完全没入型ゲームのプロローグだけの物語(練習用なので)
題に記した通り、練習用です。なので改善点などを言ってくれると幸いです。
ちらりと読み直しはしましたが、ほとんど初心みたいなものなので誤字脱字があると思います。
過去の失敗から、僕は短編がそこそこ書けるようになってから長い物語を書くことに決めました。
なんか、注意書きみたいになってしまいすみません。
最後に、僕の練習に付き合っていただく皆様に、最上の感謝を申し上げます。
「ありがとうございます、そしてよろしくお願いします」
再度申し上げますが、改善点がございましたら申してもらいたいです。
以上です。異常にかしこまった前書きですみませんでした。
20××年、三月八日。
桜が程よく散り、程よく憂鬱な気分にさせる今日この頃。僕はとある遊具店の前で絶句していた。
店のガラス窓に張られた、普段なら絶対に気に留めないゲームポスター。そこにどでかく掲げられているその文字―――『世界初!完全没入型ゲーム発売決定!!;発売開始 今年三月八日~』
―――そんなことが、果たして本当にあり得るのだろうか?
完全にゲームに没入するということは、現実の感覚を生命活動がギリギリ行えるぐらいに遮断し、そして、仮想現実内にある膨大なデータを記憶として留めておかなければならない。それらの行為が脳に掛ける負荷は想像に容易く―――致死量――。更には現実と大差なく動かせる身体や環境、プログラムの作成には途方もなく膨大で絶大で強大な資金源と人員が必要となってくる。そして、かなりの時間が、恐らく数十年単位の時間がかかっているのだろう。何万メートルもあるのではと感じるほどの移動区域、現実であると言われた方が納得できる広大な大自然とあまりに自然すぎる空気や水、最初に出会ったらまずプレーヤーと間違えないことは絶対にないNPCたち。これほどのゲーム、数年単位で作れるはずがないのだ。
―――・・・・・・え?『よくポスターだけでそれほど分かるな』って?いや、それは、だって、
「速攻で買って速攻で組み立てて速攻でコンセントブッ刺して、今現在その場に僕はいますもの」
ということである。
いやぁ、それにしても本当によくできているな。ここらの草だって一つとして同じものが無い。一体どんなプログラムで動いているのやら。それに何重にも音が重なっているのにノイズを一つも感じないや。やはりこのゲーム、元来のゲームたちとは一線を画す存在であるようだ。期待を大きく通り越して、割とガチな恐怖を感じるよ。
さて、来たは良いものの何をすればよろしいのか?実は何の説明もなしにこの世界へ飛び込んでしまったのだが、もしかしてゲームの箱に説明書入ってパターンかな?失敗したか?だとしたら完全な手探り状態になるけども・・・・・・まあ、そういうのも楽しみ方の一つだよな。切り替えて行こう!
「さて、と。まずは何処か村を探さないと。僕のスポーン、何故か草原だったからなぁ」
普通、初期スポーンと言えば中心としか外れの村あたりだろうに、僕は何故こんなにも緑一色な場所に出てしまったのだろう。いや、もしかしたらこれも含めて仕様なのだろうか?・・・・・・まさか、フルダイブゲーム不慣れの初心者もいるこのゲームで、戦闘チュートリアルを最初にやらせる気か?ってそんなわけないか。大体、現実と大差のないこの仮想空間内で殺傷を強制させるなんてことはモラルに反するだろうし、ポスター通りの平和なファンタジー世界を夢見て飛び込んだ人たちが涙目で逃げ帰ってしまう。そうなれば、折角長年かけて作り上げてきたであろうこのゲームは人気爆下がりで、費やした全ては水の泡と化すことになる。だから、此処の運営はそんなことを絶対にしないと断言できる。見てみよ!この広大で豊かなフィールドを!!このような素晴らしき自然をプログラムで作り上げた猛者たちが、わざわざ自分らの作品を汚すような行為をすると思うか?答えは否だ、圧倒的否だ!故に、この場はそう、圧倒的に安全なのだ!!敵は出ない、敵は出ない筈、敵が出るはずがない、敵はいない、敵は来ない、敵に襲われない、敵が、敵が敵が敵が敵が敵が―――
―――おっと、取り乱してしまった。いや、別に、こ、怖いとかそういう訳じゃ・・・・・・いや、素直に言うことにしよう。このゲーム、ゲームとしての完成度が高すぎて恐ろしいと言ったが、実はそれには恐ろしいほど素晴らしいという意味のほかも敵の完成度が高いだろうから恐ろしいという意味も含んでいた。聞く人によれば、否、大半の人によれば僕のこの発想はビビりとか怖がりとか言われる類のものだ。だが、しかし聞いて欲しい・・・・・・水の質感から草の多様性まで、つまり僕が見た中ではすべてが現実と大差のないほどに秀逸で超科学的なオブジェクトだった。そして、それが意味するところは―――
―――敵モブには臓器があり、戦闘中にそれが真っ裸になるかもしれないということだ。
いや、流石にこの可能性は否定したが、しかしないとも言い切れない。此処までのゲームを作る人たちだ、もし、彼らの目的が第二現実の作成ならば十分にあり得る。あって欲しくない可能性だが、このゲームの完成度を見るとどうも疑ってしまうのだ。
それに、同じ根拠で『同族殺し』などというものが実装されてしまっているかもしれない。ゲームの敵モブは、決して異形だけではない。盗賊に生ける屍、魔女に森人にetc・・・・・・と、数多にも人型の敵モブは存在するのだ。しかもそれは、現実と大差のないクオリティである筈。これでどうして、恐れることが出来ぬと申すか!くぅ、事実確認が出来るまで安心して楽しめない自分が情けないぃ。
―――と、そこに、こちらへ近づいてきている足音が一つ・・・・・・否、何かを引きずる音?
ここは草原、視界はオールグリーン。だが敵影は見えない、ということは小型であり、引きずるような足音であることから異形であると推測。下方向はある意味でオールグリーンだが、その言葉に反してか言葉通りなのか草むらの中は何一つ見えない。そりゃ、こんな草原のド真ん中を手入れしに来ようなんてやつはいないだろうし、茂り荒れるのは必然だったのかもしれないが・・・・・・せめて、足元ぐらいは見えるようにしてくれよ。虫嫌いがinしてきたら大変なことになるだろうが。
(百足、毛虫・・・・・・蚯蚓に蝸牛もこえぇ)
そう、事実僕がその類だ。とは言ったものの、別段虫が嫌いってわけでもない。だが身体には絶対に付けたくないというだけのことだ。人と喋るのは大丈夫だけどスキンシップは苦手とかいう、まれに見かけるタイプの人間と同じようなものだと思ってくれて構わない。まあ、その例えも僕であるがな。
―――さて、集中しよう。まずは敵の確認だ。
敵は草むらを這うように動いている。正体を隠すためか、元から小型の体型だったのかは分からない。蛇や虫の異形であった場合、この草原全体が生息地域である可能性は高いだろう。もしそうだったのなら、その時点で僕は詰んでいる事この上ないのだが、しかし現状の敵はこの一体のみ。ならば他に同様の敵がいることを仮定したうえで、比較的安全に処理できるかもしれないこの一体で対策を練り慎重に草原を抜ける。それが最も成功率が高い逃亡法。
ならばやることはただ一つ、こいつの正体を掴んでやる。
≪アイテム≫
皮の服 皮のズボン 錆びた剣 バックパック 兵糧×2 革袋(水)×2
上々じゃないか。職業で剣士を選んでおいて本当に良かった。
≪アイテム≫
≪『錆びた剣』を取り出します≫
おっと、意外と重たいな。ここまで現実再現だと僕みたいな引きこもりには辛いや。では、ARゲーム最初の一閃を華麗に決めるとしますか。いっせーの、せーの、せーで
ジャキン
と。やっぱり錆びた剣だと切れにくいな。雑草を切ったのに少し残るのか、ありゃりゃ。
さて、これで第一段階クリア。円形に僕の周りを囲むこの間合いが、場合によっては僕にとっての最大の盾となる。もし敵がこれでひるむようであれば敵は正体を知られたくないということになる。つまりは正体を知られた時点で対策が確定し、敵の勝算が限りなくゼロになるということだ。しかしながらその場合、今回の敵にはそれを考えられる知能があるということであり、それはそれでかなり厄介だろう。だが、正体を知られたら必敗同然の敵はこの勝負を降りる可能性が高い。敵は一度逃げて、対策を練って次遭った時に備えるはずだ。僕はほぼ確実にこの勝負から逃げられる。ただもう一つの可能性の方が現実的かな。敵が正体を隠しているのではなく、もともと低身長であった可能性。まあ、その時の対処法はかなり少ないだろうけど。
≪アイテム≫
≪『革袋(水)』×1を取り出します≫
よし、これを剣の錆びていない部分にぶっかけて太陽の光を反射させる。効果は群を抜いて薄いけど、即席の目くらましの完成だ。せめて、最初の一撃だけでも急所を外させる。敵の正体さえ見えれば、対策の幅はかなり広がり生存確率も上がるだろうから。それに、こうすることで暗い茂みの中も少しは見えるようになった。ちりも積もれば何とやら、山ほどではなくとも少しでも多くの策を講じることが生存の鍵になる。
(さて、こちらの準備は整った。まさか本当に戦闘チュートリアルから始まるとは思ってなかったけど、何となくそういうゲームなんだってことは分かったよ)
開発スタッフめ、なかなかに魅せやがるじゃねーか。世間ではどう評価されるか分からないけど、僕はこういうの好きだぜ。
・・・・・・おっと、音がすぐそこまで近づいてきた。戦闘に備えなくては。
現在、約1メートル。50センチ、10センチ―――今だ。
―――そこには、一匹の猫がいた。魔女帽子を被り、爬虫類のような幾何学的な目をした、ドラゴンのような造形の尻尾を持つ猫だ。唖然として白けたように固まる僕に、その猫は笑顔で声を紡いだ。
「やあ、新たなる世界へようこそ!僕はドラゴン猫、このゲームのマスコットだよ。ドラネコっていう愛称があるから、気軽にそっちで呼んでくれると嬉しいな」
なお、固まる僕。猫が喋る超常はゲームの中なので驚きはしなかったが、こいつの愛称、さすがにどら猫は酷いだろ。マスコットキャラなのに不遇すぎる。
「で、このゲームの起動準備が終わるまでのつなぎみたいな感じで僕が居るんだけど、どうにも驚かしてしまったようだね。あはは、ごめんね」
・・・・・・え?チュートリアルどころか起動すらしてなかったの?じゃあ、初期装備の水はもう戻ってこないの?
「まあ、焦らなくていいんじゃない?もうすぐ準備終わるみたいだしさ。ちなみにまた僕に会いたくなったらゲームを閉じて10時間後にまた開こう。ちょうどいい具合にロードが入って僕と喋れるよ」
聞いてないよ。というか、え?めっちゃ思案した戦闘は何だったの?僕は何と戦っていたの?虚無か、虚像か、もしかしたらあれは僕の心の奥底に眠る深淵だったのかもしれない。って、誰が蛇や虫だ。ちゃんと僕は人間だ。
「ちなみに、僕と喋りたいのならふ~るいPC買うといいよ。ゲーム起動まで僕は一緒にいるから、物によっては1日中喋れるかもね」
「いや、聞いてないし。というかどら猫、お前喋るの好きすぎだろ」
どら猫はにっしっしと変な笑いの後に、「もちろん、マスコットキャラですから」などと言っていた。普通マスコットは喋らないなと思ったが、それは三者三様十人十色、これもどら猫なりの個性なのだろう。そう思考を巡らせていると、突如として世界が暗闇に包まれた。空を見上げると満点の星々が流れている。天の川、というには少しばかり幅が広すぎるが、イメージとしてはそれが一番しっくり来る。どうやら僕は猫が喋ること以上の超常を現在体験中なようだ。驚きすぎて、というか驚きが続きすぎて最早何も感じなくなってきた。これが汚染というものだろうか?
「本当に、そう思うの?」
どら猫が、まるで僕の思考を読み取ったかのように話しかけてきた。
「まるで、じゃないよ。本当に思考を読み取ったんだ。何せ、僕はこのゲームの―――新世界『フリーク』のマスコットなのですから」
僕は唖然の声を上げた。考えてみれば、脳信号を読み取って操作しているこのゲームは即ち心を読む装置に等しい。更に言うと、このゲームは五感を再現することが出来る。つまりそれは、今までSFとしか言えなかった超能力のほとんどを全人類が体験できるということに他ならない。そして、知らなかった。人間の科学力がここまで進歩していたこと。驚きと共に浮かび上がってきたこの感情は・・・・・・感動、だ。SFの超常を仮想空間にて証明し、それを確実なる現実へと改変した人類への感動。今まで誰も成し得なかった心読みという超常を、ただ最高のゲームを作る過程で実現させてしまった製作者たちへの感動。それは僕という一人の存在の、否人類すべての世界を変えたのだ。それはまさしく、感動であった。
さて、そんな超科学者みたいな製作者が神やってるこの世界はフリークという名前らしい。どんな第二現実が待ち構えているのか、想像するだけでも酸欠に成り得るぐらいに最高の高揚感を味わえる。今までの世界を嘲笑するような、新たな世界がこの先に待っている。これはきっと、新たな現実の始まりだ!
「それは、ちょっと違うよ?」
どら猫は、にこやかに否定した。
「確かにここは凄まじい技術でできた世界で、いわゆるゲームの中で、現実の人が作ったのだから第二現実と名乗るべきなのかもしれない。だけど、このゲームを作った僕のマスターたちはこの世界を『フリーク』と、異形の世界であると表明した。・・・・・・ねえ、もう一度聞くけどあの空を流れる星々を見て本当に何も思わなかった?」
どら猫の肉球が指す先には、ただ流れる星々があった。まるで上等な宝石が砕け散り世界を覆っているかのようなその光景に、僕は特に何かを思ったわけでは無いのだろう。だからどら猫の問いには思考でYESと伝えておく。含みを持たせた言葉であったから、どら猫は僕にNOを言って欲しかったのだろうが、生憎僕はあの不規則な星々に法則を感じるほどの考えが無いので何も思うことはできなかったようだ。
「それは、かなり違うよ」
どら猫は、おおらかに否定した。
「だって、君はこのゲームの製作者が仕組んだ策略にはまった。君はこの世界を美しいと思った。そうでしょ?君の言葉を借りて君の考えを否定させてもらうけど、この世界は上等な宝石が世界を覆っているのではなく、この世界が極上の宝石で埋め尽くされているのさ。そんなことは無いと思う?ならば何処か地面を掘って見なよ。流石に本物の宝石は出て来ないかもしれないけど、何か絶対に現実じゃあり得ないことが起こる」
結局、僕はどら猫が何を言いたいのかいまいち分からない。だからとりあえずどら猫の言うことに従って土を掘ることにした。道具と言える道具が無いので、使い道を失った錆びた剣をスコップとする。騎士道精神など微塵も感じないその行為は、猫しかいないこの空間では咎められることもなく着々と進んでいった。
五十センチぐらい進み、やっとスコップ(剣)が何かにぶつかる。ゲームの中とはいえ感覚が脳に届くから相当に疲れた。どら猫はそんなことお構いなしな様子で、駆け寄って目を輝かせている。同じ例えを何度も使うのは悪いが、その目はまるで深緑の宝石エメラルドのようであった。僕はそれを、美しく感じたのだろうか?その答えは、きっとこの仮想世界の土の中にあるのだろう。小さく奇妙な感覚で屈み、揺らめく期待で土の中を覗き、またもや僕は唖然とする。そこに在るのは、ただ何処までも続く空。天変地異か混沌か、何にせよ地下には確かに空が広がっていた。現実で見飽きたはずの青さが、妙に目に沁みついてしまうのが何故なのかは分からなかった。逆さの青空に一滴の水滴が降った原因も、僕は分からない。
いや、分からないふりはまたあの猫にきっぱり否定されてしまう。本当は分かっている。本当は、現実よりも美しいこの世界の風景に感動した。ただ、第二現実というものに僕の現実が否定されたようで納得がいかなかっただけなのだろう。どうやら僕は、本当の現実を見ていなかったようだ。
「それは、ちょっと正解だよ」
どら猫は、かろやかに肯定した。
「最後の間違いを君は気が付いている筈だよ。ただ、その心に意思が応答しないだけ。だから代わりに僕が言うけど、ここは第二の現実なんかじゃない。初めに紹介した通り、新世界『フリーク』―――異形の世界だよ。現実を嫌った天才が作り出した、法則でも理でもない美しさの感情の世界さ。だから、仮想現実を楽観的に考えないで小難しく考えちゃう気難しい子にはこの世界に入る最低条件を与える必要があったわけだね」
「気難しい『子』って、まさか僕のことか?アバターの体格と雰囲気からして高校生ぐらいだと判断してくれると思っていたのだが、お前結構なポンコツAIなの?」
「AIか。なるほど、現実では僕をそう呼ぶんだね。マスターは僕たちのことを毎度名前で呼んでいたから、そこら辺の知識は聡明なマスコットドラゴン猫の専門外なんだよね。ちなみに、僕は君が皮肉を言わない人間だと信じているよ。あっ、ついでに言っておくと、実は結構前に起動準備は整っていたから真のフリークは今すぐに行ける。というか、あんまり君を待たせると恐らくマスターに怒られるからちゃっちゃと起動するね」
どら猫はどら猫自身の身長ほどはあるトランシーバーを背後から取り出し無線を始めた。すると、空が開き巨大な穴が出現する。中はとびっきりの漆黒で、そこに星々は流れ落ちるかのように昇って行っている。なるほど、あれが起動前画面であるこの場所とゲームの舞台であるフリークという世界を繋ぐ門か。予想以上の壮大さと、フリークという世界がどんなところなのか全くもって予想させない構造は圧巻とも恐怖ともとれて面白い。だからこそ、美しいとも興味深いとも思えるのかもしれない。さて、そんなゲート。空にあるのに一体どうやって入るのだろうか?その答えは、どら猫による突然の足払いによって理解することとなる。どら猫に技を決められ転倒した時、足が上に上がったその瞬間、僕は浮いた―――いや、空に落ちた。
何もかもが分からず、いきなり落下させられた僕が空の高さを予測して気絶しそうになった時、どら猫から発せられた言葉がこちら。
「じゃあね~。新世界『フリーク』お楽しみください!」
この空に自由落下状態で順調に加速していってしまっている中、どう楽しめと言うのだろうか?
そんな愚痴を呟いて、僕はゲートの中へと消えていった。きっと、どら猫からは見えないぐらいに小さくなっていただろうな。
改善点、よろしくお願いします。
今後も機会がございましたら、ぜひともよろしくお願いいたします。読んでいただき、ありがとうございました。