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あと一つの条件


「俺たちは今、中級ギルドだ。で、今ギルド本部の方から上級ギルドに上げないかって言われてるんだよ」

「えっ、すごい……」


 エクトルの語る話に思わず声を漏らす。そもそも、ギルドを中級まで持っていったってところがすごいことだもん。

 ギルドの設立自体は難しくないし、誰でも申請出来るけど……でも大抵は初級止まり。月が一巡りするまでの間に決められた数の依頼をこなして一年経たないと、中級にはなれないんだから。


 簡単そうに聞こえるけど、継続させるのって本当に大変なんだよ? 依頼だってなんでもいいわけじゃない。ちゃんとした筋からの正当な依頼だっていうのはもちろん、その一年での評判や、もっとも功績を挙げた事柄まで考慮して、ようやく中級になれるんだから。あんまり詳しいことは知らないけど……一般的に、人々から信頼されるようになるのが中級以上だから、その壁を越えるのは本当に大変だってことなんだ。だから、ほとんどの人は設立するんじゃなくて、既存のギルドに所属する。その方が確実だし、楽だもん。


 しかも! 今回はそれだけじゃない。それを上級にっていう上からの打診があった、ということは、中級ギルドとしてかなりの実績を残し、それらが認められたってことなんだから。それはもっともーっとすごいことなんだよ!


「けど、そのために必要な条件が一つだけ、達成出来てないんだよ」

「一つだけ?」


 エクトルは頬杖をついて困ったように微笑み、そう言った。他の条件は満たしているんだって。あとはその一つの条件を満たせば、晴れて上級ギルドになるのだそう。


「ほんとはさー、俺ら、別に中級のままでも良かったんだけどな」

「は? 赤頭、一番金遣いが荒いやつが何言ってんの? 上級になるだけで貰える報酬が段違いになる。引き受けないでどうすんの」

「んだよ、守銭奴め」

「うるさい、浪費野郎」


 リニとマクロがまた言い合ってる。つ、つまりギルドのランクが上がれば、その分報酬も上がるってことね? 難易度の高い依頼も増えるってことだろうけど……彼らの実力を考えればそれは問題なさそうだもんね。


「二人とも、その話はもうしたろ? ミクゥちゃんたちも迎えることになったんだから、これからもっとお金は必要にもなるし、ちょうど良かったんだって」

「うっ、私たちのせい……?」


 二人を養う分が増えたってことだもんね。そりゃあ私たちだって働くつもりだけど、どうしたってお金は必要だもん。そう思ってしょぼんとしていたら、エクトルが慌てて否定してきた。


「違う違う! 言ったでしょ? ちょうど良かったって。タイミングが良かったんだよ。つまりね?」


 そう言ってエクトルは説明を再開させた。


「その満たしてない条件っていうのは、人数なんだよ。俺たちは三人しかいないだろ? でも上級に上げるには最低十人はメンバーが必要なんだ」


 どのみちランクアップは考えていたから、二人が入ってくれるのはすごく助かる、とエクトルは微笑んだ。そっか、それなら確かにちょうど良かったのかも。村を助けてもらったお礼にもなるかな? これからの働き次第だとは思うけど。


「じゃあ、あと五人集めなきゃいけないってことよね? 当てはあるの?」


 クレアがお茶をテーブルに並べながら疑問を口にした。あ、そうだよね。私たちだけじゃまだ五人。あと五人は集めなきゃいけないんだ。


「うん、この人たちにお願いしたいなっていうのはあるよ。まだ聞いてないけど」

「大丈夫なのそれ……?」


 ま、まだなんだ……確かに大丈夫かなって不安になる。すると、そんな私たちを見てリニがお気に入りのソファで足を組んで笑いながら口を挟んできた。


「だーいじょうぶだって! 絶対、首を縦に振らせてやっから!」

「物理!?」

「リニ……言い方……」


 その言葉にザッと後退りして引くクレアに、額に手を当てながら呟くエクトル。リニって、本当になんていうか……色々と大雑把だよね。妙に説得力があるのがすごくもあるけど。


「それぞれ弱みを握ってるから」

「マクロ、それフォローになってないから」


 マクロが一番怖かった! 弱みって何っ!? もう、この二人は考え方がめちゃくちゃだよぉ!


「あー、こいつらの言うことは間に受けなくていいからね? ひとまず、誰を誘うつもりなのかはミクゥちゃんやクレアにも教えておくからさ」


 コホン、と咳払いをしてエクトルが仕切り直した。う、うん。まずはそこから聞いておかないとね。方法は後回しにしておこう。クレアが訝しげに見てるけど、エクトルは気にせず話を進めた。


「基本的に残りのメンバーにはこの街から出ずに、うちのギルドに所属してもらう、って形にするつもりなんだ。それぞれのやりたいことや商売もあるだろうし、それは継続してもらおうと思ってる」

「え? それでいいの?」

「もちろん。俺たちが困った時に力を貸してもらえたらって思ってるんだ。いつもはそこで支払う料金が、依頼遂行した時の報酬に変わるってだけ。上級になれば貰える料金も増えるだろうから、悪い話じゃないと思うんだよね」


 でも、それだけで生活は成り立たないから、自分の商売も続けて構わないということだそうだ。一見すれば兼業になって大変そうではあるんだけど、それなら無理もなさそうだね。エクトルは続けた。


「これから誘うメンバーってのが、実は今もすでに色々と世話になってる人たちなんだよ。だから、やることは変わらないっていうか」


 口ぶりからいって、古くからの付き合いっぽいよね。それなら大丈夫なのかな? その話を聞いて、クレアがつまりこういうこと? と確認をとる。


「手を貸すことに強制力が働く代わりに、その分渡せる金額は増える、ってことね?」

「まぁ、そういうこと」


 なるほどー。色々と考えられてるんだなぁ。それなら一考の余地はあるかも。


「でもオレらってさ、無茶振りばっかりしてたから、絶対手を貸さなきゃいけないって辺りで渋られそうだよなー」


 納得しかけていたのに、あははと笑うリニの言葉に不安になったよ!? ほ、本当に大丈夫なんだよね? その人たちと、仲良くなれるといいんだけど。


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