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 酒に弱いのに酒が好きな人間なら経験があるのではないだろうか。

 酔いがさめた時、隣に知らない女性が寝ていたりだとか。

 いつの間にか知らぬ場所で寝ていたりだとか。

 記憶が無く、自分がした行動なのか分からない時が。


 そんな状況に俺は今いる。


 肌寒さに目を覚ませば、そこは薄暗い洞窟だった。

 天井からぽたぽたと落ちる雫が余計に薄ら寒さを感じさせる。

 目の前には捕らえられている事実を殊更に主張してくる鉄格子。

 立ち上がろうとするも後ろで手首に付けられた手枷が邪魔をするそんな状況。


 記憶を掘り起こせば何があったのかすぐに思い出せた。

 単純に即効性の睡眠薬を盛られたのだろう。

 クリスティナの御者だと油断した結果、こうなったばかりに自分の間抜けさにほとほと呆れが来る。

 誰も信用するなと教えられた事をヒュアとの五年で忘れたらしい。


「はぁ…」

「ちっ」


 自分の愚かさにため息を吐けば、舌打ちという返事が返ってきた。

 声のする方に目線を動かせば、鉄格子の向こうに見張りらしき男が立っている。

 三十代半ばに見えるその男は俺をチラリと見た後、自分の役目を勤勉に果たす為、元の姿勢に戻った。

 欠けた剣を腰に携え、使い古され、所々に穴が開いている皮鎧を身にまとう姿は正しく盗賊。

 少なくとも護衛官という事で危険視されているのだろう。

 周りには俺しか居らず、クリスティナとは別にされているらしい。


「よっと」


 取り合えず、寝ていては体に負担が掛かる為、身体を起こし、座る。

 俺の起きた音に見張りがビクッと肩を震わせたが取り合えず無視をする。


 そんな事より自分の状況を整理するべく、自問自答するとしよう。

 自問自答は疑問点を洗い出すのに最適だ。

 無意識では気が付いていない事もこれをする事で気がつける事がある。

 実際、俺もこれに何度も助けられているのだからその信頼性を疑う余地は無いだろう。


 さて、初めの質問だ、俺は今どこにいる?

 外の手掛かりがここでは全く見えない為何ともいえないが、状況から森の中の洞窟だろう。

 薬といっても俺には大抵の薬に耐性がある事から運ぶ時間もそう掛かっていないはずだ。

 つまり、あの森の手前の木陰からそう遠くない。


 じゃあ次だ。

 俺らを騙したのは?

 言うまでも無い。

 あの御者だ。

 恐らく、クリスティナが王都から出発する時から目をつけていたものだと思われる。

 大方、無用心に他地方に行こうとする貴族の子女を狙った犯行で、あの手際から常習犯の可能性が濃厚だ。


 じゃあこいつらの目的は?

 これは絞れない。

 クリスティナだけを捕まえ、俺を殺したのなら確実にクリスティナを犯す事が目的だ。

 しかし、現に俺は生きている。

 何故だ?

 それに何故クリスティナなのだ?

 貴族よりも商人や村人を狙う方が圧倒的にこいつらの利益になるに違いない。

 商人の方が副産物として商品を得れるし、村人なら数が圧倒的に多い。

 貴族を狙ったとしても旨みがあるのは馬車ぐらいだろう。

 貴族との連絡が取れるのなら脅す手もあるが、所詮森に潜伏している盗賊にそんなコネは無い。

 この疑問は保留としよう。


 じゃあ最後、脱出は可能か?

 これは運も関わってくるが、まぁ何とかなるだろう。

 あわよくば、大男に一発お見舞いしておさらばしたいもんだ。

 クリスティナはついでで良いだろう。


 よし、大体の考えは纏まった。

 取り合えず、この見張りから何とかしなきゃな。


「おっちゃん、おっちゃん」

「…」


 呼びかけてみるも反応無し、か。

 まぁ、交流(コミュニケーション)を取らねば話にならねぇから話しかけ続けるしかないんだがな。


「おっちゃんって呼び方が不味かったか?うっす、兄貴!」

「…」


 ほぉ~。


 兄貴という呼び方に少し反応を示した。

 つまり、普段はそう呼ばれているみたいだ。


 だが、それならおかしくないか?

 こんな見張りなど下っ端の仕事だ。

 兄貴と呼ばれるほどの奴がやる仕事じゃない。

 勿論、兄貴という渾名なだけかも知れないが、取り合えずそこを突いてみれば何かしらの反応が返ってくるだろう。


「兄貴はさ、この盗賊業界何年目よ?」

「…」

「いやぁ~、俺護衛官になって五年経ってんだよねぇ~」

「…」

「ある種、新米から脱却した中堅ぐらいなんだよ。なのにさ…」


 さて、どんな答えが返ってくるか?

 無反応なら仕方が無い。

 実力行使で通させて貰う。

 多分、そうなれば騒ぎになってクリスティナを置いていく事になるがな。


「…俺ってば上司から怒られるわ、同僚は出世するわ、挙句の果てには|輩に仕事取られるわで散々な訳よ。なぁ、盗賊は自由なんだろ?どうせこんな苦労も無いんだろうなぁ」

「…って」

「ん?」

「俺だって苦労してんだよ…」


 よし、口を開いた。

 こうなりゃこっちのもんだ。

 後は(タイミング)を図ってこの手錠を外すだけだ。


「へぇ~、どんな?」

「俺は盗賊になって十年以上経ってんだよ。ガキの頃から盗賊一色で生き延びてきた」

「ほぉ~」

「お前ら表の人間にすりゃ、盗賊は自由で縛りの無い人に思えるかもしれないが、盗賊の世界にも上下関係ってもんは存在するんだよ」


 よ~く知ってるさ。


「俺は今の頭に数年一緒に盗賊してる。信頼もされてた。なのに…」


 さて、そろそろ自分の世界に入ってくれたことだろう。

 相手さんが気付かない内に俺も行動を開始する。

 俺の手首に付いている手枷は感覚から木製だろう。


 木製の手枷は十年ほど前までは一般的に使用され、国の警備兵もよく使用していた物だが、後に鉄製の物が出来始めるとそれに移行し、それからは一切見なくなった。

 なぜそんなに早く移行したかと言えば、木製の手枷には弱点があったからだ。


 長方形の木板に手首ほどの穴を開け、それを長い辺に沿って平行に真っ二つに切る。

 そうすれば、半円が二つ付いた木板が二つ出来る。

 それを元の形に並べ、短い辺の方に金具を二つ取り付けば、手枷の完成なのだが、この金属部品の所に問題があった。

 金属部分に向かって垂直に力を込めると、付加に耐え切れず、金属部分が取れてしまう難点があるのだ。

 つまり、石などに金属部分をぶつけると外れるのだ。


 キンと小さな音が鳴り、手枷が外れる。

 木製なのが功を奏した。

 もし、金属の手枷なら俺の袖の中に隠してある金属製のやすりでゴリゴリ削るしかなかったから、時間が掛かったし音も小さく出来なかっただろう。

 声にかき消されるほどの音だった為、自分に酔っている見張りには気づかれなかったようだ。


「…最近、新しい奴が入ってきてそいつが有能だったんだ。こんな鉄格子も付いている洞窟を見つけて来るし、誰も負傷者を出さずに獲物を捕まえてくる。俺は功を焦った結果、失敗続き…。御頭には見張りからやり直して来いと言われる始末だ。…今頃、あの女を皆で楽しんでるんだろうなぁ。交代してくれるかね?」

「残念、見張りが交代になっても合流出来んよ」


 鉄格子の隙間から手を伸ばし、盗賊の首を締め上げる。


「がっ!?」


 皮肉な事に鉄格子が邪魔をして暴れても俺に当たらない。

 次第に見張りは力無く四肢を投げ出していく。

 勿論、殺してはいない。

 口から泡を出し、気絶している程度だ。

 殺さない理由は単純、絞殺すれば糞尿がダダ漏れになるから汚い。

 ただそれだけ。


 腰から鍵を盗み牢屋の外に出る。


「さて、さっさとお暇するか」


 俺は出口に探しに洞窟内を歩き出した。

クラークって心底、護衛官向いてないなって思う

命を擲ってでも護衛対象を護り、戦闘(危険)を出来るだけ最小限に抑える護衛官に対し

クラークは自分の命が危ないなら他人なんてどうでもいいや

だけど命のやり取り(危険)に身を置きたい


真逆やん


明日は投稿できるかわかんない

書き溜めは少し残っているけれど

明日、殆ど家にいないんで・・・

更新できても23時、0時以降になるかな?

朝起きて更新されてたらラッキー程度に思っていてください


明後日はいつも通りで

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