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◇前回の前書きに書き忘れたのですが
前々回の回想にて、ヒュアの心情を( )で表現したと思うのですが
ヒュアはその部分をクラークに話していません
あった事ををそのまんま伝えたに過ぎないのです
本音はさらけ出さない
乙女だからしょうがないね!!
「……ごほんっ、で?一応聞くけれど、言い訳は?」
ヒュアはクリスティナに乱された服装を正しながらジト目で俺らを見下げる。
因みに俺とおっさん、ハンティとフット、クリスティナは床に正座させられているのでヒュアを見上げる形だ。
絨毯が敷かれている為、痛くはないし、グーデンさんが毎日掃除している為、汚くは無いのだが……。
……アストノア家現当主のおっさんや王女殿下のクリスティナを床に座らせるのはどうなんだ?
まぁ、二人とも怒られてにへらっとだらしない笑みを浮かべているので問題ないと納得しておこうか。
ディクソンはおろおろしているがな。
後、そこで「何で俺も……」と呟いているフット、連帯責任だ、諦めろ。
「いや~、つい嬉しくて?」
「いや~、娘の成長が見たくて?」
「いや~、面白そうだったから?」
「いや~、エロスがそこにあったから?」
「いや…、俺は……」
「お父様とクラークとハンティは有罪!罰は後ほど言い渡します!!」
くっ、何故フットが許されて俺はダメなんだ!
不公平ではなかろうか?
フットを見ると膝についた汚れを落としながら立ち上がり、やれやれと安堵の息を漏らしていた。
う~ん、イマイチ面白くない……。
よし、決めた。
俺と同じ様にこれで終わりかと残念がるハンティに目で合図を送る。
すると、ハンティも俺の言わんとする事が分かったのか、ニタァっといやらしい笑みを浮かべた。
後はあいつの言葉に乗ってやるだけだ。
「ヒュアせんせ~、フット君も横目で見ていましたぁ~!」
「ちょっと興奮してたと思いま~す!」
「なぁ!?ハンティ!クラーク!」
「フット、正座!!」
「何でだ!!」
ふっ、お前だけ助かろうなんて甘いんだよ。
フットが睨んでくるが、俺らは素知らぬふりをする。
事実を言っただけだしな。
「おっとヒュア、もうそろそろ話を進めてもいいんじゃない?」
「はぁ~…」
ヒュアは胡乱な目でおっさんを見やり、ため息を吐く。
「話が脱線した原因にはお父様も含まれているのだけれども……。……ま、いいでしょう。話を進めますか」
「あ、ちょっと待ってヒュア。先に済ませたいことがあるの」
漸く、本題に戻ろうかとヒュアが話し始めたが、クリスティナはそれを止める。
そして、彼女は扉の傍で控えているエリュの元に行き、ギュッと抱きしめた。
「エリュ、私の代わりをありがとう」
「……」
「幾ら命に危険は無いとは言え、怖い思いをさせました。ごめんね?足の怪我も今度、いい医者に見せにいきましょ」
耳元でそう呟いた。
今回の試験はクリスティナの護衛枠を争ったものだ。
無論、同時に試験が始まった為にクリスティナ自身が護衛対象役にはなれないのは当然なのだが、それでも無関係のエリュを巻き込んだ事に罪悪感があったのだろう。
この屋敷に来て数分しか経っていないのに、エリュの怪我に気が付いたのが気に病んでいた事を物語っている。
「クリスティナ様、有難う御座います」
クリスティナは王族という立場上、頭を下げられない代わりにもう一度力強く抱きしめ、ありがとうを繰り返した。
俺はそんな光景を目にしながらおっさんに近付き、声を掛ける。
「おっさんの姪、いい主人にめぐり合えたな。これでエリュが主人側になった時、クリスティナを模範とすれば、彼女も尊敬を集められるだろうな」
「そうだねぇ、クリスティナ様みたいに使用人だからと言って下に見ない人物になって欲しいよ。……まぁ、僕の姪じゃないけどね」
うんうん……ん?
今、違和感があったんだけど?
「おっさん、今何て言った?」
「ん?クリスティナ様みたいな人物になって欲しい?」
「いや、その後」
「…?……あぁ、僕の姪じゃないって事かい?」
はぁ!?
いやいやいや、何ともなさ気に言うけどおっさん!
今日で上位三番目に入るぐらいの驚きなんだけど!
「姪では無いってだけで、親戚筋の子なのは確か。それに僕の姪であろうと無かろうと、護衛は付けられないし付かないから結果は一緒だよねぇ」
「んなわざわざくだらない嘘つかなくても…」
「だって、そう言った方が君はやる気出すだろう?言わなかったら依頼さえ受けてくれなかったかも知れないじゃないか」
折角、ヒュアが色々準備したものをおじゃんにして娘に嫌われる趣味は無いよとおっさんは続ける。
確かに俺はすぐ、第二貧民街に戻るつもりだった。
だが、今思えば世話になったおっさんの依頼、おっさんの姪が護衛対象だから受けた所もあったのだろう。
もし、他人の依頼であれば?
もし、他人を守れといわれたら?
受けなかっただろうし、あんなに必死にならなかっただろう。
悔しいが、おっさんの掌で踊っていた事実を認めよう。
「ちぇっ」
「そんなに怒らないでくれよ。今度、いい店紹介するからさ」
「……女がいるところにしてくれ」
「それは無理だ。妻に怒られてしまうからね。その代わりお酒は保証しよう」
「ふんっ」
腹は立たんが自分の知らない自分を他人が知っていると思うと何というか……アレだ、お金払ってくれと言いたくなる気分だ。
……ちょっと違う気がするが、まぁいい。
いいもの見れたしな。
何となくおっさんの横が居心地悪くなり、俺は鼻を鳴らし、そっと離れてソファに座る。
後、馬鹿騎士は何に感激してんのか知らんけど、泣き止め、うるせぇから。
「んっ、ヒュア、もういいよ。話。進めましょ」
「はいはい」
そういってクリスティナとヒュアは隣同士に座り、その後ろに泣き止んだディクソンが侍る。
いや、きりっとした表情見せられても、今更なんだが……。
「えぇっと、どこまで話したかしら?」
「王都でどんな生活をしていたかって事だけだな」
後は言われて無いがクリスティナの護衛の話か。
「もう、言わなくても分かると思うけれどクラーク、貴方にはクリスティナの護衛をして欲しいの」
「ま、そんなとこだわな」
予想するまでも無い事だ。
ヒュアの口から何度も俺の名前、クリスティナ、新たな護衛の言葉が出てたんだ。
それらを連想すりゃなんて事は無い。
まぁ、俺の答えは決まってるが、聞くだけ聞いてやろう。
「まぁ、まず前任者、つまりクリスティナの前の護衛が何を理由にやられたのか聞こうか」
それによってどんな対策をすればいいか、どういう方針で護衛をすればいいか決まるからな。
相手が犯罪組織ならそれ相応の動きが出来るし、他国の間諜ならおっさんの協力があれば色々出来る。
裏なら俺の情報網を使えばいいし、他国ならおっさんの手柄にして交渉を優位に進められるだろう。
というか寧ろその辺であってくれ。
一番面倒なのが――
「色々話さなきゃ行けないけれど、相手は国内の貴族よ」
――だと思ったよ。
犯罪者や他国が相手なら最悪、闇に葬るという手段が取れるが、国内の貴族が相手となれば話が変わってくる。
貴族の罪を裁くには確固たる犯罪の証拠を見つけ、立証し、数名の貴族に署名をして貰って漸く、王の裁きが下る。
簡単に言ってもこれだけの手続きを踏まなければならないのだ。
勿論、現行犯などの例外はあるが、そもそもの話、平民が貴族を疑うこと事態が罪とされる為、もし、貴族の罪を暴こうとするなら密かに素早くやらねばいけない。
もう、この時点で不可能に近いだろうが、もう一つ、平民には難しいことがある。
貴族の連名が必要という部分だ。
平民が貴族に家名を貸してくれと言っても、当然門前払いである。
つまり、家名すら捨てた俺には貴族を捕まえる事が出来ないのだ。
「はぁ…。で?話さなきゃいけない事って何だ?」
「クリスティナの立ち位置からかしら」
「立ち位置?」
ヒュアが言うには今、クリスティナはある派閥の旗頭にされているらしい。
その派閥が改革派。
この国には大きく分けて三つの派閥があるらしく、その一つだとか。
古きモノを一度見直し、新たな風を吹き込ませる事を掲げている改革派。
王を筆頭にした派閥で伝統を守り、安定した国策を持って国を統べる事を主とする保守派。
そして、どちらにも属さない中立派。
大きく分けたものの、その均整は大きく欠いているらしく、割合にすると改革派二割、保守派七割、中立派一割と言った所だとか。
「何でまたそんな位置にいるんだ?」
「最近、噂になってる奴隷開放案って言葉を聞いたこと無いかしら?」
「あぁ、あれか」
確か、どこぞの王女さんが考えて可決されたという……――
「――まさか……」
「そのまさかよ」
あの馬鹿な法案を考え出したのがクリスティナだとは……。
奴隷撤廃案はその名の通り、奴隷という制度を撤廃しましょうという法案だ。
違反者は罰金もしくは禁錮を言い渡されるらしい。
「お前馬鹿だろ……」
「馬鹿じゃないもん……」
「いえ、馬鹿よ」
「ヒュアまで!?」
裏切られたみたいな顔してるが、ヒュアがこの案の危険性に気づかない筈が無い。
それとクリスティナが暴言を吐かれているのにディクソンが動かないのは、主従関係にある自分が言えないからだろう。
家臣なら間違いを進言するもの役目だろうが、馬鹿野郎。
「だってだって!街で見かけたんだもん……」
「何を?」
「……子供達」
つまり何だ、子供の奴隷を見て可哀想だと思ったからこの法案を思いついたと?
たったそれだけで?
何というか……甘いと言えばいいのか。
「餓鬼かよ」
「だって辛そうだったし、子供達、皆暗い顔してたし。それで……」
「同情した、と?」
「うん…」
俺とヒュアに攻められてばつが悪いのか、クリスティナは俯き、小さく頷く。
多分、この様子じゃ何が悪いのか分かってなさそうだな。
「良いか、クリスティナ」
「うん…?」
「確かに奴隷という制度、いや文化は悪と断じても良いかもしれない」
「だよね!!ゆくゆくは貧民街も――」
そこで理解してくれたと嬉しそうな顔をするんじゃない。
「――まぁ、待て。最後まで話を聞いておけ」
俺は奴隷の撤廃が悪いとは言わん。
それどころか、推奨するだろう。
「だがな、撤廃したその影響を考えたことがあるのか?」
「影響?」
俺が奴隷撤廃の話を聞いたのは可決されてすぐだった。
このように国の根幹に関わる法案は普通、可決する前には噂になっている筈だろう。
何せ、直に自分達へと関わる事案なのだから。
しかし、噂になったのは可決された後だった。
「混乱するんだよ、民衆がな」
奴隷達に「はい、今日から奴隷じゃなくなりました」なんて言ってみろ。
「んな馬鹿な」といって一蹴されて終わりだろう。
奴隷商人も「奴隷は今日から禁止です」と聞けば、「はぁ!?」と返すに決まってる。
「それだけじゃない。奴隷を労働力としている職は?犯罪者の奴隷はどうする?開放した後の奴隷の行き場は?親のいない子供の奴隷は?奴隷商人はこれからどう生きていったら良いんだ?」
「……」
「俺はこれぐらいしか思いつかないが、他にも疑問点は出てくるだろう?これによって起きた混乱の責任をお前は取れるのか?」
今、王都は俺が見た限りじゃ混乱していない。
恐らくだが、その改革派やその他の派閥が後始末をしているのだろう。
もしかしたら王が指示したのかもな?
娘の責任を取る形で。
「はぁ~……考えの甘い子供がなまじ権力を持っちまったが故の結果なんだろうな……」
「そうね、民に近い王女は素晴らしいわ。でも、王女という立場が子供の戯言を本当にしてしまうの」
もし、この法案がきちんと時間を掛けて、ゆっくりと国民の理解を解した結果なら俺もヒュアも周りもここまで言わなかっただろう。
急過ぎたのだ、全部が全部。
「……ぅ」
「う?」
クリスティナの方から小さな呻き声が聞こえた。
おい、まさか…。
「うわぁぁぁああん!!ごべんなざぁあい!!」
泣いちゃったよ!
いきなり顔を上げたと思ったら、涙をボロボロとながし、わんわんと子供の様に泣き、謝りだした。
「あ~、はいはい。クリスティナは悪くない悪くない。よしよし、いい子ね」
「うっく、ずずっ、ふぇ……」
ヒュアは隣のクリスティナの頭を抱きかかえ、小さな子供をあやす様に髪を梳く。
姉になったり、母親になったり忙しい。
「何だ、その…悪い……」
このままでは何となく、据わりが悪い為、一応謝っておく。
いや、俺は事実を言っただけで悪くないのだが、女性を泣かせた時点で男が悪いと相場は決まっている。
多分、俺がこの世で一番敵わない相手が泣いた女だ。
勝てる気がしない。
その後、クリスティナが泣き止むまで俺は謝り続けた。
それはもう必死に。
「何でこうなった……」
謝ってばっかりな気がするよ…。
そんな事を思いながら周囲の連中の微妙な視線から逃れるように俺は天井を仰ぎ見るのだった。
はい、今回は物語の主軸に触れやした
何故、護らねばならんのか
物語にのめり込んで下さってる方にとっては無粋な言い方になるでしょうが
所謂、理由付けってやつです
まだ、ヒュアとの話し合いは続きますが、
もし伏線回収し忘れている部分があれば、私に伝わる方法、何でも良いので教えて下さい
修正するんで
勿論、わざと回収していない伏線の指摘には
「ふ、察しのいい子は…」と返すので
「あっ(察し」と思っておいてくだちぃ
……毎回、何か書き忘れてる気がするんだけど、思い出せないの
歳かな?
そんな感じでまた次回もよろん
次の更新も何時になるかはわがりばぜんが




