休息の日々
ララがラナキラに来て数日が過ぎた。
あの日、改めてお願いされたララの仲間入りの件。実は、まだ保留になっているんだよね。というのも、あの場にいたのは私とマリノ、キャンディスだったから。
三人ともこれといって反対しなかったとはいえ、それだけで決めるわけにはいかないもの。ラナキラのメインメンバーはエクトルたちだし。勝手に返事は出来ないから、って話が終わっちゃったんだ。
ララには申し訳なかったけど、それもそうだよね、ってすぐに納得してくれたから助かったよ。それに、ちゃんと自分でエクトルに話してみるって言い出してくれた。
だから話が付くまでの間、ラナキラの拠点で一緒に生活を続けているのだけど……。実は、まだララはエクトルたちに会えてすらいない。なんていうか、どうもタイミングが合わないっていうか、すれ違ってしまっているんだよね。
でも、それも仕方のないことなんだ。追っていた大きな組織が捕まったことで、エクトルたちは今すごく忙しいから。私たちの誘拐事件は一晩で解決したものの、まだ重要な部分が解決していないみたいなんだよね。あまり詳しくはわからないんだけど。
そんなわけで、時々ここにも帰って来るには来るんだけど、すぐにまた出かけてしまう。そのせいでララと会えていないってわけ。正確には、見かけて挨拶くらいはするけど、ちゃんと話をする時間が取れないって状況かな。
「今が忙しそうなのはわかるもん。もし見かけても、すぐに聞いたりはしないよー。落ち着いた頃を見計らって話をさせてもらうつもり」
ララはそう言って気にしていないみたいなんだけどね。住む場所にも食べることにも困っていないから待っていられるんだ、って笑っていたっけ。
だけどタダでお世話になるわけにはいかない! って、ララは家事をあれこれ手伝ってくれていた。村では毎日やっていたと言うだけあって、ララはどんな家事も手際よくこなしてくれる。だから私としてもすごく助かっているんだ!
それに、お世話になるんだから何かしなきゃ! って思うところが、なんだか私と似ていて親近感が湧く。
「でも、打算もあるんだよ? だって、こうして過ごしている内に、ここにいるのが当たり前みたいに思ってくれたら仲間に入れてってお願いもしやすいじゃない?」
テーブルを拭きながら、ペロッと舌を出して笑うララ。外堀から埋めていく作戦なんだって。さすがだなぁ。行動力は私よりもずっとあるよね。そういうところ、尊敬しちゃう。
さて、午前中にやるべき仕事は一通り終わったかなー。ララが手伝ってくれるからあっという間だ。
「ララ、ちょっと休憩にしようか」
「やった! わたし、このままお茶の準備するね!」
今、この屋敷には私とララの二人だけ。他のみんなは例の件で飛び回っていたり、仕事をしているからね。本当は……私も仕事をしに行きたい。お掃除の依頼だってたくさん来ているから。
だけど、あの事件がちゃんと解決するまではここからあまり出ないでって言われているんだ。理由はもちろん、身の安全を守るため。
現行犯は捕まったとはいえ、動機や他の仲間がいないかを確認するまでは心配だからって、特にクレアが懇願するんだもん。涙ぐんでお願いされたら、一度心配をかけてしまっている手前、断れない。
せめて護衛の手が空くまでは我慢して、とのことなので、これ以上の手間を増やさないためにも、素直に言うことを聞くことにしたんだ。
「はい、ミクゥ」
「ありがとう」
換気のために開けていた窓を閉めていると、ララがお茶を淹れてテーブルに置いてくれた。そのままテーブルに座ると、向かい側にララも座る。
「ごめんね。ララもこの街を自由に歩きたかったでしょ?」
「ん? それはもちろんそうだけど、さすがに一度攫われちゃってるからねー! お世話になっている身だし、文句は言えないよ」
同じ理由で、ララもお屋敷に待機となっている。でも、正直私は嬉しいって思っちゃってる。だって、一人でお留守番よりも誰かがいた方が楽しいし、心強いもの。
「色々と落ち着いたら、街を案内してほしいな」
「それはもちろん! でも、私もまだ知らない場所が多いから、あんまり頼りにならないかもしれないけど」
「あははっ! それじゃあ、一緒に街を探検だね。それも楽しそう!」
ララはいつだって前向き。本当は不安があったり、窮屈な思いをしているだろうに、そんなこと表には絶対に出さないんだ。そういった出来事も全部、プラス思考に変えてしまえるのはララの強みだと思う。
「……ねぇ、ちょっと聞いてもいい?」
お互いに話が途切れ、ほんのわずかに沈黙が流れたところで、ララが小さな声で呟いた。ここには二人しかいないのに、なぜか潜められた声につられて私も小声で返事をする。
「私に、答えられることなら」
何か、真面目な話だったりするのかな? そう思ってカップを置き、真剣にララを見つめる。すると、ララからは想像もしていなかった質問が飛び出してきた。
「ミクゥって、ひょっとして恋をしているんじゃない?」
お茶を飲んでなくて良かった。だって、飲んでいたらビックリしすぎてお茶を吹き出しているいるところだったもの!
え、な、今、なんて言った? 恋? 私が!? な、ないない! あり得ないよーっ!?






