人を操る力
「クレア、俺もミクゥの無事を確認してーんだけど」
クレアの背後からエクトルも駆け付けてきてくれた。見ればリニやアンジェラもいる。みんなで助けに来てくれたんだ……。心配をかけちゃったな。
「ハグは禁止よ、エクトル」
「マクロはいいのに!? マクロ、後で覚えてろよぉ!?」
「……知らない」
ああ、もう。ハグの件にはもう触れないで! 恥ずかしくなるからっ。
とにかく、私はまずみんなに言わなきゃいけないことがある! ちゃんとみんなの方に向き直って勢いよく頭を下げた。
「ごめんね! 私が鈍臭いからこんなことになっちゃって……。ご迷惑をおかけしました」
それぞれ、抱えている仕事で忙しいはずなのに、迷惑をかけことになって本当に心苦しいよ。もっとみんなの役に立てるようになりたいのに……。私はまだまだだなぁ。
「何を言っているんだ、ミクゥ。悪いのは悪いヤツだ。被害者に落ち度は一切ないぞ」
「アンジェラの言う通りだ! ミクゥは何も悪くない。それに、こいつらは俺たちが追っていた犯罪組織だった。こうなる前に捕まえられなかった俺たちに落ち度があるんだ。だから、ごめんな。ミクゥ……」
あ、やっぱり追っていた組織のメンバーだったんだね。もしかしたらそうかも、って少し思ったけど。でもまさか私も巻き込まれることになるとは思わなかったよ。
「アンジェラ、エクトル、ありがとう。アンジェラの理屈でいくなら、エクトルも悪くないよ? だから謝らないで」
「う、それもそうか……」
なんだか謝罪合戦になってきたな。そう思い始めたところでリニの明るい声が場を和ませる。
「ある意味、ミクゥのおかげで捕まえられたって考えれば、お手柄じゃねぇ? そりゃあ危険な目に遭わせちまったのは悪かったけど……。でもさ、ミクゥのおかげで捕まえられたんだ。ありがとな!」
「リニ……。ありがとう!」
おかげで雰囲気が暗くならずにすんだ。リニの人柄のおかげだね! それに、みんなが励ましてくれているのがよくわかる。優しいメンバーでありがたいな。
ホッと肩の力を抜いていると、突然犯人の内の一人が叫び声を上げはじめたから驚いて振り返る。見るとそこには倒れ伏す犯人を踏みつけて縛り上げているマクロの姿が。え、え、何をしているの!?
「ほ、本当に知らないっ!」
「嘘だ。お前たちの中には人を操ることの出来る人物がいたはず」
「いッ! 痛だだだ!! 本当にっ、知らねーんだってっ……!」
どうやら、犯人に何かを問い詰めているみたい。マクロって結構、その、容赦がないよね……。必要なことではあると思うけど、ちょっぴり怖いな。さっきまでのマクロとは、別人みたい。
……ううん、そんなことより内容だよ! 人を操ることの出来る人物って? 首を傾げていると、クレアがそっと耳打ちで教えてくれた。私が捕まったあの時、マクロは突然何らかの力によってその動きを封じられてしまったというのだ。指一本動かせなくなり、かなり戸惑ったみたい。え、そんなことが起きていたの? こ、怖い……。
「マクロほどの実力者を動けなくさせるなんて只者じゃないわ。だから、組織のメンバーには手強い人物がいるかもって聞かされていたの。でも、倒してみたらどいつもこいつもみーんな雑魚。それらしき人物は見当たらなかったわ」
そんな人物がいるなんて。しかも人を操るなんて恐ろしすぎる力だよね。捕まえた中にはいないっていうから、逃げたのかな……? そんな人がまだ捕まらずにいるってこと? これで事件は終わりってわけには行かなそうだな。
「まぁでも! ミクゥが無事でよかったわ! 他にも捕まっていた人がいたのね? もう一人だけ?」
あ、そうだった! 少し離れた位置でじっと待っていたララをこちらに呼ぶ。紹介するって言っていたもんね。
「紹介するね。逃げるのを手伝ってくれたララだよ。ララ、この子は私の双子の姉のクレア。同じギルドのメンバーなの」
「え……」
「えっと、ララです。あの! 突然で申し訳ないんだけど……」
私がララを紹介した途端、クレアが硬直したのがわかった。あ、あれ? 何? どうしたの?
「私を、あなたたちの仲間にしてもらえないかな?」
一方で、ララは屈託のない笑顔でハッキリそう告げた。うん、直球をぶつけてきたね! 今の姿はララの無邪気な面が濃く見える。
「え、エクトル……」
ほんの一瞬、放心していたクレアだったけど、すぐに小さな声でエクトルの名前を呼んだ。クレアがエクトルを呼ぶなんて珍しい。疑問に思って首を傾げていたんだけど、仲間になるならリーダーに話をしなきゃダメでしょ! とのこと。それもそうか。でも妙に慌ててない?
「ちょ、ちょっとだけ待っていてね! あいつを呼んでくるから!」
それからあたふたと駆け出し、エクトルの元へ向かうクレア。取り残された私とララは顔を見合わせて、クスッと笑い合う。
「突然すぎて、驚かせちゃったかも?」
「そうかもしれないね。でもきっと大丈夫。どうなるかはわからないけど、まずは私たちの本拠地までは一緒に行くことになると思うから」
「本拠地? ベッドある?」
あるよ、と答えると、ベッドで寝るなんて何日ぶりかな? と嬉しそうにララは笑った。私よりも前に捕まっていたっぽいもんね、ララは。今日はゆっくり休んでもらえたらいいな。






