第47話 後悔
私の部屋。
窓の外は、真っ暗。
服装は、披露宴に行った時のドレスのまま。
アップにした髪は、乱れている。
ソファーベットの脇で、うなだれている。
何度も泣いて、目は、うさぎの瞳の色に変わり、まぶたは、腫れている。
バッチリメイクは、すでに、涙で崩れおちている。
何時間たったのであろう?
帰ってきた時間は、覚えていない。
思い出しては、泣き、後悔しては、泣き、苦しくては、泣き・・・。
すでに、喪失しきった私。
何故・・・。
バレたのだろう?
席票も、隠したし、司会の人にも相談して、「友人」紹介にしてもらった。
短大の友人の「短大」を、省いてもらった。
コウさんの席は、主賓席。
コウさん以外、年配の人。
知り合いの人もいたようだったが、新婦の情報を知っているとは、思えない。
芽衣にも、簡単に、コウさんのことを話して、協力してもらった。
「ゆう子にしては、珍しいね。タイミング逃すと言えなくなるか・・・。」と、納得したようで、こころよく協力してくれた。さすが、友人だ。
披露宴中も、短大の話は出なかった。
出席者も、短大の友人は、私と芽衣だけだったしね。
じゃあ、どこで?
やっぱり、ごまかそうとして、焦っていたのが、丸わかりだったのかな・・・。
いや、でも、コウさんも、あの時までは、普通だった・・・。
そう、あの時までは・・・・。
時間は、さかのぼって、披露宴が終わり、会場外。
出口で、新郎新婦と両親御さんに見送られた。芽衣と、一緒にでてきた。
新婦のあかねに、声をかけて、「友人スピーチ最高だった!」と、讃えられた。
すでに、コウさんは、外で、待っていた。
芽衣に、別れの挨拶をして、コウさんに駆け寄った。
「お待たせ。」
コウさんは、私に、気づいて、営業スマイルしながらうなずいた。
やっぱり、吸い込まれそうな癒し笑顔だけど・・・。
ちょっと怖い。
大丈夫だよね?
バレてないよね?
月曜日までは、バレたくない。
許してくれるって、信じたいから・・・。
自分の分の引き出物の紙袋もあるのに、私の分の引き出物の紙袋を、さり気なく持ってくれる。
足早に、歩き出したコウさんについて、小走りについて行く。
ひと気がすぐになくなったので、恋人つなぎに手を絡めとられた。
「幸せそうな二人だったね?」
私は、披露宴でのラブラブな二人の感想を述べた。
「そうだね。僕たちも、早く祝福されたいね。」
エレベーターが、開き、乗り込みながら、言われた。そして、私の腰に手をやり、自分の方に、引き寄せて、耳元で、ささやいた。
「でも、もっとゆうちゃんのこと知りたいから、もう少し恋人同士でいたい気もするね。」
甘い声だった。
たしかに、結婚すると、嫌なことも見えてくるって聞くし、もう少し、甘い時間を重ねながら、コウさんのこと、もっと知りたい気もする。
「たしかに・・・。迷うね。」
つぶやきながら、コウさんを見ると、顔が近かった。
いつもの熱い視線とぶつかった。
二人だけしかいないエレベーター内。
最近、こういう状況がそろうと、自然と、甘い時間に、なってしまう。
コウさんしか見えないっていうか・・・。
そっと目をとじて、近づいてくるコウさんの唇を待った。
何度も注がれる軽いキス。
いつのまにか、引き出物の紙袋を脇に置いて、私の腰に深く手をまわし、片方の手は、頭をなでながら、深いキスがしやすい位置へと手を置いた。
やっぱり、好き。
止まらないキスを、受け入れながら、自分から、コウさんに、更に密着した。
コウさんの手の強さを感じ始めた時、エレベーターが、止まった。
開く瞬間までに、二人、離れた。
ふう・・・。
開いた扉の先には、誰も、居なかった。
良かった・・・。
再度、恋人つなぎをしながら、コウさんの車の置いてある場所まで、向かった。
いつもの黒い高級車。
後ろのトランクに、引き出物の紙袋を、二つ入れ、私たちは、乗車した。
車で10分くらいある、私のアパート近くまで、送ってくれるのだ。
いつもと変わらないコウさん。
甘い時間に、酔っていて、これから告げられるコウさんの言葉は、予期しなかった。
5分くらい、車で、走った。
車内には、コウさんの好きな海外のポップスミュージックが、流れている。
披露宴での演出の話や、二人の幸せそうな姿について、話をしながら、順調に、私のアパートに向かっていた。
コウさんは、話の流れの続きのように、何気なく私に告げた。
「ゆうちゃんの字って、変わってるね。」
?
私は、唐突なことで、意味がわからなかった。
返答できずにいると、コウさんは、続けた。
「ひらがなと漢字。珍しいし、何だかかわいいね。」
運転するコウさん。視線は、前である。
表情も声色も、怒っていない。
でも、それが、逆に、怖い。
どこで、バレた?
何故、自然と話されるの?
林優子。
すべて漢字。
佐藤ゆう子。
ひらがなと漢字。
席票見た?
でも、すぐ取ったから、わかるハズがない。
どんどん青い顔になる私。
頭が、パニックになってきた。
更に、言葉を続けるコウさん。
「僕は、ゆうちゃんのことが、好きだよ。」
う・・。うん。
「でも、お金が、目当てだった?」
冷たい声だった。
さっきの甘い時間も、今までの幸せな時間も、すべて崩れ去る。
私の未来が、闇になる瞬間だった。
しかも、以前見た夢と同じ言葉を言われてしまった。
正夢?!
何故、あの時に、時間を作って、告白しなかったのだろう・・・。
神様がくれた、チャンスだったのに!!!
私は、ひどく動揺した。そのあと、何か言っているコウさんの言葉は、一切、耳に入らなかった。
すべてが、終わったんだ。
話すタイミング。
それを、見誤ってしまった。
どれだけ、謝っても、許してくれるハズがない。
怖い・・・。
これ以上、コウさんから、私を嫌う言葉を聞きたくない。
耐えられない。
こんなに好きな人から、拒絶の言葉を聞く勇気なんて、ない。
血の気がひき、真っ青な顔になっていた私。
赤信号で、車は、止まり、静かになった私を、コウさんは、覗き込もうと視線を向けてきた。
しかし、それと、同時に、叫び、素早く、車から降りて、走り出した。
「ごめんなさい。」
大きな声が、響き、あっけにとられたコウさん。
後ろから、呼ばれている声は、聞こえたけど、一目散に、走った。
ただ、逃げる為に・・・。
読んで下さって、ありがとうございます。モヤモヤ続きます!




