カル
しばらく時間が経った頃、アームコーンが声をかけて来た。
「先輩、お目覚めになりましたか?」
啄木は、自分が不覚にも寝てしまっていたことに気づいた。全くもって寝るつもりなんてなかったのに。
辺りを見回すと、大勢のアーム族に取り囲まれていた。こんなに大勢に見守られながら寝てたのかと思うと、恥かしさがこみ上げてくる。
俺は、どれぐらい寝ていたのかを知りたくて、太陽の位置を確認した。もう間も無く沈むとこだった。ということは、かなりの長い時間、俺は眠っていたことになる。
アームコーンが、まもなく宴が開始されると告げた。この宴は、新入りを歓迎する宴であるから主役は俺らしい。指定の服装に着替えないといけないらしく、彼は俺の腕を引っ張り上げ、ある場所へと向かった。
そんなこんなで、俺はこの世界に来て初めてテントの外に飛び出した。初めて見るアクセシオの世界にワクワクしていたが、思ったほど地球と変わらない印象を受けた。木々もしっかり大地に根付いているし、空を優雅に飛ぶ鳥も、森の中に生息するキツネのような生物もいた。そういう生物を見て、俺はこのアクセシオという星は、それほど地球と変わらない場所なんだな、と改めて実感した。
アームコーンが声を上げて走り出した。
「先輩ついて来て下さい。でかいカルがいます。とても美味いんですよ。族のみんなも喜びますよ」
俺は、何もわからないのでとりあえず頷くしかなかった。
カルと言うのは、地球でいうと牛のような生き者で肉も毛も乳も全て一級品で彼らの生活を支えているらしい。
アームコーンは持っていた槍でカルの急所を突くと、巨体が崩れ落ちて、息絶える。
彼は、生物が息絶えるのを確認すると、カルを置いて、
「テントにカルを捕獲したのを報告してくる。ここで待っていてくれ」といってテントの方に消えていった。
五分後、アームコーンが2人の男を引き連れて戻って来た。そして、これをテントに持っていくようにお願いして、俺のところに戻って来た。
宴で啄木は、王の隣に配置され、盛大に歓迎された。
出された料理はどれも美味だったし、地球で食べる食べ物よりも美味しいと感じた。1人で食べるのに慣れていた彼は、人と食べるのがこんなに楽しいものだったかな、としみじみした。