早くもライバル対決!?
お昼を過ぎてまだ陽の高い時間に、マリノとキャンディスが来てくれた。この二人は事態が落ち着くまでこうして頻繁にラナキラに来てくれるから心強いよ!
習慣になりつつある四人でのお茶を楽しんでいたその時、ただいま、という声とともにクレアとアンジェラが戻ってきた。いつもと違ってその声がなんだか弱弱しかったから、私は気になって玄関まで迎えに行く。
「おかえり。あの、大丈夫?」
「ミクゥ! 私を癒してー!」
「わ、わ、どうしたのクレア?」
ドアを閉めながら声をかけると、クレアが抱き着いてきて私に甘えてくる。何かあったのかなぁ? 説明を求めるようにアンジェラを見上げると、同じように疲れた顔をしながらもアンジェラは苦笑を浮かべて教えてくれた。
「単純に、面倒な作業が終わったからヘトヘトなだけさ。あたしもさすがに疲れたよ」
「え、終わった? それじゃあ、ようやく?」
やっとあの事件が解決したのかな、と思って聞いてみたけれど、クレアとアンジェラは揃って大きなため息を吐いた。あ、あれ? まだなのかな。
「出来るとこまではやった、ってとこかしらね。これ以上、今は打てる手がないって感じ」
「人攫いの組織は潰せたと思う。けど、どうにも犯人たちの言っていることが意味不明でな」
二人が言うには、人攫いをしていた組織の主要人物は全員捕まったから、これ以上被害は出ないだろうとのこと。捕まっていない人たちもいるにはいるけど、すぐに足が付くし、各ギルドに呼び掛けているからいずれ全員捕まるだろうって。
ただ、どうしても引っ掛かる部分があるんだって。
「ミクゥとララに関しては、誰かに指示を出されたから攫った、と言うんだ。つまり、元々二人を攫う気はなかったってことさ」
「え? そんな指示、一体誰が……」
「それがわからないの。犯人たちに問い質しても記憶が曖昧で、覚えてないって言うのよ」
それは、確かに気になるね……。だから、事件は解決したけどまだ全てが解決したわけじゃないって微妙な様子だったんだ。
マクロが言っていた「人を操る力を持った人物」のことかもしれない。クレアたちもそう思ってはいるみたいなんだけど、それ以上どうしても調べが進まないんだって。むむー、なんだか悔しいな。
その指示を出した者を見付けるにしても時間がかかるし、当面の危険は去ったため、やることがなくなったクレアとアンジェラが先に帰って来たというわけ。
「いつまでもミクゥたちを屋敷に閉じ込めておくのもかわいそうだしね」
「だから、あたしとクレアが護衛として今は付いていよう、ということになったんだ。マリノやキャンディスもそろそろやることが溜まっているだろ?」
私たちのために? うぅ、優しい! 私が不甲斐ないばかりに、迷惑をかけてしまって申し訳ないけど、でも外に出られるのはすごく嬉しいよ!
「それって、お出かけ出来るってこと? やったー!」
一番喜んだのはララ。いつどこで誰に狙われるかわからない状態なのは変わらないのに、緊張感はなさそう。その無邪気さがララの良いところだよね。ずっと我慢していたんだもん。いい加減、外に出たいよね。
「あ、でもまだ戻ってきていないメンバーがいる、よね? 彼らはまだ忙しいのかな? そんな中で能天気だったかも……」
それでいて、メンバーのことも気にしてくれる。ララは優しい子だな。もちろん、エクトルたちのことは私も心配だよ。
「エクトルたちも今夜には戻ってくるわよ。あっちでやれることはもうないし、最後にもう一度調べたいって言っていただけだから」
そうなんだ。それじゃあ、今日は久しぶりに大人数での夕飯になるかな。
「久しぶりにエクトルに会えるのね! 嬉しーっ!」
「もう、キャンディスはいつもそればっかりねぇ。そんなにエクトルが好き?」
「大好き!」
両頬に手を当てて喜ぶキャンディスを見て、フフッと笑いながら声をかけるマリノ。キャンディスは好意が真っ直ぐで見ていて微笑ましいよね。わかるよ、マリノ!
「わたしも、エクトルが好きだな」
けど、そんかほっこりとした雰囲気はララの一言で一変する。その場にいたみんなが、動きを止めてしまったよ!
ふと、周囲に目を向けてみると、クレアが顔色を変えていることに気付いた。その様子があまりにも真剣で、私はララのことよりもこっちが気になってしまう。確かに、ここでララがカミングアウトしたのには驚いたけど、そんなに重要なことだったのかな?
何に引っ掛かりを覚えたのかはわからないけど、クレアはたまにこうして突然顔色を変えることがある。そういう時は決まって前世の記憶が絡んでいるから、たぶん今回もそうだと思う。
とはいえ、この場で出来ることなんて何もないんだけど。助けになりたい気持ちはあるのに、歯がゆいな。
「ちょ、ちょぉっと待ってくれるぅ? 初耳なんだけどぉ!」
「そりゃあね。今初めて言ったもの」
っとと、今はこっちだよね! 真っ先に反応したのはキャンディスだ。それはそうだよね。キャンディスにとっては突然現れたライバルなんだもん。聞き捨てならないのもわかるよ!
け、喧嘩になっちゃうかな? でも余計な口は挟めないので一人でオロオロしてしまう。
「あらら。楽しいことになってきたわねぇ?」
「マリノ、お前は黙っていろ」
一方でマリノは目を輝かせてキャンディスとララの様子を眺めている。そこにストップをかけたアンジェラ、えらいっ! 第三者が下手に入ると余計にこじれちゃう気がするもん!
「ど、どどどどういうことぉ!? ダメだよぉ! エクトルはキャンが先に好きになったんだからっ! 最近ここに来たばかりのララがしゃしゃり出てこないでっ」
「なんで? 好きになるのに早いも遅いも関係ないじゃない。エクトルが誰を選ぶか、が問題なんだもの」
「だからって、なんでエクトルなのぉ!?」
「だって、カッコいいもん。エクトル」
「それはそうだけど! エクトルの顔の良さは異常だし、あの顔があるだけで心が潤うけどぉっ!!」
ああっ、だんだんヒートアップしてきたよ! 主にキャンディスが! ララは大人モードに入っているから、どことなく余裕な表情でキャンディスを相手にしているみたい。
「……なによ、これぇ。乙女ゲームの方かと思っていたけど、これじゃどっちか判断出来ないじゃない」
「え?」
困惑する私の横で、ボソッとそう呟いたのはクレア。やっぱり、前世でのゲームの知識と何か関係がありそう。だけど、なんのことかさっぱりだよ。
そのままブツブツと思案体制に入ってしまったクレアはしばらく話しかけても無駄だと思う。それは仕方ないから後で詳しく聞いてみるとして……。
問題なのは! この状況、どうしたらいいのーっ!?






