結果オーライ?
「あ、でも。さっきも言ったけどヒロインの過去にそんな凄惨な描写はなかったわよね?」
一頻り騒いだ後、我に返ったクレアがハッと気付いたようにララに訊ねる。ララはそれに頷き、そこが問題なのよねと再び神妙な顔になった。
「公式にも、裏設定集にも書いてないことだよ。でも、わたしの中の設定メモには書いてあった。これの意味するところがわかる? 気付いた時、わたしは恐怖で眠れなかったよ」
ララが言うことをまとめると、クレアやエクトルが知っている情報以上のことを、ララは知っていたってことだよね? 誰にも言っていない情報なのに、それが世界に反映されちゃっていた、ってこと……?
「ヒロインの設定は焼け落ちた村の生き残りだった。でもゲームを進める上で必要のない情報だったし、何より狐の村と似たような設定だからってボツになったの」
「そ、そんな設定があったんだ……。出稼ぎに来たんだ! って言う明るい笑顔の裏でそんな過去を抱えてたって事実を当時知っていたら、ララをもっと推していたかもしれないわ……!」
「俺も……!」
クレアが早口になってる。ゲームの話をする時、たまにこういう状態になるんだよね。というか、また話が脱線してない? すでにラナキラのメンバーは緊張を緩めたのかリラックスをし始めているみたいだし。キャンディスはお茶まで淹れてる……!
ララに対する警戒を解いてくれたのは嬉しいけど、さすがにお酒は止めてね、ウェールズっ!
「また話が逸れたね。今シリアスな話のはずなんだけどー。ま、いいや。必ず設定通りになるとは限らないって思ってはいたけど、楽観視は出来ないって思った。都合よく受け取りたいだけだもん。でもそうはいかないじゃない。製作者として、もしもこの世界が現実に存在したのならなんとしてもみんなを幸せにしたいって思うのは不思議じゃないでしょ?」
「……その気持ちが嘘じゃねーってのはわかる。わかるがララ。本音は?」
「はい! いつまでもヒロインのララでいたくなかったんですぅーっ! わたしは早くシナリオを終わらせたかったの! ヒロインの座を他のライバルキャラに押し付け……交代出来たらそれが一番ウィンウィンだと思ったんですぅ!!」
「隠せてねーぞ、本音!」
え、えーっと。つまり……ララは、ヒロインとして誰かと恋をする気はなかったんだよね? でも、シナリオが終わらないといつまでもララは「ヒロインのララ」のままかもしれないって思ったんだ。
だから自分以外の誰かにヒロインの辿るハズだったルートを進んでもらって、攻略キャラとハッピーエンドを迎えてもらおうという計画を立てた、らしい。そ、それが私だったってことかな?
「わたしの裏設定は他にも色々あるんだよ。恋が実るにはライバルキャラが必須ってこととか。誰かの恋が実ったらゲームはエンディングを迎える……っていうのは公言してないだけでゲームをプレイしていたならみんな知ってるか」
ブツブツと呟くララに、クレアがビックリしたように目を丸くしている。
「だ、だからララがミクゥのライバルキャラとして立ちはだかった、ってことなのね!?」
「あはは、そうそう! 最初はエクトルルートだと思って疑ってなかったから焦ったぁ! 途中で急にマクロルートに変えたから、変に思われないか心配だったけど。恋多き乙女ってことでなんとかなったよね! いやぁ、わたしったらさすがの機転っ」
ララの明るい笑い声が響く中、他のみんなはジトッとした目でララを睨んでいる。警戒は解いたけど、騙されていたことに変わりはないからだろうなぁ……。うっ、なぜか私が居た堪れないっ!
「でもよぉ、ミクゥが攫われたあの犯罪組織についてはどう説明すんだよ。協力してたじゃねーか」
リニが半眼でララを睨みながら問い詰める。うぅ、怖い。小さく震えてしまったからかマクロが気付いてそっと右手の上に手を乗せてくれた。
や、優しいよぅ!! でもリニを睨むのは止めてあげて!
「ラナキラに接触するために利用させてもらっただけだよ。一番私の話を信じてくれそうなミクゥを選んだのは当然でしょ?」
「だ、だからってあんな危険な目に……!」
「どこが危険なの。ミクゥにはわたしがついていたし、結果的にあなたたちが苦戦していた犯罪組織を一掃出来たでしょ。誰も傷付くことなく、最小限の被害で」
た、確かにっ! みんながハッとして驚いた顔をした。リニは悔しそうにぐぬぬ、と唸っているけど。
「ふふ、結構役に立つでしょ、わたし。戦闘力はないけど、暗躍なら得意だよぉ? 人を操ったり、盗聴したり!」
「……ラナキラの盗聴もしていたの?」
「……あー、なーんのことかなぁ?」
マクロの問いかけに、あからさまに目を泳がせてとぼけるララ。き、聞いていたってことだね……?
ってことは! 私がマクロに対する気持ちを知っていたのもまさか!
うぅぅぅ、恥ずかしいっ! ララー!? さすがにこれは私だって怒るからねっ! プルプルと震えながら涙目でララを見たらウッと呻かれてしまった。
「絶対してただろこれ! あっ、だから俺やクレアが転生者だって知ってたし、こっちの行動も筒抜けだったんだな!? くそーっ! 盗聴魔法だけじゃなくて今後は特殊能力の盗聴も阻止する魔道具開発してくれキーファ!!」
「んー、まぁ出来なくもない、かな? ララが研究の手伝いしてくれればね」
「絶対に手伝うべきでしょ。こんだけみんなに迷惑をかけたんだからー」
エクトルも地団駄を踏みながら騒ぎ始めちゃった。キーファは相変わらずでどことなく楽しそう。キャンディスも、すっごく睨んではいるけどなんだかんだ言ってララを許しているのかもしれないな。






