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6月のショートショート

異世界転移のさせ方:その1




先生:「火魔法、打てー」



   ひゅん……ぼしゅっ

   ひゅん……ぼしゅっ

   ひゅん……ぼしゅっ



先生:「アオサ・ワカメプラント、まだできないの?」

アオサ:「ひぃ、ごめんなさい」


 私、アオサ。魔法学校の1年生です。


 実は、魔法が使えません。どうしましょう



先生:「はあ、校長はどうしてこんな娘を拾って来たのかしら」



▼▼▼▼▼▼▼▼



 ここはリノオア魔法学校。


 カッソウ大陸屈指の魔道士養成施設。


 大陸全土から才能ある生徒を集め、高い倍率の試験を通った者だけが入学できるのです。


 何故、魔法が使えないアオサが入学できたのか。


 村でムカデと戯れるアオサをたまたま通りかかった校長が拾って来たのです。



▼▼▼▼▼▼▼▼



先生:「ご存知の通り、この世界には8つの属性があります。何でしたかアオサさん」

アオサ:「えっとー、火と氷と……えー」


先生:「遅い、シェードさんは分かりますよね」

シェード:「はい、火、氷、雷、水、風、土、光、闇なのです」


先生:「よくできました」


 あの子はシェード。短い金髪の優等生。


 私と反対。クラスの人気者なんです。



▼▼▼▼▼▼▼▼



   キーン コーン カーン コーン♪



 お昼です。お弁当の時間です。


 みなさんワイワイしています。シェードさんは女子に囲まれてます。


 こそこそと教室を出て屋上に行きます。


アオサ:「はぁぁぁぁ……」


 緊張が解けて思わずため息が出ます。


 人は苦手です。どうにも馴染めないんですよ。


 屋上は良いですね。高層ビルに囲まれた学校だけど、少しだけ自然を感じます。


 目を閉じると、蜂とトンボの翅音、柔らかい春風。


アオサ:「蜂さんおいで」


 左手の小指に蜂を止めます。


 小指で軽くナデナデしてスキンシップ。


 ママの手作り弁当を開けます。


 熱々のそぼろごはん、出汁巻きたまご、ポテトサラダ、ハチミツ寒天です。


 魔法の弁当箱は出来たてホヤホヤの状態を保存できる便利な道具なのです。


アオサ:「いただきま──」


   ガチャン


???:「おや、先客か?」


 学ランと竹刀、まさか不良ですか!?



▼▼▼▼▼▼▼▼



先生:「校長!」

校長:「どうしたのかねメカブ教諭」


先生:「どうしたもこうしたもないですよ。アオサって子、何もできなさすぎてさすがに擁護できませんよ」

校長:「メカブ教諭、魔法は何も殺傷力だけが全てではない。アオサ君は虫や植物と心を通わせる事ができる」


先生:「でもそんな能力じゃ就職できませんよ」

校長:「確かに殺傷力の高い魔術師は一流企業や国の要職に就けるだろう。だが、ワタシが教えているのはそんな事のためではない」



▼▼▼▼▼▼▼▼



???:「私はザハト、2年生だ」

アオサ:「は、はあ」


 金髪の、背の高い、美人、学ランが良く似合ってます。


ザハト:「アンタは?」

アオサ:「アオサ、1年生です」


ザハト:「そうかアオサか、そのまま、食べながら聞け」

アオサ:「……」もぐもぐ


 そのまま私の隣に座ります。近いですよ。


ザハト:「突然だが、どうして魔法を習ってると思う?」

アオサ:「?」もぐもぐ


ザハト:「こんな平和な国、魔法を使う相手なんてそうそういないぞ」

アオサ:「……」もぐもぐ


ザハト:「……」ごくごく

アオサ:「……」もぐもぐ


 ハチミツレモンを飲んで一息ついています。


 私はポテトサラダを頬張ります。


ザハト:「この学園内では無制限に魔法を放てるんだぜ」

アオサ:「……」もぐもぐ


ザハト:「ナイフや銃はダメなのに、魔法はOK」

アオサ:「……」もぐもぐ


ザハト:「……」ごくごく

アオサ:「……」もぐもぐ


 そう考えると確かに変、なのかも?


ザハト:「魔法の使い方は習ったよな」

アオサ:「……」もぐもぐ


 首を縦に振ります。


ザハト:「魔法の仕組みも習うよな」

アオサ:「……」もぐもぐ


 まだ習ってないけど、後期に習うそうです。


ザハト:「魔法がどこから来たかは?」

アオサ:「……」もぐもぐ


 首をかしげます。元からあったモノではないのでしょうか?


ザハト:「……」ごくごく

アオサ:「……」もぐもぐ


ザハト:「……」ごくごく

アオサ:「……」もぐもぐ


 ごちそうさまでした。


ザハト:「アオサ、これを持っときな」

アオサ:「これは?」


 バターナイフが8本?


ザハト:「魔法のナイフだ。使い捨てだからいざという時使えよ」

アオサ:「え? あ、はい。」


 ザハトさんはそのまま去って行きました。何だったのでしょうか。



▼▼▼▼▼▼▼▼



先生「校長は時代遅れなんですよ。保護者の方々の不満の声、どうするんですか……」ぶつぶつ



 メカブ教諭はぶつくさと教室へ入ります。



先生:「授業を始めます。今回は──」



 その時!



   にゅるっ! パシン!!



先生:「!?」



 床に黒いシミが現れ、なんとワカメが生えてきました!



   ずずずずず



先生:「!?!?!」



 先生は黒いシミの底へ引きずられてしまいました。



「「「キャァァァ!?!?」」」



 みんなパニック!



 教室から出ようしたら、扉からワカメが!



 近くの生徒が引きずられます。



 床から、窓から、天井から。



 ワカメは増えて、恐怖は伝播します。



シェード:「何よ、何よ、何なのよー!」



 闇魔法の【暗黒ビーム】!



  にゅるり。



 ワカメは華麗に回避! シェードさんも闇に引きずり込まれてしまいました。



▼▼▼▼▼▼▼▼



   はっ はっ はっ



 走ります。



 何処へ行ってもワカメだらけ。



 まさか、ザハトさんはこれを知っていたのでしょうか?



 私には何も分かりません。



   はっ はっ はっ



 廊下にワカメの壁です。



 右手をポケットに突っ込み魔法のナイフを握ります。


 そのまま横なぎに投擲します。



 ワカメの表皮に銀の刃が吸い込まれ、強烈な光を発します。



 ワカメは光に飲まれて消えてしまいました。



男子:「やめろ、来るなー!」



 あちこちから悲鳴がします。ガラスが割れる音がします。



女子:「いやー!」


教師「落ち着いて、避難経路の確保うわあぁぁぁ」



 出口、校門目指して走ります。



 ごめんなさい。とても人助けをできる状況ではありません。



 階段を降りると玄関にワカメの壁。



 今度もナイフを投げて消します。



 校舎を出ました。



 そこには驚くべき光景が!



 空一面のワカメ!



 校門も裏門もワカメの壁。



 学校はワカメドームに格納されてしまったようです。



 校門では絶望した教師と生徒たちがワカメに引きずり込まれていました。



 私は裏門へ。すると……



ザハト:「アオサ、生きてたか」

アオサ:「ザハトさん!」


 光輝く剣士がいました。


ザハト:「【ライトソード】」



  ズシャァ!



アオサ:「すごいです!」

ザハト:「いやダメだ」



   ニュルニュル♪



ザハト:「コイツらは次々と生えてくる。倒してもキリがない」

アオサ:「そんな」



 肩で息をしてます。



   ニュルニュル



ザハト:「危ない!」ドン



 え、足元からワカメが?



 私をかばってしまったのですか!



 そんな。



 ワカメがどんどん伸びて来ます。



 魔法のナイフもはたき落とされます。



 腕にワカメ、足にワカメ、首にワカメ。



 苦しい、です。



 誰か、助けて、誰か……



   ピカーン!



 小指から光?



 よく見ると蜂さん?



 なんと蜂さんが巨大化しました。



ザハト:「あれは、伝説のシャイニングビー?」



 蜂さんはお尻から毒針マシンガン!



 針が当たった所からワカメが枯れていきます。



アオサ:「すごい……」



 巻きついていたワカメが崩れ去っていきます。



 どこからともなく仲間の蜂さんが飛んで来て、次々にワカメに毒針を打ち込んでいきます。



 蜂さんは広がり、あっという間にワカメを枯らしてしまいました。



アオサ:「蜂さんありがとー」


 謎の蜂さんのおかげで危機は去りました。


 ですが、学校の外の様子が変です。


 見渡す限り広い草原、草を食べるスライムらしき青いぶよぶよ、石造りの洞窟の入り口。


ザハト:「これは、もしかして異世界なのか?」

アオサ:「ほえー」



 なんだか大変な事になってしまいました。

キャラ名は何処かで見た事あるかもしれませんが、実在する人物とは一切関係はありません。

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― 新着の感想 ―
[一言] ファンタジーですね。 アオサは魔法を使えないけど、強い魔物を仲間にできる、とかですね。ザハトをガン無視してアオサが弁当食べ続けていたのには、笑いました。 そして、学校ごと異世界移住ですか。…
[気になる点] > 先生:「はあ、校長はどうしてこんな娘を拾って来たのかしら」 その可能性を見出すのが、先生の役割なのじゃ。 > 村でムカデと戯れるアオサをたまたま通りかかった校長が拾って来たので…
[一言] 設定が謎すぎるけど、意外とまともだった……
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