条件達成!
「たっだいまー!」
結局、パタパタと顔を手で仰ぎながらラナキラに帰ってきた。ちょっとは顔の熱も引いているといいんだけど。元気よく声をかけながらリビングのドアを開けたリニはまっすぐ定位置のソファにドサッと座ってすでにリラックスモードになってる。自由気ままって感じだなぁ。
「おかえりミクゥ! どうだった!? 変なことに巻き込まれたりしなかった!?」
真っ先に私の元に駆け寄ってきたのはクレアだ。なにもそんなに心配しなくても。驚きつつも飛びついてきたクレアを抱きとめていると、その後ろからエクトルも駆け寄ってきて焦ったように口を開いた。
「二人だけでウェールズんとこに行ったって!? なんってことを! なぁ、ミクゥ? ウェールズに変なこと言われなかったか? あいつ、女を見るととりあえず口説くんだよ……。本気じゃないのにあの色気だから、よく勘違いされて女関係の揉め事ばっかり起こしてるんだ」
えっ、そうなの? 確かに大人の色気漂う印象はあったけど、女性関係で頻繁に揉めるだなんて知らなかったな。あれ、でもそのことをクレアは知らなかったのかな。知ってたらもっと心配したし、私をもっと引き留めていたよね。そう思ってクレアに目を向けると。
「あ」
今思い出した、と言わんばかりに口を開けて顔を青ざめさせていた。えっ、知ってたの!? 忘れてたとか? あの心配性なクレアが?
「くっ、ウェールズは推しキャラの一人だったからすっかり失念していたわ……!」
それから小さな声でブツブツと呟いている。おし、キャラ? それってなんだろう。
「そうよ、そんなことより! ミクゥ、それでどうだったの!? 口説かれたりしなかった!? 変なことされてない!?」
首を傾げていたらすぐに我に返ったクレアがものすごい勢いで聞いてきた。わ、びっくりした。グイッと服にしがみついて顔を寄せてくるクレアは必死だ。お、落ち着いて!
「別に大丈夫だったぜー、二人とも。ミクゥが天然記念物の初心さを持ってることは知れたけどなー。それだけだ!」
「ちょ、リニ! その話はもうおしまいだってばー!」
リビングの入り口でワーワー騒いでいる私たちに、リニがソファから気だるげに口を挟んでくる。さっきのことを思い出してようやく収まった顔の熱がまた……! うう、顔が熱い。
「な、なんでそこで照れるのよ……?」
「ま、まさかミクゥ、ウェールズの毒牙に……!?」
あれ、なんで二人は怖い顔をしてるの? そう疑問に思ったのも束の間、次の瞬間には二人に詰め寄られてあれこれ質問攻めにされてしまった。えっ、あっ、ちょっ、落ち着いてってばー! なんでこんなに焦ってるの、二人はー!?
結局、ウェールズのところで起こった出来事や話した内容を順を追って細かく話すまで二人は開放してくれなかった。な、なんであんなに鬼気迫る様子で……。クレアの心配はなんとなくわかるけどね? いくらなんでもあそこまで年の離れた人に恋はしないから大丈夫なのに。そもそも、恋なんてそう簡単に出来ないよ。よくはわからないけど。
それに、ウェールズにはこ、ここ恋人がいるんだもんね。それなら余計に心配いらないのに。そう言ったらクレアにもエクトルにも同時に甘い! って言われちゃった。えぇー?
「エクトルとクレアって似てるのね。キャンなんとなくわかっちゃった。二人ともただの過保護だってことがーっ!」
ようやく二人に開放されて、空いているソファでぐったりしていたら、それまで呆れたように事の次第を眺めていたキャンディスがよしよしと頭を撫でてくれた。キャンディスぅ! 優しさが染みるよぉ。今日は朝から変にドキドキしてばっかりで疲れちゃった。まだ午前中なのに。
「そんなことより、大丈夫なのぉ? ウェールズとマリノが仲間になってくれなかったら、他の人を探さなきゃなんでしょ? キャンしんぱーい!」
そうだよ、それそれ! 一番大事なところじゃない。だというのに今まで全然その話に触れないんだから。まだマクロとキーファが起きてこないから二人には後で話すとして、まずはラナキラの代表であるエクトルの意見を先に聞いておきたい。
「んー? それなら大丈夫。すでにマリノとの話はついてるからな」
え、えええええっ!? なにそれ、初耳! 私だけでなくクレアやキャンディス、リニまでも驚いて声を上げている。えっ、いつも側にいるリニも知らなかったの?
「なんだよ、エクトル。そういうの先に言えよー。じゃあ俺らがウェールズのとこに行ったの無駄足じゃーん」
「悪い、悪い。でも、俺だってマリノからの返事を聞いたのは昨日の寝る前だったんだよ。それに、どのみちウェールズにも話を通しておくつもりだったし、無駄じゃないさ」
なんでも、昨日エクトルが部屋に戻ると、窓際に手紙が置いてあったのだそう。マリノとの連絡手段は、彼女の魔法を使った手紙でのやり取りなんだって。だから時間関係なく届けられるらしい。それなら、言うタイミングがなくても仕方ないね。
「ってことは、必要な人数は集まった、ってこと?」
私が恐る恐るそう聞くと、そういえばそうだな、となんとも気の抜けた返事。えっ、そんなもの? めでたくないの? これで上級ギルドになれるんだよ?
「なんか、実感がわかないな……」
そっか、ただ実感がなかっただけか。申請が通ったらまたこみあげてくるものがあるのかな。言われてみれば、私も実感なんてないや。
「案外、あっさり決まったしなー。でもさ、それならちゃんと申請して上級ギルドを名乗れるようになったら、全員集まってお祝いしようぜ!」
「えっ、それって素敵! リニにしてはいいアイデア出すじゃない。やろうやろう! キャン楽しみーっ!」
「やるならここで、よね。お店じゃ騒いで迷惑になるだろうし。よーし、またご馳走を考えないといけないわね! 腕が鳴るわ」
みんながあれこれ楽しそうに話すのを見て、じわじわと嬉しい気持ちが込みあがってくる。そっか、とりあえず、目標は達成したんだ。
「私も、楽しみ!」
まだまだ、活動するのはこれからだけど、やっとスタート地点に立てたことを、今は喜ぼう。あっ、マクロやキーファ、アンジェラにも伝えないとね!






