隣を歩くはムカつく微少女7
燃える村から逃げ出してすでに3日が過ぎている。そろそろ打ち解けていてもおかしくないはずなのに、旅路に響くのは、だいたいが神無の笑い声か腹減ったの文句の声で、俺は相槌程度にしか口を開かなくなっていた。まともに相手にしていると、何が気に入らないのか突然絡んでくるからだ。あー面倒クセェ。さっきなんて、歩きながらモジモジしてるから
「トイレならその辺でしろよ。ここなら危険も少ないぞ」
わざわざ教えてやったのに
「そこは知らぬ顔で脇道にでも入ってくれるべきだよ。天さんってデリカシーとか気遣いとか全くできないんだよね。最低」
あー本当に面倒クセェ。デリカシーがないだとか気遣いできないだとか、何を偉そうに言ってんだ。あの惨状の中、父さんたちにこいつを押し付けられて、理由もわからず連れて逃げ出してきたけど、言い伝えの話や出生の事を俺に説明するだけなら、他の奴でも良かったんじゃないか?どうして特に面倒なこいつなのかが知りたいよ。巫女様だからなのか、俺の役に立つからなのか。はあ、こんなこといくら考えても、答えてくれる相手もいないんだから、考えるだけ無駄だってわかってる。けど、考えずにいられないほど面倒なガキなんだよ、こいつ。結局、我慢出来ずにトイレに行くくせにとりあえず文句を言うんだよ。
「天さん天さん、これあげる。これで探し物も早く見つかるかもしれないね」
得意げに微笑んで、神無が手のひらの中の幸運を呼ぶと言われる白草を差し出してきた。こう言う子供っぽい表情は可愛く見えたりするのに、普段があれだからかすごく残念な気分だ。
「ありがとよ」
白草をポケットに入れて、町を目指して俺と神無はまた歩き出した。町に着く前に何かしら売れるものを手に入れないと、宿にまることもできない。高価な薬草かデカい猪でいいんだが、そうそう都合よく見つかるわけないか。
「そう言えばさっきの所でこれも見つけたよ。咳止めになる薬草でしょ」
「ナンテンじゃないか。あんなところにあったのか。もっと早く言えよ、採りに戻るぞ」
神無のおかげで収入源が見つかった。なのに嬉しくない。素直に喜べないのは何故なんだ。