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掃除上手と料理上手


 バスルーム、さっき通されたリビングルーム、それから他の空き部屋なんかも手当たり次第に浄化し終えた私は、最後にクレアのいる私たちの部屋に向かった。そろそろ片付けも終わったかな? 階段を登ってすぐ左側にある部屋のドアをノックしながら声をかけると、すぐにクレアのどうぞ、という返事が聞こえてきた。


「クレア、そっちはどう? わ、意外と広い」

「ね! 私もビックリしたわ。まさかこんなに広いとは。二人でも十分な広さよね」


 エクトルは一人一部屋使ってもいいって言ってたけど、この広さなら二人で一部屋で十分すぎる。だって、ベッドももう一つくらい余裕で入っちゃうもん。あんまり広い部屋に一人だと逆に心細いしね。


「キャビネットを運んでくれたの? 重たくなかった?」

「このくらいなら平気よ。隣の部屋から持ってきたし、中身が入ってないから軽かったし。あとはベッドを運べばいいかなって思ってるんだけど、さすがにこれは一人じゃあ、ね」

「わかった、手伝うね。その前に……光魔法、浄化!」


 整頓された部屋に浄化をかけると、やっぱり違うね! 新築の部屋みたいに綺麗になったよ! クレアも嬉しそうに耳をピョコピョコ動かしてる。可愛いっ。


「じゃあクレア、ベッドを運んじゃおうか」

「うん。それが終わったら一緒にご飯の支度しましょ」


 ふふっと笑い合って私たちは揃って隣の部屋に向かった。ここはすでに浄化魔法をかけてあるからベッドもフカフカだ。やっぱり清潔な場所で寝たいよね。二人で声を掛け合いながらベッドを運び入れ、ふぅと一息。それから一緒にキッチンへと向かう。


「クレア、バスルームも広かったよ」

「ほんと? ミクゥと一緒に入れるかな」

「入れる広さではあるけど、もう子どもじゃないんだからー」


 クレアは未だに一緒にお風呂に入りたがるんだよね。しっかりしているようで、甘えん坊なところがある。そこが可愛いんだけどね。ここに来たばっかりで不安もあるだろうし、今日は一緒に入ってあげようかな。

 クレアにより広まった湯船に浸かるという習慣は、私たちの村ではもう慣れたものだけど……エクトルたちは変だっていうかな。一般的ではないんだよねー。浴槽にお湯を張ったら不思議がられるかもしれないな。


「ん! それは使えるかも!」


 私がそう溢すと、クレアが閃いた、というように人差し指を立てる。


「たぶんだけど、エクトルも湯船に浸かる習慣があると思うの。私と同じ場所からの転生者かどうか、それで判断出来るかもしれないわ」


 たしかクレアの前世では、お風呂に入るのが普通だったんだよね。エクトルも普通に受け入れていたら、クレアとエクトルは転生者、しかも前世では同じ国の出身だったって可能性が高くなるってクレアは言う。世界はたくさんあるかもしれないし、絶対ではないけどって。でもそうなると……。


「それって、もしエクトルが転生者なら、私たちも転生者だって判断をされちゃわないかな?」

「あ……」


 エクトルの方も、私たちを怪しむキッカケになるんじゃないかなって思うんだよね。だって、エクトルは気付いてないよね? そう言うとクレアはうーんと腕を組んだ。でもお風呂には入りたいし、とぶつぶつ呟いている。


「何か聞かれたらうちの村ではみんな入ってるからこれが普通だと思った、ってことにしましょ」

「ま、間違いではないけど……広めたのはクレアだよ?」

「彼らはそんなことまで知らないから平気よ!」


 それもそう、かな? リスクよりお風呂を取ったクレアは、やっぱりクレアだな、なんて思った。




「うおっ、めちゃくちゃ綺麗になってる!?」


 二人で夕飯の準備をしていると、玄関の方から驚きの叫び声が聞こえてきた。この声はリニだ。ふふ、お掃除を頑張った甲斐があるな。


「ほんと、すごい……新築みたいだ。ただいま二人とも。これ、君たちが?」


 そう言いながらリビングに入ってきたのはエクトル。マクロも目を丸くしてキョロキョロと家の中を見回している。


「これ、本当に、うち?」


 マクロのこの反応が一番面白かったかもしれない。


「それに、うっまそーな匂いだなー」

「えっ、食事も準備してくれたの!?」


 クンクンと無邪気に笑うリニとは対照的に、申し訳なさそうに慌てるエクトル。性格が出てて思わず吹き出してしまった。


「うん。一緒に食べようと思って。あ、それとも何か予定があったかな……?」


 家にあるものを使って作っちゃったけど、勝手なことしちゃったかなって今更ながらに不安になる。キュッとしっぽの先を自分で握りしめていると、さらに慌てたようにエクトルが否定してきた。


「何も予定なんかないよ! これから支度をするのは大変だろうから、外へ食べに行こうかって誘おうかと思ってたんだ。でも、こんな料理用意していてくれたなんて……すごく嬉しいよ! ありがとう!」


 王子様みたいなキラキラしたその笑顔を見てホッと胸を撫で下ろした。良かった、喜んでもらえて。


「えっと、料理はほとんどクレアが作ってくれたの。私は、その、あんまり料理は得意じゃないから……」


 全く出来ないわけじゃないんだけど、手際よく準備したり、毎回同じ味のものを作れなかったりするんだよね、私。大失敗はしないけど、小さな失敗はよくしちゃうから、料理はいつもクレアがお母さんと作ってた。クレアは独自のレシピを編み出したりと、とにかく料理上手だったから、一人で家族分作る日も多かったんだよね。前世の知識があるだけよ、って言ってたけど、知識はあっても再現出来るとは限らないから、やっぱりクレアがすごいと思う。


「クレアが……」

「むっ、意外だー、とか思ってるんでしょ。大雑把な私より、ミクゥの方が料理上手っぽいものね?」


 ツン、とした様子でクレアがエクトルに文句を言う。もー、エクトルはそんなこと言ってないでしょー!


「まさか。素直にすごいなって思っただけだよ」

「どうだかねー?」


 まったく、クレアったら! 素直にありがとうって言えばいいのに! はぁ、なかなかうまくいかないなぁ。


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