第49話 息抜き
はああ・・・。
私は、最近、日課になった、スマートフォンとのにらめっこの末、何度か目のため息をついた。
あれから・・・、友人の結婚式から2週間ちょっと経ってしまった。
毎日、「今日こそは!」と、思い、悪夢を思い出して、かけれないという行動をしている。
本当に、自分で自分に、嫌気がさす。
はああ・・・。
今日は、休み。
仕事は、なんとかやっているけど、まわりに心配されているのがわかる。
相当、顔色が悪いのだろう。
仕事も、時期的に、忙しくて、週1のワタル珈琲店にも、行けていない。
ひそかに、コウさんがいないかなと思って行きたい気持ちもある。
しかし、コウさんが、そこまでして、会うタイプだろうか?
1週間は、電話とメールがあったが、最近は、一切ない。
すべて無視しているから、当たり前なんだけど・・・。
内容は、『怒ってない。連絡ほしい』という内容を、もう少し丁寧な言葉で、メールと留守電が入っている。
でも、怒っている人が、怒っているというだろうか?
しかも、何かしら話したいなら、まずは、やんわり声をかけて、くいついた後、めったぎりにするのではないだろうか?
しかも、コウさんだ。
あの瞳で、にらまれて、逃げ道ないくらい締め上げてくる可能性がある。
そんな秘めた怖さを感じる。
うーん。
でも・・・。
何も考えず、ただ会いたい・・・。
バカみたいに、こんな気持ちも湧いてくる。
少しは、怒ってなかったとしても、2週間も、無視していたら、怒りに変わっておかしくない。
でも、そんな怒り心頭のコウさんでも、会いたい・・・。
なぜ?
自分でもわからない。
会いたいのか会いたくないのか・・・。
はああ・・・。
何度目かのため息の後、スマートフォンが鳴った。
誰?
「もしもし!」
「ゆう子さん?」
耀輔君だ。
「うん。」
私は、返事する。
「今、大丈夫です?話して?」
「うん。大丈夫だよ。」
久しぶり。耀輔君の明るい声を聴いて、少し心が明るくなる。
「ゆう子さんて、たしか、今日、お仕事休みですよね?」
「うん。」
月、火休みを、以前、話したことを覚えているらしい。
さすが、バリスタ!努力家の耀輔君だ。
「良かったら、一緒に、ランチしませんか?」
そういえば、もう少しで11時になろうとしている。
少し、早いけど、準備してでれば、ちょうど良い時間になりそうだ。
昼間だし。
ランチなら、友人なら、大丈夫だよね?
こんな状態でも、一応、付き合ってると思っている私は、浮気には、入らないかを、考えた。
何を、今更。なんだけどね。
言葉に詰まっていると、耀輔君が、お店の内容をアピールしてくれる。
耀輔君が、一度行きたいと思っているお店で、ミートソースのパスタが人気のカフェらしい。いつか自分のお店をだしたいので、その参考に行きたいらしい。ただ、女性向けのカフェらしく、カップルでしか、男性がいないので、付き合ってほしいと懇願された。
みんな、私のツボを押さえている。
耀輔君のお願いは、本当に、かわいくて、一度、断るんだけど、最後には、OKしてしまう。
今回は、断るつもりがなかったし、たまには、外食もいいかなと思い、OKして、お店で待ち合わせにした。すでに、耀輔君は、お店の前にいるらしい。平日でも混むらしく、先に入って待ってるとのこと。勇気だして、一人で行ったのだが、やはり、入り辛くて、お願いの電話をしたらしい。
想像してみたが、かわいい。
私は、急いで、支度をして、外にでた。
家から、電車ですぐなので、12時前には、余裕で着くはずだ。
「ゆう子さん、大丈夫ですか?」
約束のカフェについて、人気のパスタを食べ終えて、食後のコーヒーを飲んでいる時に、意を決して、耀輔君が、私に尋ねた。
やはり顔色が良くないのだろうか?
おいしいパスタも食べたし、耀輔君と話して、いくぶん元気になっったと思ってたけど・・・。
「うん。大丈夫だよ。」
私は、笑顔で答えた。
「俺と息抜きしませんか?」
「息抜き?」
「俺の息抜き・・・。癒しスポットに、行きましょう!」
何だか、今日は、耀輔君は、強引だなと思う。
でも、弱っているのか、言われるまま、彼の癒しスポットに連れて行ってもらった。
ここから、歩いてすぐのところだ。
魚!魚!さ・か・な。
歌がでてきそうなくらいな魚がいっぱいなところ。
水族館。
耀輔君は、本当に好きみたいで、年間パスで、入場した。
ここは、昔、デートできたところだな・・・と思った。
結構前だけどね。
少し薄暗い。
平日だからか、結構空いている。
私の横で、魚の種類や好きなところを、語っている耀輔君。
嬉しそうな顔が、本当にかわいい。
癒される。
優しい!
私は、自然と笑顔になる。
やっぱり、息抜き!大事だな。
これで・・・
電話できるだろうか?
暗い気持ちが湧き、今は、水族館を楽しまなきゃと思い直し、踏み出すと、私は、そのままバランスを崩した。
薄暗いこともあって、段差になっていることに気づかなかった。
派手にこける!
そう思ったが、意外にも、柔らかいがっしりしたものに、包まれた。
ほのかにせっけんの香りがする。
以前にもかいだ心地よい・・・。
私は、我に返った!
耀輔君に、抱きとめられているのである。
あわてて、体勢を直そうとすると、反対に、耀輔君に、引き寄せられた。
包み込まれる抱擁。
ドキドキが止まらない。
抵抗しようとジタバタしていると、耀輔君が、言う。
「少し、このままで・・・。」
甘い声だった!
私の心臓が高鳴った。
この状況は、友人ではありえないと私の頭の中では、言っている。
でも、私は、弱気になっていた。
自ら、彼の背中をさすって、彼の腰に手を、まわしてしまった。
人が少ないのと、柱のかげで、ちょうど、私たちは、死角になっていた為、少しの間、抱き合った。
どれくらいたっただろう。
実際には、数分。しかし、もっと長い気がした。
しばし、見つめ合った。
私は、魔法にかかってしまったのだろうか。
耀輔君の瞳から、目が離せない。
「ゆう子さん・・・。俺・・・。」
何かを告げようとした耀輔君。
ちょうど、その時、ツアー旅行の団体がやってきた。
少し先のイワシの大群のきれいなショーを見る為に。
私は、我に返って、
「ごめんね。ドジで。受け止めてくれて、ありがとう。」
と、言って、私たちも、イワシの大群を見に行こうと誘った。
耀輔君は、その後も魚の話を始めた。何もなかったかのように・・・。
あれ、何だったのかな?
弱ってる私を慰めてくれたのかな?
ハグ・・・。
耀輔君との抱擁は、ちょっとやばい。
恋愛対象ではないけど、お気に入り。
嬉しくって、受け入れてしまう。
微妙な状態とはいえ、これは、浮気になるよね・・・。
コウさんが、誰かと抱擁!
やだ・・・。
考えたくない。
気をつけなくては。
耀輔君は、癒しのプロ!バリスタ君!
きっとこれも、勉強の一環よ!
ちょっと違うかな・・・とは、思ったけど、私は、そう思い込むことにした。
変なところで、鈍感の私は、耀輔君の気持ちには、一切、気づいていなかった。
読んでくださってありがとうございます。次回の更新は、先になりそうです。あと少し!必ず完結しますので、長い目で、お付き合いくださいませ。よろしくお願いいたします。




