いとも容易く
「あのー、そろそろ本題に入った方がいいんじゃないかしら?」
エクトルがキーファを掴み、キャンディスがむっとしながらその様子を眺め、笑い転げるリニに無表情で突っ立ったままのマクロ。そして置いてけぼりな私たちという困った状況に口を挟んでくれたのはクレアだった。た、助かったよー。そうだよ、何をしにきたのかわからなくなるところだった。
「う、ごめん。そうだったね。今日はキーファに頼みがあって来たんだよ」
「この子たちを自分のお嫁さんにしてくれって?」
「ん、な、わ、きゃ、ねー、だ、るぉ!? いー加減、真面目に話を聞けっ」
「うあー、痛い痛い、寝不足の頭にグリグリはやめてー」
なるほど、脱線させてるのはキーファだった。ちょっと目も細い人で飄々としてるから本音がどこにあるのかわかりにくい人だなぁ。それがさっきクレアが言ってた腹黒ってことなのかな?
「もういい、さっさと本題だけ言う。キーファ、俺たちの……」
「いいよー」
「お、い?」
ニコニコしたままキーファは話も最後まで聞くことなく返事をしてしまった。そのことにエクトルがまた青筋を立てている。エクトルのとびきりの笑顔が怖く見えるよ!?
「お前な、まだ俺は全部話してな……」
「ラナキラを上級ギルドにするために人員を増やしたいんだろ? だから自分を仲間に引き入れたい。違う?」
「……」
えっ、えっ? なんで? 知ってたの? どうして? エクトルも目を見開いて驚いてる。けどそれは一瞬のことで、すぐにその目を半眼にした。
「ほんとキーファってそういうとこあるよな。ちょっとは人にペースを合わせるってこと覚えろよ……」
「いいよって言ってるのになんで自分が文句言われなきゃなんないのかな?」
そして諦めたようにガックリと項垂れた。んー、よくはわからないけど、キーファは元々、こうなることを予測してたってことかな。だから考えなしに返事したように見えて、実はすでに考えてたのかも。
「君たちのことだ、自分にはここで今まで通り過ごしてていいって言うつもりなんだろ? ただ所属するだけ。まー、緊急時は面倒になるだろうけど、身入りも良さそうだし断る理由はないかなって思った。それだけさ」
「お前のそういうところがすっげームカつくんだけど!?」
「違うの?」
「合ってるからムカつくの! 助かるよっ! ありがとなっ!!」
うーん、本当に変わった人なんだなぁ。エクトルも、怒ってはいるけど本気じゃないっていうか……いや、本気で怒ってはいるけど仲良しだからこその雰囲気を感じる。二人のやり取りがなんだか面白くて思わずクスクス笑ってしまった。
「もちろん、キャンも誘ってくれるんだよね? エクトルぅ?」
すると、そんなエクトルの腕に絡み付きながらキャンディスが猫耳をピクピクさせて聞いている。えっ、自ら名乗りを上げてくれるなんて嬉しい! けど、エクトルの返事はなんだかパッとしないものだった。なんでっ!?
「えっ、いや、まぁ……」
「まさか、誘ってくれないの……?」
ああっ、キャンディスが涙ぐんでる! 黙っていられなくなって私は咄嗟に声を上げた。
「もちろんキャンディスも仲間になってほしいよね? 私はなってほしい! エクトル、そうでしょ?」
「み、ミクゥちゃん……!」
両拳を握って真剣にエクトルを見つめると、困惑したように眉尻を下げるエクトル。人員の確保したいんだよね? シナリオでもキャンディスは入ってるし……あ、でもシナリオ通りじゃダメなんだっけ? でも、マクロの相手じゃなさそうだし……あー、もうよくわからない! シナリオなんてどうでもいい! このままじゃキャンディスがかわいそうだもの!
「……あなた、ミクゥっていうの?」
「え? あ、そうなの。初めましてキャンディス」
訝し気に声をかけられてハッとする。私ったら、まだ名乗ってもいなかったよ! ごめんなさいと、よろしくねの意味を込めて手を差し出してはみたけど……やっぱり警戒されているのか、なかなか手を取ってくれない。さ、さみしいっ!
「なんでキャンに仲間になってほしいの? ライバルになっちゃうかもしれないのに」
「ライバル?」
キッと私を睨みつけながらキャンディスは私に聞いてきた。ライバルって……なんのだろう? 首を傾げていたら慌てたようにエクトルが間に入ってきた。わ、びっくりした。
「も、もういいだろそんなことは! せっかく仲間になるんだから仲良く……」
「エクトルは黙ってて! 今はキャンがミクゥと話してるのっ!」
遮ってきたエクトルに対し、キャンディスが怒りながら光を放った。眩しいだけで実害はないけどそんなことはどうでもいい。今、光の魔法を使った?
「ね、答えてミクゥ! エクトルのこと、どー思って……」
「キャンディスは、光の適性があるのね! 嬉しい、私と一緒だ!」
「……え?」
うわぁ、嬉しい! 村には光の魔法適性を持つ人がいなかったから、仲間が出来たみたいで!
「他にはなんの適性があるの?」
「え、あ、えっと、水も……」
「そっかぁ、私は光しか使えないから羨ましいな。でも、同じ適性同士ならきっと仲良く出来ると思うの!」
「え、あ、ええ……?」
ブンブンと両手でキャンディスの手を握って上下に振ってしまう。はっ、いけない、私ったら浮かれすぎてキャンディスを困らせちゃってた!? 耳がへたんってなってるもん。わー! ごめんーっ!
「ご、ごめんね、私、浮かれちゃって。えっと、何か言っていたよね……?」
今更かもしれないけど、恐る恐る聞いてみる。何か、質問された気がしたんだけど、聞いてなかったの。本当にごめんなさい。
「……ミクゥって、天然なのぉ?」
「そうなのよ。ごめんなさいね。でも可愛いでしょ? あ、私はミクゥの双子の姉のクレアよ。貴女が心配するようなことはないって私が保証してあげるから。仲良くしましょ」
「ふぅん……大体わかった! ま、いーよ! 仲良くしてあげるっ」
え、天然? ちょっとボケっとしてただけだもん、失礼な! でもクレアが肯定しちゃった。しかもあれ、なんかキャンディスと打ち解けてない? ずるいずるいっ! 私も握手してー!






