってなった時、アタシが飼いたいな〜って言ったら、OK出たんで、そういう事です!」


大まかな事の顛末を聞き終え、最後の話の部分でセンリは頭を抱える。


「おま、タダでさえ動物の世話って大変なのに、コイツ魔獣だぞ!?どんだけ大変か理解ってんの!?飯!躾!トイレ!散歩!あとすげー金掛かる諸々!全部やれんのお前!?」


魔獣を抱っこしたイチコは、ぶーたれた顔で反論する。


「センリさんが留守の間、ぜーんぶちゃんとやってましたしぃ〜!この子賢いから凄い楽でしたしぃ〜!後、食べ切れない野菜の消化も捗りましたしぃ〜!」

「ふきゅぅ!」


はーっ、と深い溜息をつくと、センリは諦めた様に首を縦に振った。


「わかったわかった、良いよそれで。で、ソイツの名前は何?まさかネコチャン、じゃないだろうな?」

「違いますよ〜っ、センリさんと一緒に決めた方が良いかな〜って思ったんで、仮で呼んでるだけです!」


イチコのささやかな心遣いに関心すると、抱えられたネコに向き合って話しかけてみる。


「うーん、難しいんだよなぁ名前って。ツノネコじゃダメ?」

「ふんにゃ」


あれは仮の名前だ、と聞こえた気がしたセンリは、良い名前を捻りだそうとうーんと唸る。


「センリさん!長すぎず、判りやすくて、それでいてちょっとカワイイ感じのヤツでお願いします!この子、女の子ですし!」

「注文が多いんだよ!うーん、うーーーーーーん…」


暫く唸った後、ボソッ、と呟く様に案を挙げる。


「ぺ、ペルラ…とか、どう、でしょうか」

「! ふにゃぁーっ!」


イチコの腕をすり抜け、バッとセンリの胸に飛び込んだ。

了承の意と取ったセンリは、ツノネコ改め、ペルラの背中を優しく擦る。


「良いですね、ペルラ!素敵です!こないだの決めゼリフ考えたヒトと同じとはとても思えませんよ!」


「お前は一言多いんだよッ!ま、気に入ったんならそれでいいよ。じゃとりあえず、ガルバさんのとこにお見舞いを…あれっ?」


イチコの賞賛、兼悪態に早口で言い返すと、ペルラを降ろそうと屈む探偵。

しかし、ペルラはいつの間にか腕から消えており、デスクの上に乗って黒電話のダイヤルで遊んでいた。

イチコはかわいいーっ、とスマホで写真を撮っているが、センリは嫌な予感がして顔が青ざめていた。


「ふみー、みー、みゃっ!?」


力加減を間違えたのか、黒電話はデスクから落下する。

超反応の滑り込みで電話の落下を阻止し、床のホコリまみれになるセンリ。


立ち上がった彼は、デスクの上で気まずそうな顔をした幻獣を睨み、退院後1番の大声を出した。


「ペルラーーーーーーーーーッ!!!!!」


Page.10 「罪人の標は幻想より出づる白き獣か:後編」


ひとまず、おわり また、つづく

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

(しょう) 文具(ぶんぐ)です。


結果的にキヅキ探偵事務所にペットが加わる話でしたが、実はこんなにバトルモノにする構想ではありませんでした。1話で終わるぐらいの話にしようと思ってたのですが、どんどん話が大きな方向に...


キラーペイン・バグイーターさん、キャラの概念自体はあったんですが、最後に探偵を追い込むのが名無しのモブってのはどうなん?と思ったので出てきて貰いました。多分この後話がもし続いていたら、過去回想とかでちょいちょい出てくるのではないでしょうか。

なんかちょっと可哀想ではあるけど、ほぼほぼ八つ当たりでガルバさんを恨んだりする辺り、どの道隊長にはなれなかったんだろうなぁという感じがします。ガルバさんはバカ寛容な精神の持ち主なので下手に出てるけど、これ逆ギレもいいとこですし...黒服の隊長なの、お山の大将感強いですね。

裏話として、特殊部隊追放後に探偵の国家試験を受けたけど、過去の暴行とか素行の悪さで書類落ちしたという噂があるとかないとか。センリくんにも八つ当たりしてた可能性が...?


次回は、またリアルファイトの事件の予定です。え、また...?でもセンリくん達が殴るわけじゃないので、多分被ってません。多分。

それでは、次回もよろしくお願い致します。

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