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 後は依頼の詳細を詰めて終わりといった所。

 おおよそはヒュアが先程言った条件で呑む事になったが、一つだけ新たに条項を盛り混ませた。

 それは俺の都合で何時でも辞めれる事だ。

 当然、ヒュアはこれに対して難色を示した。

 何時でもと言う事は無理に解釈すると、戦闘中でも構わないという意味にも捉えられるからだ。

 そうでなくとも、護衛官は普通、主人の許可が無くては辞める事は叶わない。

 これを認めてしまえば他の護衛官も、と誘発しかねないのだ。

 結果、事前にクリスティナへと申告する事を条件に何時でも辞めれるという妥協案を取ったのは仕方ない事だったのだろう。


 因みにクリスティナ本人の意思を無視しているのではと思われるかもしれないが、彼女がヒュアに任せると言った為、この案が通ったのである。

 ディクソンは憤慨していたが。


 後、もう一つこの件に追加された事がある。


「あ、この屋敷、僕が王都に戻る時以外は君の好きにしていいから。と言うかしばらく戻らないから貸してあげる。グーデン、頼むね」

「は?」

「承知致しました」


 おっさんは近々、外交の為に引っ越すと言うのは聞いていたが、正直それも嘘だと思っていた。

 しかし、それは真実だったようで、しばらく屋敷を空けるから代わりに主人として振舞って欲しいとの事。

 新人も何人か来る為、その教育と言う意味でも誰か代役が欲しかったのだとか。

 つまり、簡潔に言うと、王都のデカイ屋敷と完璧な執事グーデンさんが報酬に追加された。


 ……なんつーか、屋敷をポンっと他人に渡せる所が、大貴族だったんだなって改めて実感する。


 まぁ、なんやかんやありつつも、俺が了承の返事をした事で、ようやくヒュアは肩の荷が下りたのか、書斎の空気が弛緩していく。

 おっさんも纏まった様子を見て、椅子に体重を掛け、ヒュアの表情にも笑みが浮かぶ。

 少々、気を抜き過ぎではと思うが、この十日間程、策が上手くいかなかった時の心配や断られるのではといった不安に晒されていたと思うとこれも仕方ないのだろう。

 ヒュアの緊張はハンティやフットにも伝わっていたようで、彼らもほっと息を吐いている。


 そんなに俺が受けた事が嬉しいのかねぇ?

 面と向かって褒められた経験が少ないからか、こうもほっとされるとむず痒い。


「聞いておきたいんだがよ」


 居心地の悪さを振り払う為、話題を変えるべく、ヒュアに疑問をぶつける。


「期間は未定っていうが、ある程度の目星はあるんだろうな?」


 本気で気になっている訳ではないが、何時までと期限がある方がやる気の持続的にも好ましい。

 ……何時もやる気無い奴が名に言ってるんだというツッコミは無しの方向で。


「そうね……お父様?」

「正直に言って期間は本当に分からない」


 ヒュアも期限について明確に分かっていなかったのか、おっさんに話を振るも、当の彼も把握していないらしい。

 しかし、おっさんはただ、と続ける。


「無理に言えば黒幕を上げるまで、かな?」

「黒幕っつーと過激派の指導者か?」


 確か、クリスティナの命を狙っているのは過激派だ。

 過激派自体、派閥規模は小さいらしいし、頭を押さえてしまえば、後は有象無象の小物ばかりなんじゃないか?


「う~ん、そうとも言うし、違うとも言える」

「どういうことだ?」

「過激派自体、保守派だから指導者は国王陛下と言えるんだけど、あえて過激派として指導者を挙げるならロクレイン卿なのよ」


 そいつは確か、率先してヒュアに嫌味を言っていた奴か。

 ん?おかしくないか?


「ロクレイン?つーとお前が小物扱いしてた奴じゃねぇか?さっさと捕まえちまえよ」

「それがそうもいかないのよ」


 そうもいかない、とは?

 ロクレインっておっさんより爵位は低いし、そもそも同じ貴族間なら罪に問われる可能性低いんだからさっさと報告しちまえば良いのに。

 

「ロクレイン卿は確かに過激派一派でそれなりの発言権を持つけど、彼は所詮、操り人形さ。黒幕は別にいる」

「黒幕ねぇ?」

「ハーマイン卿って名前覚えているかしら?」


 そいつもヒュアの説明で出てきたな。


「お前が苦手にしている相手だったな」

「彼がその黒幕よ」

「どっちにしろ分かってんなら捕まえれるんじゃねぇの?」

「無理よ。分かっているとは言え、あくまで憶測の域を出ないわ。ロクレインから辿っても蜥蜴の尻尾きり同然に切り捨てられて終わり。彼ほど狡猾な貴族を私は知らないわ」

「僕でも手強いねぇ」


 おっさんを以ってしても手強いと言わしめるほどの相手か…厄介だな。

 まぁ、結局一護衛官でしかない俺には何も出来ない訳だ。

 おっさんやヒュアの健闘を祈るしかない。

 ……そもそもハーマインの目的って何なんだろうな。


「な、何はともあれ良かったですね、クリスティナ様」


 雰囲気が若干落ち込んだのを感じたのだろう。

 ディクソンはぱんっと手を叩き、話題を変える。

 相手がどうであれ、一応、信頼――少なくとも過激派や改革派が用意する護衛官より――出来る護衛官が決まったのだ。

 今は喜んでもいいと判断したディクソンはクリスティナに同意を求める。


「うん、これからよろしくクラーク…君?」

「クラークで構わん」

「そう、じゃあクラーク、よろしくね」

「あぁ」


 もう既に俺が敬語を使う事を諦めたのだろう。

 クリスティナもディクソンも反応してくれない……ちょっと寂しい。


「あのさ、別にヒュアを疑うわけじゃないんだけど…」

「何かしら?」


 そういってクリスティナはヒュアに向き直り、弁解した後、ヒュアの反応を窺いながら質問をする。


「クラークって本当に凄いの?」

「えっ?」


 なるほど、そう来たか。


「私、一応試験に同行したけれど、寝て起きたら終わってたのよね」


 まだ、五日ほど前にも関わらず、試験が遠い昔のように感じてしまう。

 確かにクリスティナは盗賊…役の兵士に眠らされ捕まっていた。

 彼女が起きた頃には馬車に乗せられる手前、つまり俺がおっぱいとか触っている所だった。

 結局、ビンタされ有耶無耶になり、事の詳細を話してなかったのである。

 クリスティナは俺が戦う所を見てないのだ。


 それとディクソンが傍に居た事も疑問を覚える要因だったのだろう。

 クリスティナはディクソンが盗賊役をすると知っていたはずだ。

 それなのに目が覚めてみればディクソンは他の連中と伸されている訳じゃなく、変わらぬ姿で御者をしていた。

 居なくなる筈のディクソンが居るのだから、混乱するのも無理は無い。

 俺がディクソンに変わらない態度で居ろと言ったのもクリスティナの疑問を加速させたに違いないだろう。


 ……あの時はヒュアに文句言われるのが面倒で仕方なかったんだよ。


「この人が優秀な実感が無いの。一応ディクソンが判断してくれたし、この騎士の目を疑ったりもしてないんだけど…」


 勿論、エリュの目も疑ってないよ、と彼女の方を見て補足するクリスティナに当のエリュも分かっているとばかりに頷く。

 当然だが。クリスティナはエリュと同行していた俺を見ていない。

 詰まる所、俺の行動を全て見逃しているのだ。


 ……というか存在感が無さ過ぎてエリュの事忘れかけてたわ。

 グーデンさんに弟子入りしたら第二のグーデンさんになり得る可能性を秘めているのでは無かろうか?

 護衛官形無しである。


「今は理解できないでしょうね…」


 少し、俺がエリュに対して意識を向けているとヒュアが返答した後だった。

 

「私、また目の前で誰かが傷つくの、見たくないよ……」


 ヒュアの解答では理解し得なかったのか、クリスティナは顔を伏せてぎゅっと拳を握る。

 ヒュアの話ではクリスティナの前護衛官は彼女の前でやられたのだとか。

 その時のことを思い出しているのだろう。

 髪の隙間から見えるクリスティナの顔は少し青白く、拳は力を込めすぎて白くなっている。

 きっと無力な自分が、護られて見ているだけだった自分が悔しかったのだろう。


「大丈夫、今回はそんな事にはならないから。どうしても心配ならそうね……、アギュレス卿に私の護衛期間中の記録を見せて貰いなさい」


 ヒュアはそんなクリスティナの手を包み込み、解きほぐしながら絶対の自信を持って答えた。

 ついでにその不安の解消できる情報を握っている相手を教える。


 ……良い所悪いんだけど、俺の前でそんな自信満々に信頼を寄せている宣言しないで貰える?

 何て言うか、小っ恥ずかしくて背筋がぞわってするんだわ……。

 マジ勘弁。

 

「うぅ~……」

「大丈夫です、私がこの目でしかと彼の実力を見ましたから!!」


 ディクソン、空気読めよ。

 そういう事が聞きたいわけじゃないと思う。

 しかし、ディクソンの励まし(?)に多少の元気を貰ったのだろう。


「私にはちょっと…いや、すんごくえっちな護衛官にしか見えないけどね」


 そういって冗談を言える位には回復していた。

 ……冗談だよな?

 あ、冗談じゃない?

 謝るからもう許して下さい。

 

 ぺろっと舌を出し、お茶目に片目を閉じ、こちらを見るクリスティナ。

 まぁ、ちょっとは顔色良くなったかな?


「そろそろ、貴方は帰ったほうが良いんじゃないかしら?」


 ヒュアもクリスティナの雰囲気がマシになったと感じ取ったのだろう。

 傍に居なきゃという思いよりも、帰さなきゃという考えが勝った為か、帰宅を促す。

 確かに外はもう真っ暗で、人通りが少ないからか昼に比べて治安も悪い。

 ディクソンが居れば大丈夫だと思うが、親御さん…というか親馬鹿の国王が心配するに決まってる。

 国挙げての捜索となれば一大事にも程がある。

 そうならない為にもさっさと帰った方がいいだろう。


「そうだね…、ディクソン、エリュ。帰る準備をお願い」

「「承知いたしました」」


 元々荷物も少なかった為、帰ると決まれば後は早かった。

 ディクソンは馬車の用意をし、エリュはクリスティナに外套を掛ける。

 俺らは見送りの為に書斎から玄関まで下りる。


「クラーク、じゃあ新学期が始まったら城に迎えに来てね。時間は朝早いからまた寝坊しちゃダメだよ?」


 外に出る準備を整えたクリスティナは出て行く間際、こちらを振り返りそんな事を言う。


 それは確約できんな。

 そう答えるとクリスティナは苦笑し、頑張ってと言葉を残す。


「じゃあヒュア、またね」

「えぇ、たまにクラークを見に来るからその時にでも会いに行くわ」

「やった」


 それからクリスティナはおっさんやフット、ハンティにも挨拶をし、馬車に乗り込んで帰っていった。

 外に出て、彼女の馬車の姿が見えなくなるまで見送った後、急に静けさを感じる。


「何か、やかましい奴だったな…」

「そのやかましい相手にこれから毎日会うのよ?」


 良くも悪くもクリスティナは周りに感情を伝染させるようだ。

 思った以上に彼女がいなくなった瞬間の物足りなさが凄まじい。


「まぁ、頑張るさ」

「えぇ、頑張って頂戴」


 夜風に当たりながら俺は、少しぐらいなら気に掛けてもいいかなと思い始めたのである。


「う~ん、今日は色々あって疲れたねぇ…。夜風に当たるのも良いけれど僕はもう眠いよ」

「寝室の用意は出来ております」


 おっさんが大きな欠伸と共にそういうと最上級の執事であるグーデンさんはそう返す。

 もう、いつの間にとは驚かない。

 グーデンさんだからと納得しておいた方が、色々と楽である。


「そうかい?じゃあ、少し書類を纏めたらもう寝るとするよ。フット、ハンティ、書斎に来てくれ」

「すまん、ツァーレフ様」

「ん?」

「俺はこいつに用があるんで後で行くわ」

「あん?」


 そういってフットは俺を指差す。

 こいつがおっさんの命令を無視するなんぞ珍しい。

 それだけ重要なことなんだろうか?


「そうかい?じゃあ、ハンティ、先に行こうか」

「えぇ~、あたしも気になるのに……」

「ツァーレフ様から許可は貰った。行くぞ、クラーク」

「私は明日、朝一で帰るからもう寝るわ」

「あいよ」


 ハンティは何か知っているのだろうか、名残惜しそうにおっさんの後を付いて二階へと上がって行き、ヒュアも自室に戻っていく。

 そうして俺は神妙な顔つきのフットを追いかけ、外に出るのだった。

ご心配お掛けしました、私は元気でおます

書いていなかった理由は眼精疲労による頭痛、めまい、吐き気ですた

元々、病気になりやすいのでもう大丈夫とは言いませんが、まぁ何とかなるでしょう


物語が会話シーンだらけで地の文に苦労してますん

クラークの心情ばかりでもいけないし、描写だけでもいけないし、難しい

まぁ、次回は少し、たるんだ内容にはならないと思いますん


では次回もよろしゅうに


あ、もしコンテストの審査員の方が後書きまで読んでいるのなら、感想サービスで書いて頂ける指摘は厳しめでお願いします

後、その指摘部分をどうすれば、改善出来るかをご教授下さい。


……別に何時も読んでくれてる方が、指摘してくれてもいいのよ?


では今度こそ、次回もよろしやす


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