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【エクトル】ゲームの知識


 俺が、ここがゲームの世界だと気付いたのは、わりと最近のことだ。


 それまでは、ただの子ども。ちょっと魔法の扱いが上手くて剣術もこなせる、将来有望なイケメン孤児だった。……いや、自分でそう思ってるわけじゃなくて、それが他者からの評価なんだ。鏡なんてもの、見たこともなかった十歳の俺に、そんなことわかるわけないだろ? 今は自覚もあるけど。

 だってマジでイケメンなんだよ、エクトル。そう、俺が前世でやりこんだギャルゲーの世界、その主人公に俺は転生していたのだ! 正直心が躍ったね。仕方ねーじゃん、男だもん。


 俺がそれを知ったのは十歳の時。生まれて初めて鏡というもので自分の姿を見た時だった。一気に記憶が脳内に流れ込んできて、激しい頭痛に襲われ、倒れてしまったことがあった。目が覚めた時、そこは孤児院のいつものベッドの上で、心配そうに俺を覗き込むリニとマクロの顔を見て確信したんだ。

 ああ、順調にゲーム通りに進行してるんだな、って。


 このゲーム、実は最初は乙女ゲームとして人気を博したゲームだった。けど、そのライバルキャラの人気が急上昇したことから、急遽ギャルゲーとしても売り出されたのである! 

 俺はもちろんギャルゲーの方にハマったクチだけど、ファンとして当然、乙女ゲームの方もプレイしたことがある。おかげで女の子キャラも男キャラもかなり知り尽くしていると思う。

 たぶんクレアは乙女ゲームの方をやり込んだクチと見た。前世が男だったー、とかだとわかんねーけど。ま、予想だけどな!


 で、だ。ハマった方のゲームは、ギャルゲー要素をメインとして謳ってはいたけど、ギルドを大きくしようというコンテンツもあって、そっちの方にハマっていくプレイヤーが多かったんだよな。俺もそれがあったからどハマりしたと言える。

 攻略キャラもそうでないキャラもギルドのメンバーとして仲間に出来たり、様々なミッションをこなしたり……オンラインでギルド間の勝負をしたりとかも出来てめちゃくちゃ楽しかった。俺の青春時代はほぼこのゲームに費やされたといっても過言ではない。別にぼっちだったわけじゃねーぞ? リアルの友達とも一緒にやったりしてたからな!


 さて、ここからが一番大切なことなんだが……ギャルゲーのストーリーを進めていくとどうしてもルートの分岐点がやってくる。ギャルゲーだからな、誰か一人を選ばなきゃいけないってことだ。全部クリアするとハーレムルートも進めるんだけど、俺はたった一人のキャラに惚れ込んでいたから、その他のキャラなんてオマケでしかなかった。もちろん、一度は一通りクリアしたけど。


 そのキャラっていうのが、ミクゥちゃんである!


 銀髪で清楚で内気な狐っ娘とか最高だろぉぉぉ!! 友達は同じ狐っ娘の明るく元気なツンデレクレア推しだったり、乙女ゲームのヒロインでもある天真爛漫で小悪魔なララ推しだったり、甘えん坊の妹キャラなキャンディス、クールなお姉さんキャラのアンジェラ推しだったりしたけど、俺は一途にミクゥちゃんだった。彼女以外考えられなかったんだ。


 そんな彼女と、リアルに恋が出来るなんて……もう、神様に感謝したね。だから俺は出来る限りシナリオ通りに進むようにこれまで以上に努力した。ゲーム内に出てくるリニやマクロとの信頼関係も築き上げ、この二人の実力の底上げもしてさ。

 こいつらとは物心つく前から孤児院で一緒に育ってきたから、もう兄弟みたいなもんだったし、シナリオ通りに進めないと決めたとしても、この二人だけはずっと一緒だったと思う。


 あ、孤児院って言っても、マクロは出稼ぎのために孤児院で暮らしてただけで実家はあるけどな。三人でドワーフの鉱山まで行って温泉入りに行ったりもしたっけ。楽しかったよなぁ、今度はミクゥちゃんたちも連れて行きてぇ。マクロに頼まなきゃだけど。


 ただ一つ、気を付けなきゃいけないことがある。


 それは、ミクゥちゃんの持つ性質だ。この世界は魔法や属性なんかが人格に大きく左右される世界だから。複数の属性を持つのが当たり前のこの世界で、ミクゥちゃんは光属性たった一つしか持たない。そのせいで、彼女は誰かに恋をすると生涯そのたった一人だけを愛し続けることになる。

 いや、最高だよ? だからこそ余計に彼女が愛おしいんだけどさ、それはある意味、大きな爆弾でもあるんだ。


 もしも、俺以外の相手に恋をしてしまったら……?


 なんらかの原因で彼女たちがギルドに来ることなく、村に残りでもしたら……そこで恋をして生涯を終えてしまうかもしれない。そ、そんなの絶対に許せない! 彼女の相手はこの俺だーっ!!

 どうもクレアの介入のせいでミクゥちゃんは俺に一目惚れしてくれなかったみたいだし……かなりの痛手だ。ここが最重要だったのにクレアめーっ!


 予定は狂わされたがとにかく、彼女たちの村の壊滅阻止イベントは必須だった。乙女ゲームでは壊滅されたその村も、ユーザーの強い要望によりギャルゲーでは救われる設定となったあのイベントだ。俺にとってはそこが最初の分岐。だってここが乙女ゲーの世界なのかギャルゲーの世界なのかの分かれ目とも言えるんだからな!

 ただ……村を助けた代わりに、仲間になってもらいたいっていう説得は、少々……いやかなりゲスい感じになりそうで気が引けたんだよな。そこはネットでも荒れた部分だ。現実にそれをやるってのは俺の中でかなり抵抗があったけど、背に腹は変えられねぇし。ま、上級ギルドにするために人数が必要なのは本当だったし、それを理由にすればまだマシかなって思ってた。


 そしたら思わぬ誤算! クレアとミクゥちゃんが予想外に強かったという良い方への誤算だ。これならいけると思ったね。実力を燻らせるのは勿体ないといえば、ご両親はすぐに許してくれたし。むしろ感謝されて俺としては完璧すぎるシナリオになった。村は助かり、彼女たちも仲間に出来て最高だぜ! これでこの世界は乙女ゲームではなくギャルゲーの方に傾いたはず。


 おかげで今のところ順調にギャルゲーのシナリオ通りに進んでる。一目惚れしてもらえなかったから、年頃のミクゥちゃんがいつ誰に恋するかわからない。他の誰かに恋をして死の可能性が浮き出てくるより、俺に恋した方がミクゥちゃんの命は守られる。俺のミクゥちゃんへの想いは本物なんだから! 乙女ゲームのようにヒロインに傾くなんてことも絶対にないし!


 だから俺は、絶対にミクゥちゃんを落とす! 絶対に彼女には、俺に恋してもらうんだ!


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Cross Infinite Worldよりタイトルは「Surviving in Another World as a Villainess Fox Girl!」です!
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