プロローグ
私は今、おっさんと対峙している。
おっさんはなぜか白衣のようなものを着ている。ただ、誰なんだろうこの人。記憶に全くない人だし、そもそもこの場所に見覚えもない。結構イケメンというか、ひげを生やしていてダンディという感じだな。名前が坂野とかいわないんだろうか。まあ、年は食ってる感じがするな。
なにもない白い空間に、おっさんと二人きり。これは、私が女だったら、セクハラで訴えたりできるのではないだろうか。まあ、何もされてないからいいのだが。
そもそも私は男だがな。
とかなんとか思っていたらおっさんが話してきた。
「そろそろ、おっさんおっさん言うのやめろ。」
ああ、すまないな、私からしたらおっさんなんだ。
あれ・・・いま私は声に出しておっさんと言っていたのか?
それだったら私もかなりぼけてきているのか?
「質問が多い。まず一つ目だが、声にはだしていないから安心しろ。
次に二つ目だ。ぼけてはないと思うが、もしかしたらぼけているやもしれんな。」
そういうと、おっさんは嘲笑した。声には出していないが、鼻で笑うかのように。
なんだろう。嘲笑されたのが腹立つのだが。
仮にも、初対面の相手のことを鼻で笑えるものなのか。でも、そこまで腹が立つほどの笑い方ではなかったな。心底馬鹿にしたような笑い方ではなく、なんというか、強者の余裕というか、空気を明るくすためのぼけのような感じだった。この人とは仲良くできそうだ。それより
「あなたは何者ですか?人の心の中が読めるんですか?」
聞きたいことは山ほどある。とりあえず聞きまくっておこう。聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥というぐらいだからな。
「あー俺は、新世界の神ってところだな。だから、おまえの心は読めるぜ。」
そう言うと、サムズアップしてきた。あと、満面のどや顔もセットでついてきた。なんとお得なセットなんだろう。唯一の欠点が、相手がおっさんということか。これをしているのが、かわいい女の子ならばどれほどよかったでしょう。
というか、しれっと神と名乗ってるよな。まさか、異世界転生詐欺みたいなのが巷では流行ってるのか?昨今の異世界転生ブームで、異世界に転生したいと思っている人は多いはずだ。
※作者はどうせ死ぬなら転生してみたいと思ってます。めっちゃほのぼのした世界に。そしてどうせなら魔法の使える世界に、面白いスキルを持っていきたいです。
だが、こんな非現実的な詐欺に引っかかるやつなんているのだろうか。異世界転生なんて、普通に考えてあり得ないだろうし。
ひとまず、相手が読心術を使える犯罪者として話しておくか。用心するに越したことはない。
「信じてくれよ・・・俺は神なんだって。断じて犯罪者なんかじゃねえよ。」
なんか自信をなくしてらっしゃる。さっきのどや顔の勢いはどこにいったのだろう。ただ、読心術という線は少し薄れてきたな。なんか完全に心を読まれてる感じだし。
じゃあ、もう一つ質問。いや、質問という感じでもないが。
「神であるという証拠を見せてください。」
「おお、お安いご用だ。」
そう言うと、両手を体の前でお椀のようにして、目を閉じた。
そして、おっさんが呟く。
【水】
直後、水がおっさんの手の中にいっぱいに溜まっていた。
おっさんは、どうやらただのおっさんでも、読心術のつかえる犯罪者でもないらしい。
さらに呟く。
【消去】
今度は、手の中にあった水が消えてなくなった。
うん。すごいな。手品でも出来ないだろう。
では、次にいこう。やばい犯罪者というわけではなさそうだから、自分のことも聞いておきたい。さくさく聞いていこう。神というなら私のこともしっているはずだろう。
「私は死んだのか?」
異世界転生ならば、やはりそういうことなのだろうか。ただ、全然記憶がないんだが。一番新しい記憶は、朝起きて、今日は12/19か。と思って、明日はモ〇ストの日だなと思って・・・そこからどうしたっけ。覚えてないな。
「朝飯にパンを食べた。」
ああ、そうそう。いつも通りパンを食べたんだった。それで、
「腹痛を催してトイレに行く。」
そういえば、そうだ。パンを半分ぐらい食べたところでおなかが痛くなって、トイレに行って、どうしたんだ?
「なぜか死ぬ。」
おお~分かりやすい。訳がないんだが?なんで死んでんだよ、私は。
「そんなもん、俺も分からん。神ではあっても、全知全能ではないんだから。」
少々呆れ顔で、おっさんが呟く。さも、『当事者のおまえが知らないのに俺が知るわけがなかろう』的な目で見ながら。やっぱりこの神は顔芸が豊かなもんだな。
でもまあ、死んだというのはほぼ確定みたいなもんだな。案外死んでも冷静でいられるもんなのか。その辺は、何回も死んだわけじゃないし分からない。
じゃあ、私が死んだ理由はもういいとしよう。どうせ生き返らせたり、もとのせかいへ戻したりは出来ないんだろう?
「もちろんだ。」
もはやおなじみのどや顔をしながら、大きく頷く。
それなら、あとは聞きたいことと言えば、ネット関係が使えるかだな。さすがに、異世界のような場所だし、使えないよな?
「使えるぜ。ほい、おまえさんが使ってたスマホだ。」
おお、なんというご都合主義。なんで電波がつながってるんだよ。てかWi-Fiもあんのか。動画も見放題じゃねえか。まあ、こんなこと考えていてもしょうがないか。私は神じゃないんだから。出来ることには限りがある。なら、スマホが使えることに感謝しよう。
「ありがとうな、おっさん。」
「ついに、おっさんよばわりどころか、タメ口になりやがった。」
なぜか心底驚いた顔をしてらっしゃる。
「ん?駄目ですか?」
タメ口が嫌いだと言うのならば、敬語にすることだって出来る。私はTPOぐらいはわきまえているつもりだからな。ただ、
「いや、やっぱりおまえさんの敬語はなんか怖いからタメでいいわ。」
こんな感じになぜか怖がられるんだよな。普通に敬意を持って接しているだけのつもりなのだが。やはり敬語は距離を与えてしまうのかもな。心的に。まあ、これぐらいかな、聞きたいことは。
「じゃあ逆に質問だ。おまえさんは、なんで異世界に呼ばれたか知っているのか?」
おっさんが問いかけてくる。答えはノーだ。
「じゃあ俺が教えてやろう。なぜ呼ばれたか、それは・・・」
「あっ思いついた。おっさんが呼んだのか?」
先に言われてくやしそうな顔してる。てか図星だったんだ。
「それにしても、なんでおっさんが、私を呼んだんだ?別に魔法も使えない世界から来たんだが。」
おっさんをここらで立てとかないと拗ねそうというのもあるが、これは普通に疑問だ。魔法がある世界から呼んだ方が、世界とかは救いやすいだろうし。その点私は理系なだけだが。あとは、魔法とかゲームとかが好きなのも関係があるのか?でも力も強くないし、世界を救えとか言われたら断ろうかな。
「正解は、『俺の作る世界のβテストをしてほしい。』だ。」
そうきたか。でも、βテストってなんか面倒そうなんだがな。あ~やっぱ帰ろうかな。帰れるのか知らないけど。
「三食昼寝付き、ネット環境充実、働くのは一日数時間」
すごくやる気が出てきたな。是非とも働かせていただきたい。
おっさんが、ちょっと引いてる。手のひらが180度ぐらい返されただけじゃないか。
さあ、元気に働くとするか。
後書きで、次から遊ぶと思われます。次のことなんて、分かんねえ。
かぎかっこだけで会話を進めるあれやりたいです。やりたいっていうだけのやつなんですがね~