【クレア】緊急会議!
「エクトル」
「わかってる」
阿吽の呼吸で、私とエクトルの二人で緊急会議が開かれることが決定した。すぐに察して返事をしてくれたことから、エクトルも事が動き出したって気付いたんだわ。もう、内心大慌てよ! なぜって? そんなの決まっているじゃない。
なんでミクゥと一緒にヒロインが捕まってるのよ!? こんな展開、知らないわ!
ううん、私が知らないだけで、あの乙女ゲームから作られたというギャルゲーの方にそういう設定があるのかもしれない。
そう思ったからこそ、不本意ながらもエクトルに話しかけたの。本当に不本意! こいつには絶対にミクゥを渡したくないから本来なら敵なんだけど!
でもそんなこと言っていられないもの。何より大事なのはミクゥなんだから!
移動中に力尽きて眠ってしまったミクゥを、マクロが私たちの部屋まで運んでくれた。小柄だけど、ドワーフなだけあってかなり力持ちなのよね。
私が一緒についていって、マクロが出て行った後にミクゥを着替えさせ、布団をかけたところでホッと息を吐く。
ひとまず、ミクゥが無事でよかったわ。本当に、生きた心地がしなかった。
つい焦って、報告に来たマクロに掴みかかってしまったことには、すごく反省してる。その場にいたのがマクロじゃなくて私だったとしても、手も足も出せなかっただろうことは今ならわかるもの。マクロの実力でそうなんだもん。私なんかもっと役立たずだったはずだわ。後日、改めて謝ろうと思う。
本当は、ミクゥが目覚めるまで側にいてあげたいけど……ここは仲間を頼ることにする。キャンディスに言えば、きっとミクゥを見ていてくれるから。それにマリノ。あの人がいれば守りは万全。空間の魔法でこの部屋の前に結界を張ってもらえるから。
すでにエクトルが連絡をしたっていうから、もうじきここに来てくれると思う。
だから私は、今しか出来ないことをしないと。ミクゥが目覚めたら、ゆっくり話せないもの。意を決して、私はエクトルの部屋へと向かった。
私が部屋のドアをノックすると、すぐに返事があり室内へと招かれる。遅い時間に異性の部屋に行くだなんて、普通はあり得ない。でも、私たちの間にそんな妙な雰囲気だとか話は出てこない。当然よ。
「ララのことだろ?」
「話が早くて助かるわ」
エクトルはすぐに話を切り出してくれた。さぁ、作戦会議といこうじゃないの。
今回の件は、エクトルに話を聞けばすぐに解決すると思ってた。でも、話はそう簡単なものではないらしい、ってことがわかったわ。
まさか、ギャルゲーの方でも、ララが一緒に捕まっているなんていう展開はなかっただなんて。
「そもそも、ミクゥが攫われるなんてことが起こると思ってなかったからな。わかっていたら、対策を打ってる」
「……それもそうね。ミクゥに身の安全に関してだけは信用出来るわ」
今夜起きたことは、まったくのイレギュラーだったってことよ。
本当に、どうなってるのかしら。私たちが知っているシナリオは、事実とは色々違っているっていうのはわかっているんだけど……。すでにシナリオがめちゃくちゃだから?
「事件については置いておこう。考えてもキリがないから。問題はこれからのこと、だろ?」
その通り。ララがこのラナキラ本拠地へとやってきた。もうそれだけであの子が仲間になるのは決定事項みたいなものなのだ。シナリオに沿うというのなら、余計に。
「本音を言うなら、出来るだけ離れておきたいけどね。でも、ミクゥと仲良くなっているみたいだもの……。ここで断るのは不自然すぎるわ」
「だな。それなりの理由がないと追い返せない。聞けばララに帰る場所はないっていうし……。まず人として、追い出すなんて血も涙もないことは出来ねーよ。仲間になるかはともかく、しばらくはうちで保護っていうのは確実だろ」
ララの力は本物だ。ヒロインなだけあって、音の魔法がかなり助けになってくれるから。主に情報収集にね! 風の属性もあるからかなり遠くまで音を拾えるから、ギルドの仕事をする上でかなり重宝するのだ。戦闘能力はないけれど、その有用性に他の仲間が気付くのも時間の問題。保護、という体をとっていても、いずれは仲間になると思う。
「俺としても、あまり近付きたくはねーんだよな。ギャルゲー仕様だったら、確実に俺に惚れるじゃん、ララ」
「ゲームの性質上その通りだけど、なんかムカつくわね」
ギャルゲーとは、出てくる女の子がみんな主人公に惚れるものだから、それは仕方ない。乙女ゲームの方は相手を選べるけど、王道ルートがエクトルだからララがエクトルに惚れる確率はかなり高い。
「いっそ、攻略したら? ララを」
「ざっけんな! 俺は! ミクゥ一筋なんだよっ!」
私としてはそれが平和ではあるんだけどなー。先にララとくっついてくれたら、ミクゥはその性格上、相手のいる人に惚れたりなんかしないもの。対象から外れたら見ようとはしないものね。
「じゃあどうするってのよモテ男?」
でも、こいつはミクゥを諦めるつもりはないらしい。その姿勢は素直に尊敬するけどね。エクトルじゃなかったら私も少しは考えたんだけど。
「俺が、絶対にララに靡かない。それだけだ」
「……まぁ。随分と頼りになるお言葉ですこと」
私たちの間に、見えない火花が散った。






