ドワーフ
何も考えずに村に帰ろうとしてふと気付く。倒した魔物をそのままにしてきちゃったってこと! なんですぐに気付かなかったんだろう、と焦ってそのことを口に出して言うと、それなら問題無いという答えがリニから返ってきた。
「俺らの仕事がそもそも魔物の群れをどうにかすることだったから。ちゃんとアフターケアまでしてきたから心配すんなよ。一応これでもプロ意識ってやつ持って仕事してるからよ」
「後始末したのは僕だろ。偉そうに」
え、いつの間に? だって討伐してからそのまま村に向かいはじめたよね? 魔物は本当にたくさんいたし、後処理だけでもかなり大変なのに……!
「んー、別に言ってもいいんじゃねぇの?」
「まぁ、隠してないけど……聞きたいの?」
あれ、別に口に出して言ってないのに苦笑されている? か、顔に出てたのかな。よくクレアにも言われるんだよね、ミクゥは言わなくても顔に書いてあるって。うぅ……!
「えっと、気になります……」
バレてしまっているのなら仕方ない。せっかくなので素直に聞いてみることにした。すると、歩きながらマクロが足元の土をボコボコと動かしはじめた。ま、魔法? 何っ!?
「僕は大地の精霊と契約してる。だから魔物の死骸は全て地に返した。だから一瞬で魔物の死骸も処理できる」
「せい、れい……?」
マクロが淡々と説明をしてくれたけど、精霊ってなんだろう? どういうこと? そう思って目線でリニに助けを求めた。リニはそれを正確に読み取って、補足説明をしてくれる。
「マクロはドワーフなんだよ。だから、種族限定の特殊な魔術が使えるってわけ。精霊と契約して使う自然魔術ってやつ。聞いたことねぇ?」
「は、初めて聞きました……! それにしても、ドワーフだったんですか!?」
精霊が云々よりも、マクロがドワーフだってことにビックリ。話でしか聞いたことのない種族だから本当に驚いたんだ。クレアからのシナリオについての話は、種族までは聞いてなかったから。クレアは知ってたのかな?
「リニ、おしゃべり」
「あ、悪ぃ。でも別にいーだろ。希少種族だけどお前の実力なら心配はねぇんだからよ」
あ……そっか。希少種族はそれだけで良からぬ人たちに狙われやすいんだ。人身売買は基本的に禁止されているけど、裏ではまだ活発だって噂だもんね。だから私も、気をつけなさいってクレアにいつも言われてるわけだし。
「あ、あの。私誰にも言いません。だから、その……私のことも……」
だから、お互い様ってことで内緒にしあえないかな? そう思って聞いてはみたけど、どうしても尻すぼみになってしまう。だって、この二人ってどことなく怖いんだもん。リニは見た目から豪快で荒くれっぽいし、マクロは言葉数が少なくて不機嫌そうな顔だし……本当は悪い人じゃないんだろうなってわかってはいるし、見かけで判断しちゃダメなのもわかってるんだけどっ!
「わかった。互いに秘密ってことで。いい?」
「あ、うん……助かります」
でも、マクロは無表情ながらすぐに返事をしてくれた。よ、よかったぁ。
村に到着すると、三人組は村長様の元に行ってくるって私たちから離れていった。村の人たちにはあと少しで村が大変な目にあうところだった、とは言わないんだって。変に不安を煽らないためだそうなんだけど、その気遣いにとても感謝した。でも村長様にはちゃんと話しておく必要があるからと。みんなに話すかどうかを決めるのも村長様だからって。ちゃんと村のことを考えてくれてるんだなって見直しちゃった!
「ね、クレア。魔物をたくさん倒したでしょ? その後処理についてなんだけど……」
二人きりになったところでコソコソとクレアに報告する。もちろん、約束したからマクロのことは黙っておくよ! 魔物のこと、後で気付いて気にするかなって思ったんだ。でも、クレアの反応はあっさりとしたものだった。
「ああ、マクロがやってくれたんでしょ?」
「えっ!? 知ってるの!?」
とっても驚いた。まるで当たり前かのように言うんだもん。私が驚いていると、クレアはニッと笑って教えてくれた。
「細かい設定までは覚えてないけど、攻略キャラがどんな魔法を使えるか、とかはなんとなく覚えてるのよ。特にマクロは種族柄、身体も小柄なのに正反対の名前で面白いなって思ってたから記憶に残ってるの」
「正反対……?」
「えっとね、マクロって大きいって意味があるの。この世界でも同じ意味があるかは知らないけど」
へぇー、と感心しながら口をぽかんと開けてしまう。ちなみに、やっぱりクレアはドワーフだってことも知ってたみたい。そっか、知ってるならいいよね? そう思って私もさっきの会話をクレアに知らせることにした。
「ふんふん、なるほど。じゃあ私もうっかり知ってるようなことを口走らないように気をつけるわ。ま、でもこの村に彼らがいる間だけだもの。大丈夫でしょ!」
クレアが言うには、シナリオとは違って村は無事だったし、私たちが彼らとともに旅立つこともないから安心なのだそう。
「ちゃんと未来は変えられた。本当に良かった……これからも、ここで平和にのんびり暮らそうね、ミクゥ」
そう言って心底ホッとしたようにクレアは笑ったんだけど……どうも、これで安心ってわけにはいかないみたい。それがわかるのは、この日の夕暮れ時だったんだ。






