お祭り
お祭り中は例の三人組の近くにいくことさえなく、例年通りご馳走をたくさん食べて、踊って、と楽しい時間を過ごすことが出来た。ついさっき、死にかける思いをしたとは思えない穏やかな時間。やっぱりこの村はいいな。祭りの日用の大きなかがり火を囲んで、伝統の狐の舞をみんなで踊るのはやっぱり楽しいし、たまたま私とクレアが誕生日ということもあってみんな盛大にお祝いしてくれるし。それに今年は成人のお祝い。いつも以上にみんなが祝福の言葉をかけてくれるのが嬉しかった。
「二人とももう成人かぁ。ずっとこの村にいるのかい?」
「もちろん、そのつもりよ!」
隣の家に住むおばばからの質問に、クレアが当たり前とでも言うように即答した。私も村を出るとかは考えたことがないな。せっかく戦える力をちょっとだけ使えるようになったのだから、これからも訓練しつつ、村に危険があった時には払い退けられるようになりたいもん。
お祭りもそろそろお開きという頃、両親が私たちの前にやってきて神妙な面持ちで話があるって声をかけてきた。成人したから、なにか特別な言葉をもらえるのかな。私もクレアも自然と背筋を伸ばして両親を見る。
「まずは成人おめでとう、二人とも。お前たちはもう一人前だ」
「ありがとうお父さん」
「お父さん、ありがとう!」
私たちのお礼を微笑みながら頷いて受け止めると、先ほどずっとこの村にいると聞こえたが、とお父さんは口を開く。
「……お前たち、随分強くなってるみたいだな」
「! き、気付いていたの?」
目を細めて告げられた一言に、二人して息を呑む。気付いていたのかと問うクレアに対して、当たり前だろうとお父さんは言う。見れば、お母さんも頷いていた。
「私たちはあなた達のお父さんとお母さんなのよ? ずっとあなた達を見てきたの。気付かないはずがないじゃない」
「お母さん……」
心配をかけたくないからってこっそりとしてきたこと、全部バレてたんだ。それでも黙って見守っていてくれたんだって知って、二人の愛情を感じた。
「村長様から聞いたぞ。お前らも、魔物の群れを抑え込もうとしてたって」
「えっ、えっ、な、なんで……!?」
エクトル達が私たちのことも喋っちゃったのかな!? 村長様にしか話さないって言ってたし、私たちも口止めしてなかったから……そう思ってキョロキョロと二人でエクトル達を目で探してしまう。
「こら。彼らがバラした、なんて逆恨みはしちゃダメよ。彼らは彼らであったことを話す義務があったのだから。それでも村長様だけにって言ってくれたそうよ。そして、村長様の判断で私たちに伝えてくださったの」
「……とはいえ、お前達の話をちゃんと聞かずに、信じなかった我々大人も悪かったな。反省しているよ。二人とも、申し訳なかった」
二人が私たちにしっかりと頭を下げてきたから慌ててしまう。特にクレアは、信じてもらえなくても仕方ないよと手をブンブン振ってる。気持ちはわかるよ。お父さんやお母さんに頭を下げられちゃうと、どうしたらいいのかわかんなくなっちゃうよね。でも、きちんと謝ってくれた二人は、やっぱり信頼できる両親だなって思ったの。
「そこで、だ。お前達、村を少し離れてみないか?」
でも、続くその一言に、私たちは同時に動きを止めてしまう。今、なんて?
「その力は、この村で留めておくにはおしい。外の世界に出て、お前達の可能性を広げるべきなんじゃないかって思うんだ」
可能性を? でも、私たちは別に、この先のことを考えて訓練してきたわけじゃ……!
「え、ちょ、ちょっと待って。村から出て行けってこと……?」
「そんなことは言っていないわ。いつでも帰ってきてくれていいのよ? ただ、あなた達はまだ若いし、色んな経験をしてくるのもいいって言っているの。外に出ても、身を守れるくらいの実力があるならなおのこと。それに……」
続くお母さんの言葉に、私たちはそろって絶句する。
「魔物を討伐してくれた例の三人の青年がね、自分たちのギルドに来てくれないかって。彼らが一緒なら安心だもの」
あの三人が? そんな様子見せなかったのに。どういうこと? 隣にいるクレアの顔を見てみると、口をパクパクさせている。こ、声出てないよ、クレア!
「中級ギルドだって話だから身元は保証されているし、何より稼ぎがいい。外でもちゃんと暮らしていけるだろう」
「外で見てきた物事を、帰ってきたときに色々話して聞かせて欲しいわ。私たちはこの村からはほとんど出たことがないから」
「色んな物があるんだってな。田舎とは違って発展してるんだろうなぁ」
「美味しいものもあるかもしれないわねぇ」
「お土産よろしくな!」
私たちを置いてどんどん話が進んでいく。あ、あれ? 彼らとはここでお別れだから安心だって……はっ、隣から並々ならぬ圧を感じる……! おそるおそる隣に顔を向けると、クレアの顔が、なんか、こう、ものすごいことになってる!?
「エクトルね……! 随分な手を使うじゃないのー……っ!」
「く、クレア、怖いよぅ……!」
キャッキャと盛り上がる両親と、怒りのオーラを放つクレアに挟まれてる私。ど、どうしたらいいの? え? これって本当に私たち、村を出ることになるってことーっ!?






