隣を歩くはムカつく微少女3
「あと2つ必要なもの?」
「天さんが降りてきた時に持っていた物です。右手に光り輝く槍と、左手に闇の様に黒い盾を持っていたんです。申し訳ありません。管理していた我が家の蔵から盗まれてしまいました。テヘッ」
「テヘッって、お前がそんなふざけた奴だとは知らなかった…赤ん坊が槍と盾を持っていたのか?」
「赤ん坊がそんなの持てるわけないですよ。左右の槍と盾に護られるように、静かに舞い降りたってことです」
「俺をバカにしてるのか?それとも落ち着かせようと気を使ってるのか?どちらにしろいらぬお節介だ。真面目に話せ」
「誤魔化してただけです。言いにくいことなのですが、槍と盾を盗んだのは私の姉です」
「あんなに尊敬されてたカグラの人間がどうしてみんなを裏切ったんだよ。俺の知らなかった槍と盾以外に平和な村が襲われる理由なんかないだろ。あの魔法師たちは槍と盾を狙ってきたんじゃないのか。すでに持ち出されてたから村は焼き討ちされたんじゃないのか」
「私が巫女に選ばれた日から明るかった姉さんは無口になってしまったんです。たぶん槍と盾を持ち出したのは悪いやつに盗まれないようにするためだと思います。姉さんはただ救世主である天さんを村から排除したかったんだと思います」
「迷惑な話だ。まず俺は天使なんかじゃない。次にたとえ天使だとしても救世主なんてする気もない。俺を追い出したいならそう言えばいいだけだろ」
「誰にも天さんを追い出すことなんて出来るはずない。姉さんは巫女に選ばれたのが自分じゃなかったから混乱してるだけで悪い人間じゃないんです。きっと今頃は後悔して泣いてます。それよりどうしてなんですか。神様からいただいた世界を救う力があるのに使おうとしないんですか」
「ない。そんな正義感も力も持ってない」
「天さんだけが出来ることなんですよ」
「だから人助けして当たり前と言うのか。俺には自分で決める権利もないのか」
「そんなことは…」
「槍と盾を探すにしても、それは父さんや母さんの仇を討つためで、世界を救うなんて大袈裟な事のためじゃないからな」
「天さん」
初めて知ることばかりで、俺の苛立ちは許容出来ないほどに膨れ上がってしまった。神無に対して八つ当たりしていることも、意地の悪い言い方をしてることも自覚してる。それでも態度を改める気にはなれない。重苦しい空気の中
「父様、母様」
うつむく神無から消え入りそうな小さな声がもれた。