平常心!
いつの間にか寝てしまっていたみたい。ふと気付くと窓の外は夜の闇に染まる前、刹那のオレンジ色。
せっかくの女子会だったけど、最後は妙な雰囲気になっちゃったな。私なんか途中で逃げちゃったし。迷惑をかけちゃったかなぁ? あの後はどうなったんだろう。知りたいような知るのが怖いような複雑な気持ち。
そろそろ夕食の準備をしないといけないよね。みんな集まっているかな? エクトルやリニや……マクロも。なんだか顔が合わせずらいなぁ。両頬に手を当ててはふぅ、と息をつく。
「あれっ? ミクゥ、起きたの?」
「! ララ!」
一人で顔を覆って俯いていると、ソーッと部屋に入ってきたらしいララが私を見て声をかけてきた。寝ていると思ったから静かに入らせてもらったって。気を遣わせちゃったみたい。
「クレアから聞いたよ? 突然具合が悪くなったみたいって。大丈夫?」
「え、クレアが?」
どうやら、うまく誤魔化してくれたみたいだね。また頼っちゃったな。でも、すごく気まずかったから助かるよ。私は笑ってララに答えた。
「ぐっすり眠っちゃったからもう平気。ごめんね、突然あの場から出て行っちゃって」
「よかったぁ! いいの、いいの! 体調が悪い時は無理する方がダメなんだからっ」
せっかくなのでクレアの話に合わせて答えると、ララはホッとしたようにそう言ってくれた。やっぱり優しいな。でも気になるのはあの後のことだ。き、聞いても大丈夫かな?
「ミクゥ、あの後のことが気になっているんでしょ」
「うっ!!」
ソワソワしていたからか、ララにはあっさり言い当てられちゃった。そんなにわかりやすかったかな? ララは明るく笑って心配しなくても平気だよ、と手を振った。
「ちょっと私も調子に乗り過ぎたところがあったから、あの後ちゃんとキャンディスには謝ったの。でも、恋する気持ちはどうしようもないからねって釘は刺したけどっ」
「そ、それって心配いらないって言えるのぉ?」
でも、どうやらそれでよかったみたい。キャンディスも対抗して絶対に負けない、とは言っていたみたいだけど、変に隠したりされるよりずっといいってことで良きライバルという関係に落ち着いたんだって。
二人ともガンガン行くなぁ。その熱意と行動力はすごい。これが恋の力、なのかなぁ?
「私も、頑張らなきゃ」
「んんー? 何を? あ、ひょっとして恋の話ぃ?」
グッと拳を握って呟くと、それを拾ったララがニヤッと笑って聞いてくる。恥ずかしい気持ちはあるけど、今はここで引いたりなんかしない。
「うん。自分の気持ちを誤魔化したり、嘘をついたりしたくないもの」
「へ……」
怖さはあるけど、負けるもんか。クレアのために、そして自分のためにも。
サッとベッドから降りて服を直し、ララに振り返る。
「恋を、怖がったりなんかしないよ」
「そっか……そっかぁ!!」
きょとん、とした様子のララだったけど、私が宣言するとすぐに嬉しそうに笑い、私の腕にしがみついてきた。一緒に頑張ろうね、と言うララにうん、と返事をし、二人で階下へと向かう。
下にはたぶん、マクロがいるけど……大丈夫。いつも通りに出来るよね!
「……楽しくなってきたかも」
「え?」
階段を下りる途中、ポツリ呟かれたララの言葉を拾う。言葉自体は別に変なところはなかったんだけど、口調が大人びた方のララだったから気になってララの顔を覗き見た。
「んー? だって恋って楽しいじゃない? これからはもっと恋バナ出来るなーって。それだけだよ?」
「うん、そう、だね……」
振り向いた先で見たララの微笑みは、やっぱりどこか色っぽくて、大人っぽくて、素直に喜べなくなってしまう。
なんでだろう? 言っていることは普通なのに、なぜか不安が私を襲った。
「っ……!」
「? ミクゥ、どうしたの?」
その瞬間、またあの痣のあたりが痛み出し、顔を歪めてしまう。今の不安も恋による不安ってカウントされちゃうの? うぅ、難しいよー! 落ち着いて、私。大丈夫、何も不安になることなんてない。
「な、何でもないよ!」
ララは私の体質のことなんて知らないんだから、心配をかけちゃダメだ。ララは心から恋を楽しんでいるんだもん。そこに水を差すような真似をしたら楽しめなくなっちゃう。私のせいでララがそんな思いをするなんて嫌だから。
「そう? でも、具合が悪くなったらすぐに言ってよね! だってわたしたち、友達でしょ?」
ニコッと明るく笑ってそう言ったララはいつものララだった。無邪気で明るいその笑顔を見てるとやっぱりホッとするな。さっきの側面も含めてララなのはわかっているけど、やっぱりこっちのララの方が好き。
「うん、ありがとう」
ララが差し出してくれた手を取り、二人で手を繋いで階段を下りる。そうだよね、友達なんだもん。不安に思うことなんてない。さっきのは気のせいだったんだ。
心の中でさっきは勝手に不安に思ってごめんね、と謝りながら私は心を落ち着けていた。
ホールに着くと、真っ先にマクロを見付けてしまってドキッとする。一番に心配そうに声をかけてきてくれたのはエクトルとクレアだったというのに、私の目はまずマクロを見ていて、それに気付いた瞬間、恥ずかしすぎて部屋に戻りたくなっちゃった。も、もちろん我慢したよ!
「もう大丈夫なのか?」
「エクトル。うん、平気。ごめんね、心配をかけたみたいで」
「そんなこと気にしなくていいの! さ、座って! ちょうど食事の準備が出来たところなの!」
声をかけられたことでハッと視線を二人に移す。食事の準備を全部クレアに任せちゃったみたいだ。笑顔を心がけてありがとうって言ったけど……変な笑顔になっていないよね? 変な風に見られてないよね? きっと大丈夫! 平常心、平常心っ!






