赤面する日
戸惑っていると、ウェールズは見るからに肩を落としてトボトボと店の中へと向かおうとした。このままじゃ、話も出来ずに終わっちゃうかも! そう思った私は何も考えずに彼を呼び止めた。
「あ、あのっ、ウェールズ!」
「んんー?」
呼び掛けたはいいものの、何を話せばいいのかわからない。だって私たちはまだ出会ったばかりなんだから、何も知らないんだもの。どんな話題なら楽しんでくれるのか、逆にどんな話題は嫌なのか、全くわからないんだから!
こういうのは少しずつ会話を繰り返していくことでお互いを知れるん……あ、そっか。それでいいんだ。
「私、貴方のことをもっと知りたいの!」
「げっ、ミクゥ!?」
そうだよ、仲良くなるにはまずは知ることから! そう思って言ったんだけど……。あれ? リニが慌ててる? 私、まずいこと言ったかな。
「……プッ。だはははははっ! 本当に面白い嬢ちゃんだなぁ!? こんな熱烈で直球な口説き文句は初めてだぜ! 愛を感じるねぇ!」
首を傾げていたら、さっきまで悲しい顔をしていたウェールズが今度は思い切り笑い始めた。そして、ようやく私は自分の失言に気付いたのだ。
「くっ、口説いてるわけじゃ……!!」
一気に顔が熱くなっていく。なんだか今日はこんなことばっかりだよぅ。絶対にわかっててからかってる、この人!
「そうかい? でも俺はその口説き文句に乗りてぇんだが。そうか、さっきの言葉は嘘だったのかぁ。悲し」
「う、嘘ではないよっ! ウェールズのことをもっと知りたいって思ったのは本当なの! で、でも、その、そういう意味じゃ……」
「ふぅん? じゃ、どういう意味だい。言ってみな」
ウェールズは私の顎をクイッと軽く上げながら顔を近付けて意地悪く笑う。い、色気がすごいっ! うわぁぁ、どうしたらいいの!? クレアぁぁぁ!!
「はいはい、そこまで。おっさん、それ以上はエクトルが爆発するから」
「おっ、そいつはまずいな」
パニックになっていると、スッと間に入ってリニがストップをかけてくれた。はぁぁ、助かったぁ。でもなんでエクトル? どちらかというと火がついたように怒るのはクレアなんだけどな。
まぁいいや。とにかく落ち着かなきゃ。どうしても恨みがましい目でウェールズを見てしまうのは許してほしい。
「悪かったって。そう膨れるな。怒った顔も可愛いけどよ」
「ウェールズっ!」
私が毛を逆立てて怒っても、ウェールズははいはい、と手をヒラヒラさせている。絶対に反省してない! のらりくらりと私の怒りをかわしているみたい。もーっ!
「嬢ちゃんのおかげで俺は気分がいい。お前らの話、聞いてやるよ」
「まじか! やったぜー!」
リニによると、ウェールズは気分屋なところがあるため、一度ヘソを曲げると全く話を聞いてくれなくなるのだそう。だから今日はもう諦めかけていたんだって。ありがとな、って頭を撫でられちゃった。え、そう? それなら恥ずかしい思いをしたのも無駄じゃなかったかな。えへへ、力になれたのなら嬉しい。
「……めちゃくちゃ素直だな。本当にいい子じゃねぇか」
「だから、本当にいい子なんだよミクゥは。マジ、目を離せないくらいに」
「だな。こりゃ危なっかしい」
突然、真面目トーンで褒められたら、それはそれで困るんだけど。でも褒め言葉なんだから文句を言うことではないか。それでも危なっかしいって言われちゃったし、ありがとう? と疑問形になっちゃったけど。そう言うと無言で二人に頭を撫でられたのは意味がわからなかったよ。むー、なんで?
「散らかってるけど、適当な椅子に座ってくれ。あ、茶でも出した方が良かったか?」
なんだかんだとあったけど、ウェールズはちゃんと話を聞いてくれるらしく、お店の中に私たちを招き入れてくれた。適当な椅子に座れ、とは言うけれど……。足が折れていたり埃を被っていたりでまともな椅子は見つけられない。うーむ。
「ウェールズ、ちょっとこの部屋の中の埃だけでも綺麗にしていいかな?」
「あん? 掃除してくれんのか。そりゃありがてぇけどよ、かなり時間がかかる……」
「ありがと! 光魔法、浄化!」
綺麗にするだけだけど、一応許可を取っておかないとね。どうしてもこの埃まみれの状態が我慢ならなかったから、ありがたいって言葉を聞いた後は最後まで聞かずに魔法を発動させちゃった。だって、尻尾に埃が集まってきちゃうんだもん。
「おぉ……。こいつぁいいな!」
「俺らの家もこうして綺麗にしてくれたんだな! すげぇ!」
あっという間に綺麗になった部屋を見て、二人が感心したように声を上げてくれた。そんなに褒めなくても、このくらいなら出来る人もたくさんいるだろうに。私がそう言って照れると、そんなことはない、とウェールズが言う。
「そもそも光魔法の適性があるヤツは少ねぇし、浄化を掃除に使うヤツなんかもっといねぇもん。すげぇよ」
確かに、光魔法の適性を持つ人は他に比べると少ない。それに掃除に使うのだって、クレアの提案があったから使えるようになったし、ウェールズの言うことはもっともではあるんだ。
でも、褒められると照れちゃう。昨日はクレアが照れているのを見て微笑ましい気持ちになったけど、自分がこうなるのはちょっと困る。だって、どう反応したらいいのかわかんないよー!
「それに、魔力の操作が繊細だと思うぜ。かなり訓練してないとこうはいかねーだろ。自信持てよ、ミクゥ!」
なのにリニがさらに褒めてきて、また顔を赤くしてしまう。あーもうっ! 今日は暑いなーっ!






