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シナリオなんていらない!〜ライバルキャラの狐っ娘〜  作者: 阿井りいあ
育む気持ち

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ずるい気持ち


「バカかいあんたは。これだから人の気持ちを汲み取れないヤツはダメだよ。これはミクゥの個人的で繊細な話さね。そんな軽い調子で聞いてんじゃないよ。デリカシーってもんが足りないね」

「バカじゃない。でも今のは、僕が悪かった。ごめん」

「い、いいの! き、気にしないで……!」


 おばあさんのおかげで助かった! だけど、今のマクロの反応からすると、先はまだまだ遠そうだなって思っちゃった。私が誰かに恋をしているって知っても、あんまり反応がなかったもの。

 ……うっ、痣がちょっと痛んできた。我慢、我慢!


「はぁ。……こりゃ、まいったね。ミクゥはそう(・・)なんだね?」


 おばあさんは気付いたみたいだ。私の好きな人が、マクロだってこと。彼にわからないように聞いてくれている。だから私も黙ってその場で一つ頷いた。


「よくわかった。ミクゥ、あんたは時々ここに来な。そうさね、十日に一回でいい。まずは呪いによる痛みの軽減をしないといけないね。ちょっと待ってな」


 それから、おばあさんは部屋の奥へと向かう。詳しい説明をしなくてもわかってもらえるのは助かるな。すごく心強いや。

 ぼんやりとその後ろ姿を眺めていると、マクロが小さな声でポツリと呟く。


「さっきは、ごめん」

「えっ!? い、いいの。本当に気にしないで? マクロに悪気がないのはわかっているし」


 結構、気にしていたのかな? マクロだって心配して聞いてくれたんだと思うし……。心中は複雑だけど。

 私だってこれ以上の説明は出来ないわけだし、誰が悪いとかそういう話じゃないと思う。


「ちょっとビックリしたから。つい口が滑った。光の呪いのことは知っていたし、そうなのかなって考えてはいたんだけど」


 続けられたマクロの言葉にドキリとする。そ、そっか。知っていたんだ……。なんとも言えない恥ずかしさが込み上げてきて、顔に熱が集まっていく。


「最近だって言っていたから。ミクゥの想い人はラナキラのメンバーなのかなって思ったら、その……複雑で」

「うっ! そ、そうだよね……!」


 あああああ、そこまで気付かれているのね! 考えてみればわかることだったけど!

 私の思い人は誰だと思われているんだろう。マクロのことだって知られるのも恥ずかしすぎるけど、他の人だと思われるのはなんだか、もっと嫌だな……。


「ごめん、話題に出さない方が良かった、ね? 僕はいつも、余計なことを言っちゃうみたいだ」


 私の顔が真っ赤になっているからか、マクロはしゅん、となってまた謝ってくる。ああ、だから謝らないで?

 どうしてもマクロを困らせてしまう。悲しませたり、困らせたり、したくはないのに。


「本当に、気にしないで? 大丈夫だか、つぅっ……!」

「ミクゥ!」


 ズキン、と胸の痣が痛んだ。これだけでも痛むの? じゃあ、気持ちをハッキリ伝えた方がいいの? でも、そうすることでもっとマクロを困らせてしまったら?


 どうしたらいいのかわからない。痣も痛むけど、心の方がもっと痛む。

 苦しくて、痛くて、立っていられない。私は胸を押さえながらその場にうずくまった。


「待ってて、おばあさんを呼ぶから」


 耳元で、焦ったようなマクロの声。また迷惑をかけてしまった。また心配をさせてしまった。不甲斐なくて涙がじわりと浮かぶ。

 ダメ、泣いたらもっと困らせる。痛みと共に涙もグッと堪えた。


 すぐにマクロがおばあさんを連れて戻ってくるのが気配でわかった。おばあさんは私を一目見て何が起きたのかを察したみたい。ふむ、と頷くと投げやりにマクロに告げた。


「抱き締めておやり」

「……は? え?」


 それだけを告げてまた部屋の奥へと戻ろうとするおばあさん。それをマクロが慌てて掴んで引き留めている。

 すると、おばあさんは鬱陶しそうにそれを振り払い、鼻を鳴らしながら説明を口にした。


「呪い避け以外で一番効くのは人の温もりなのさ。だから苦しんでいたらすぐに抱き締めてやるんだよ。ほれ、さっさとおし。こっちの準備はもう少しかかるんだから」


 そ、それはどこまでが真実なのですか、おばあさん……!? というか、なんてアドバイスを送ってるんですかっ!?

 でも、今の私にそれを言うだけの余裕はない。ああ、マクロが困惑しているよぉ。ごめん、ごめんね、マクロ。このくらい耐えてみせるから!


「……ミクゥ、ごめん。触るよ」

「え……」


 フワッと、温かな感触が全身を包む。マクロが蹲る私を抱き締めているんだ。……ひ、ひぇ! ま、前にも抱き締められたことはあるけど、意識している今だと状況が違うっ!


「大丈夫。すぐに、痛み止めをもらえるから」


 恥ずかしくて、どうしようもない。だけど……。すごく、心地好い。

 抱き締められることで、耳がマクロの胸にピタリとくっついている。そこから少し速いマクロの心臓の音が聞こえてきて、それがまた私と同じで。


「……耳、ピクピク動いてる」

「あっ、ご、ごめ……」

「別にいい。ただちょっと、触りたくなるから目を閉じておく」


 こんな時に不謹慎だよね、とマクロが言うのがなんだかおかしい。そうだった、マクロはもふもふが好きなんだよね。


 ああ、ホッとするなぁ……。ギュッと腕の力が強められて、そのことにドキッとはするんだけど、泣きたくなるくらいに嬉しくて、幸せな気持ちになった。


 出来ることなら、ずっとこうしていたいって思うなんて、おかしいかな? 痣も痛むし、緊張でそれこそ心臓が破裂しそうなのに。

 ……ううん、違う。気付けば痣の痛みは消えていて、私に残っているのはマクロの温もりだけだ。


 私って、結構ずるい人なんだと思う。だってね?

 あと少しだけこうしていたくて、痛みがとっくに消えてしまったことを黙っていたのだから。


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