雨
ミュージカル映画のシナリオです。
余命宣告を受けていたある少女が病床で綴った小説にインスピレーションを受けて書きました。
残念ながら、彼女は天国へと旅立ってしまいました。
この物語を、病気と闘い短い生涯を終えた彼女に捧げます。
登場人物
平尾心音 ここね 和菓子屋の事務員
平尾舞 心音の姉
川島智弘 シンガーソングライター 舞の元彼
リカコ 心音の友人
由美子 心音の叔母
和菓子屋のパートのおばちゃん
藤井 音楽プロデューサー
東山 映画プロデューサー
男 心音の高校の先生
女 ライブの司会者
男 バーテンダー
女 ラジオ・パーソナリティー
男 医者
和菓子屋の従業員の皆さん
商店街の皆さん
修学旅行の生徒の皆さん
外国人観光客の皆さん
舞妓さん
ネコ
〇 清水寺から見た京都市内全景 早朝
朝日が当たって光っている
〇 清水寺仁王門前 早朝
心音 爽やかな風を受けて笑顔で立っている
音楽 始まる
心音 石段を駆け下りる
〇 清水寺参道 早朝
無人
開店前の土産物店が並んでいる
心音 歌いだす
朝が来た 新しい日が始まる みんな起きて 今日は運命の日・・・の様なイメージの曲
心音 軽やかに歌いながら歩く
〇 産寧坂 早朝
無人
心音 軽やかに歌いながら降りて行く
〇 二年坂 早朝
無人
心音 軽やかに歌いながら歩降りて行く
〇 円山公園 早朝
無人
心音 軽やかに歌いながら歩く
〇 祇園石段下 早朝
無人
心音 軽やかに歌いながら歩く
〇 先斗町通り 早朝
無人
狭い路地に飲食店が並んでいる
心音 軽やかに歌いながら歩く
〇 横断歩道
歌が終わって車が走る音などの騒音となる
雨が降り出している
心音 信号待ち 傘をささずにA4サイズの茶封筒を濡れない様にお腹に抑えて足踏みし
ている
心音 「もー! なんで!? なんで急に雨降ってくんの! そやし京都嫌い! もー!
最悪!」
何台もの車が水しぶきを上げて彼女の前を通り過ぎて行く
傘が差しだされる
久美子 雨が止んだのかとふと空を見上げる
傘を持った手
ビニール傘
心音 びっくりして振り向く
智弘 傘をさしてうっすらと笑みを浮かべる
智弘 「風邪ひきますよ」
心音 きょとんとした顔をしてうつむく
智弘 「大丈夫ですか?」
智弘 心音の顔を不思議そうに覗き込む
心音 顔を反らす
心音 「えっ!? だ 大丈夫です・・・ あ ありがとうございます」
智弘 「えっ?」
心音 「傘 傘入れてくれて・・・」
青信号 心音 走ろうとする
智弘 「あーあ 入って行ったら!?」
心音 振り返る
心音 「あ ありがとうございます これ濡れたらヤバいんで・・・ お お願いします」
心音 茶封筒を見る
智弘 「それ大事なもの?」
〇 向かい側
雨は激しさを増している
心音 「あ ありがとうございました! そ そでは 失礼します!」
心音 お辞儀をして足早に行こうとする
智弘 「あっ! ちょっと それ濡れたらヤバいんでしょ!」
心音 振り返って
心音 「えっ?」
智弘 「ちょっと 時間ある?」
心音 「えっ? 無いけど・・・」
〇 コンビニ店内
2人 入って来る
智弘も同じ様な封筒を持っている
傘 売り切れ
智弘 「なんだ 売り切れか・・・」
心音 「いいです 行くとこ すぐそこですから・・・」
智弘 「でも それ 濡れたらヤバいんでしょ? あーあ 濡れちゃってるよ」
智弘 茶封筒を奪い取ってハンカチで拭く
心音 「・・・」
智弘 自分の傘を差しだす
心音 「えっ?」
智弘 「これ 持って行って下さい」
心音 「でも あなたが・・・」
智弘 「僕? 僕の家すぐそこなんです いいから持って行って下さい」
智弘 無理やりに久美子に傘を渡す
心音 「あ ありがとうございます・・・」
智弘 ほほ笑む
心音 「ありがとう・・・ 私! 急ぐので じゃあ!」
智弘 「あっ! これ!」
智弘 封筒を渡す
心音 「あっ! あ ありがとうございます!」
心音 お辞儀をしてコンビニを飛び出る
〇 道路 雨
音楽 始まる
心音 歌いだす 運命をイメージした曲
心音 傘をさして軽やかに歩きながら歌う
〇 とあるビルの前
音楽 終わる
心音 小走りでやって来る
〇 テナントビルのロビー
心音 座っている
東山(業界風)来る
心音 立ってお辞儀する
東山 「平尾心音さんでしたね」
心音 「はい!」
東山 「どうぞ」
心音 「ありがとうございます」
2人 座る
東山 「プロデューサーの東山と申します」
東山 名刺を差し出す
心音 受け取って
心音 「ありがとうございます!」
東山 「動画は拝見しました」
心音 「ありがとうございます!」
東山 「あの曲はあなたがお作りになったんですか?」
心音 「い いいえ・・・ あの曲は・・・」
〇 窓の外
雨 色とりどりの傘を持った人が通り過ぎて行く
〇 ロビー 時間経過
東山 「で 楽譜 持って来て下さいました?」
心音 「あっ はい!」
心音 封筒を取り出す
心音 「雨でちょっと濡れていますが・・・」
東山 「そう・・・」
東山 立って
東山 「では また ご連絡します・・・」
心音 立って
心音 「ありがとうございます! 宜しくお願いします!」
心音 深々とお辞儀する
〇 道路 雨上がり 夕方
心音 ショーウインドウを眺めながら歩いている
音楽が始まり 心音 歌う 希望をイメージした曲
歩いているサラリーマン 踊り出す
〇 道路 夕方
音楽が終わる
スマホが鳴る
心音 「はい 平尾です あっ! 先ほどはありがとうございました・・・ えっ?
楽譜ですか? メ! メニュー? ですか? そ そんなはずは・・・
すみません・・・ はい はい・・・ も 申し訳ございません・・・
誠に申し訳ございません・・・ でした」
心音 深々とお辞儀をする
心音 「何で 居酒屋のメニューに入れ替わったんやろ・・・どこで・・・
アンビリバボー!」
心音 突然 思い出した様に大きな声で
心音 「あっ!」
横を歩いていたサラリーマン驚いて転ぶ
心音 「あの時・・・」
サラリーマン 立つ
心音 「あっ! あいつや!」
サラリーマン また転ぶ