【クレア】転生者同士の雑談
本当にこれで終わったのね。私は安心したやら、寂しいやらで不思議な気持ちになっていた。
だって、ここがゲームの世界だって気付いてからずっと奮闘してきたんだもの。ミクゥを助けなきゃって、それだけを生き甲斐に頑張ってきた。
顔を真っ赤にしてマクロの隣にいるミクゥを見ていると、すっごく満たされた気持ちになる。もちろん、マクロに取られてめちゃくちゃ悔しくて悲しくて寂しい気持ちもあるけど……ミクゥが幸せになるエンディングを見られたのがなによりも嬉しい。
「恋をしてはいけません、なんて言っていたっけね」
結局、ミクゥは恋をした。あの時は本当に焦ったけど、結果的に良かったって思える。そういう未来を迎えられたからこそ思うのだろうけど。
「ねぇ、クレア。貴女も攻略キャラとハッピーエンドを迎える土台は出来ているって知ってる?」
「は? 何を言い出すのよ、突然」
ぼんやりミクゥを見ていたら、ララが隣に座ってそんな風に話しかけてきた。私が? 誰かと恋をするってこと? あり得ないんですけど。
「え? もしかしてわたしと同じタイプ? ゲームのキャラとは恋愛出来ないって?」
「ララほどじゃないと思うけど。まあ、そんなところね。今更そんな目で見られないわ。大体、誰と恋をしろってのよ。土台ってなんなわけ?」
さすがに私も、みんなのことをゲームのキャラだって思えなくなってきているからね。それでも、知っているキャラクターという意識は消えない。ララに偉そうにキャラ扱いするなって言っておいてこのザマなんだけどね。
だから、どうしても恋愛対象には見れないのは事実よ。ララのように生み出した本人ってわけじゃないから、頑張ればそんな目でも見られるんだろうけど……今更ねぇ。
「言ったでしょ? ライバルキャラがいれば恋は成就するって」
「お、何の話? ゲームの話なら混ぜてくれよー!」
ララと話を続けていると、エクトルが間に入ってきた。ちょっとウキウキした様子なのはたぶん、ゲームの話だから。
まぁ、気持ちはわかるよ。私だって前世の記憶を思い出してからというもの、誰かと話したくて仕方なかったもの。しかも、今は全部が解決した後。オタクとしては語りたくなるよね。仕方ないから仲間にいれてあげましょ。
「土台が出来ているのはエクトルルートだよ!」
「は? 俺? なんで」
「キャンディスがいるじゃない。彼女がエクトルルートのライバルキャラっていう立ち位置にいるんだもの」
「だから、何の話?」
けど、内容がちょっとアレよね。ゲームの話だと思ったら自分の話にシフトチェンジされていることにエクトルは目を白黒させているわ。
……あれ? え、ちょっと待って。エクトルルートって言った? で、これまでは私の話だったよね? つまりララが言いたいのって。
「クレアは、エクトルと結ばれるルートに進むんじゃないかなーって」
「「はぁぁぁ!?」」
私はもちろん、エクトルも同じように叫んだ。あり得ない! あり得ない!!
なんっでよりにもよってエクトルなのよ! いや、他の誰かであっても納得は出来ないけどエクトルは一番あり得ない!
「なんっで私がこんな見た目がいいだけのチャランポランと恋をしなきゃいけないのよ!」
「酷ぇ!! けど、俺だってこんな気が強くて乱暴な女なんて願い下げだっつーの!!」
「なんですって!?」
「なんだよ!」
思わず立ち上がってエクトルを指差しながら叫ぶ。思わず尻尾も逆立っちゃう。
エクトルも負けじと言い返してきた。結構言うじゃないの、この顔だけキラキラ男めっ!
「えー? だって、クレアはキャラと恋愛するタイプじゃないって言っていたけどさ。エクトルは転生者であって、本来のキャラとは違うじゃない。だから、恋をしたっておかしくない相手だと思うんだけど?」
ララの思いもよらぬ反論につい口籠る。正直、一理ある。エクトルはキャラの器だけで中身は元日本人のオタクだ。キャラと恋愛をしているとは言えないだろう。でもそれはそれ! これはこれよ!
「きゃ、キャラではないかもしれないけど! ど、どう考えてもおかしいでしょう!? あ、そうよ、キャンディスとハッピーエンドを迎えたらいいじゃない。あんなに熱烈に思われているんだから」
そう、そうだよ。キャンディスがいるじゃない。結ばれるとしたらそっちでしょ。そう思ったから言ったんだけど、それにはエクトルとララの二人ともがうーん、と腕を組んで違うと言い出した。えっ、なんで!?
「キャンディスは、あー、お前、あれが恋しているように見えるか?」
違うっていうのね? どう見ても恋をしていると思ったんだけど。本人もそう言っていたし。
「確かにベタベタくっ付いてくるし、めっちゃ好き好き言ってくるけどさ。それって、アイドルに対するガチファンの気持ちみたいな感じしねぇ? ほら、俺って顔はいいから」
「確かに顔はいいけどなんかムカつく言い方ね。でも……言われてみれば、確かに?」
というか、そうとしか思えなくなってくるくらいの説得力かも。エクトルに近付く人に対するやきもちも、同担拒否みたいな雰囲気があるものね。
「キャンディスはねー、わたしもちょっとよくわからなかったんだけど。以前は確かに恋をしていたんじゃないかな? でも最近は、もっと身近な相手に気付き始めているんだよ」
「もっと身近な相手?」
その時、ソファーの方からタイミングよくキャンディスの声が聞こえてきたので顔を向ける。
「もー! キー兄はまたこんなとこで寝ようとして! もう帰るよ! せめてラナキラの空き部屋借りてベッドで寝てよぉ」
「んー、ここでうたた寝するのが最高なんじゃない、か……」
「あ、こら! 寝ないで! まったく、キー兄はキャンがいないとなんにも出来ないんだから!」
……なるほど、と思ったわ。でも、今の感じだと本人はまだ気付いていいないみたいだけど。
「あと、今後どうなるか見守りたいのがリニとアンジェラね。あの二人、恋仲になるかはわからないけどタイプが似ているから良き相棒にはなりそうじゃない?」
「あ、それはわかるわ。どう発展していくかはわからないけど、仲はいいわよね」
「二人とも脳筋だしな」
このメンバーで話していると、なんだか盛り上がるわね。ゲームの知識があるからだろうけど。なんだか前世を思い出すわ。友達と、こうして盛り上がったっけな。楽しかったなぁ。
「だから! わたしとしてはエクトルとクレアも推したいわけよ!」
「「だからそれはないって」」
「気が合うじゃん。仲良しじゃん」
せっかく話題が逸れていたのに戻してきたわね? わざとだってことくらい、そのニヤけた顔を見ていればわかるわよ、ララ!
エクトルとの恋はないけど、でもこうして前世の話題で盛り上げれる相手がいるのはいいわね。やっぱり楽しいもの。エクトルとも、たまにはこうして話してやってもいいわ。
でもそれだけよ。絶対に、ぜーったいに恋なんてしないんだからねーっだ!
次回、最終話です。






