第46話 嘘をごまかすはずが・・・
「ゆう子、誰?」
芽衣が、顔立ちが整った男性の出現で、そのまま固まっている私の腕をつかんで聞いてくる。
しかし、私は、それどころでない。
脳内は、「とにかく、この場を何とかしなくては!」と、どうするか猛スピードで考えている。
コウさんは、私が、今まで見たことのない営業スマイルで、私に代わって、芽衣に答えた。
「初めまして。纐纈です。最近、ユウコさんとお付き合いさせて頂いています。」
この顔しか見たことなかったら、だまされてしまうだろう。優しくて、癒される、虜にされそうな笑顔だった。
しかし、普段のコウさんを知っているので、違う意味で怖い。
どうして、そんな表情作るの!
ちょっと怒れてくる。
コウさんは、後ろから、他の来客者が来るので、ウエルカムボード側にいる私の横に、移動した。
芽衣が、コウさんに、あいさつしようとして、私は、やばいことにきづいた・・・。
「はじめまして。私、た・・・」
短大時代!それは、ダメ!
「こ・・・コウさん。私の友人の大沢芽衣。新婦のあかねと三人仲良し組だったの。」
と、少し声が大きくなりながら、説明した。
芽衣は、けげんそうな顔したが、にっこり微笑んで、コウさんに会釈した。
コウさんも、さっきと同じ営業スマイルで、微笑んでいる。
芽衣は、頬を赤くして、みとれている。
と、とにかく、バレるわけには、いけない。
明後日の月曜日に、すべて話すのだから。
話す前に、バレてしまっては、許してもらえるものも、もらえなくなってしまう。
私は、芽衣に、「先、席ついてて。」と、声をかけて、コウさんを、入り口から遠い、ひと気の少ない場所にあるソファのところまで、誘導した。
いつもなら、瞳で、威圧されるのに、口角をあげて、瞳も優しくて、そのまま吸い込まれそうな表情を作っている。
「コウさん、どうして、ここにいるの?」
すでに、ソファに腰かけたコウさんの横に、私は座り、詰め寄りながら、聞いた。
コウさんは、まわりに人がいないか再度目線を遠くにやったあと、口を開いた。
「父の代わり。」
表情は、いつものコウさんに戻っている。
コウさんは、新郎の岡田浩さんは、以前、コウさんの実家の病院で、働いていたことを教えてくれた。その際、コウさんのお父さんを、尊敬していて、恩師の様に思っているので、結婚式に呼ばれたとのこと。コウさんのお父さんは、患者が急変した為、来れなくなったお父さんの代わりに、出席したらしい。コウさんの先輩でもある。急に決まったので、披露宴からの参加らしい。
「でも、ゆうちゃんが招待されている結婚式と同じなんてね。たしか、友人スピーチが、あるって、言ってたよね。」
いつもの眼光の強さで、話を続けてくる。友人スピーチ=(イコール)友人祝辞である。
「う・・うん。」
短大のね。
どうしよう?
バレている?
先輩でもあるなら、新婦の話も聞いてるのかな?
短大出身とか。年齢とか。
どうしよう?
コウさん、怒ってはいないみたいだけど、探られてる?
明らかに青い顔になった私を見て、コウさんは、優しく声をかけてきた。
「緊張してるの?」
アップにしている髪を、崩れないように、優しくなでながら、私の顔をのぞきこんできた。
頬は一気に、赤くなってしまう。
「だ・・・。大丈夫。」
何とか声を絞って答えた。
そうしたら、コウさんが、「くくっ。」て、笑いだした。
え?
何故?
青かった表情から、急に赤くなって、ドギマギしている私がおもしろかったらしい。
しかし、私は、そんなことはわからず、頭には「?」が、飛びだしている。
コウさんは、笑い終わると、私をみつめた。
熱い視線が、私の心を鷲つかみする。
さっきまでの心配は、すでに、忘れてしまっている。
大好きなコウさんが、大きな柱で、陰になっていることをいいことに、顔が近づいてくる。
唇が、重なる瞬間・・・。
何か、気づいて、位置を変えた。
優しく頬に触れた。
そんなキスだった。
私は、瞳を開けて、コウさんを見た。
「メイク、落ちるといけないから・・・。」
と、頬にしたと、自分の頬を指しながら弁解した。
たしかに・・・。
リップは、しっかり色をつけて、いつも以上に、グロスをしっかり塗っている。
でも・・・。
まだ時間あるし、塗り直せるしな・・・。
私は、物足りなさを感じて、コウさんの首に、手をまわした。
「コウさん、好き・・・。」
自分から、コウさんの唇に深く、口づけた。
結婚式の誓いのキスに、触発されたのだろうか?
ミーハーな女性陣に嫉妬したからだろうか?
ただ・・・
好きな人に、愛を伝えたかったからか・・・・。
よくわからないが、自分から、深いキスを長く続けた。
「すっかりとれてしまったね・・・。」
熱い長いキスのあと、私の唇をみながら、コウさんが、つぶやいた。
すっかり我に返って、自分の積極的な行動に顔が赤くなった。
「だ・・・。大丈夫。まだ、時間あるし・・・。あとで、直すから・・・。」
真っ赤な私を見て、嬉しそうな瞳をコウさんは、向けた。
そして、思い出したように、聞いてきた。
「ゆうちゃん、披露宴のあとって、帰るの?二次会?」
「あ、二次会はないから。終わったら、帰るよ。芽衣も、旦那さん待ってるしね。」
私は、まだ赤い顔のまま答えた。
「じゃあ、家まで送ってくよ。」
「え?でも、コウさん、仕事は・・・?今日は、カフェの方だったかな?」
「あるけど。通り道だから。」
いつもの「乗って帰れ。」という強い視線も、交えてコウさんは、言った。
「ありがとう。」
微笑んで、答えた。
「終わったら、出たところがいいかな。ゆうちゃん、席どこ?」
席票を広げて、コウさんは、私の席を探し出した。
しまった!!!!!
忘れていた。
何をやっている!私!
あわてて、コウさんが見ている席票を、奪い取って、コウさんから見えない位置で、私は、自分の席を確認したフリをした。
コウさんのお父さんの名前は知らなかったけど、纐纈という苗字は珍しかったので、コウさんの場所から、斜め後ろのテーブルと、伝えた。
凄い勢いで、席票を奪い取った私に驚いていたコウさんを、気づかないフリして、すかさず席票を隠し、「披露宴会場をでたところで、待ち合わせ。」と、言い、急いで、立ち去ろうとした。
「ゆうちゃん?」
明らかにおかしい行動に、声をかけられた。
「あ、そろそろメイク直してくるね。」
絶対、おかしい行動してる。
わかっている。
わかっているが、今は、逃げるが勝ちである。
て、そのあと、披露宴会場で、すぐ会うんだけどね。
まずは、名前の載っているものを回収して、あとで、友人祝辞の紹介の仕方を、司会の人に相談しておこう。
これで、乗り切れる!
大丈夫!ゆう子!
負けるな!ゆう子!
一目散に、去ろうとする私の手を、コウさんは、つかんだ。
ビクッとして、思わず、振り返った。
立っている私。
座っているコウさんは、私を上目使いで、見ている。
「まだ時間あるから。そばにいて・・・。」
少し寂しそうな光を、瞳に忍ばせていた。
しかし、逃げたい。
「席票を、返して。」なんて、言われたら、困る。
つかまれている手を、更に強く握られる。
うーん。
観念しないと、ダメかしら?
諦めて、ソファに座り直す。
恋人つなぎに、握りかえて、コウさんの頭が、私の肩に置かれた。
「ゆうちゃんは、どっちの僕が好き?」
はい?
何の話ですか?
訳がわからず、言葉に詰まっていると、コウさんは、続けた。
「披露宴会場入口で、ゆうちゃんのお友達と話した時、僕、いつもと違ったでしょ?」
ああ。
たしかに。
いつもと違う笑顔だった。
癒される優しい笑顔。
でも、あれは、間違いなく営業スマイルでしょ。
バリスタのコウさんだったら、あの笑顔できたっておかしくない。
舞台女優目指してた私より、よっぽど演技力あるのでは?
ちょっと嫉妬してしまう。
コウさんって、凄い!
あの笑顔目当てで、女の子、たくさん寄ってくるよ。
今度は、女の嫉妬をしてしまった。
でも、コウさんは、私だけ、見てくれてるよね・・・?
「営業スマイルでしょ?」
私は、さっきのコウさんの返事をして、更に、続けた。
「バリスタのコウさんだからね。あの笑顔は、完璧だね。」
「でも、バリスタのコウさんも、コウさんだし、いつものコウさんもコウさんだし・・・。どっちが好きと言われても・・・。」
うーん。
「ただ、いつものコウさんを知ってる私から言うと、バリスタのコウさんは、違和感があったかな。普段は、いつものコウさんでいてくれた方がいいかな。」
うまく答えられず。
思うまま答えた私。
しかし、コウさんは、大変嬉しかったらしく、「やっぱり、ゆうちゃんが、好きだ。」と、言って、キスの嵐を吹かせた。
結局、ギリギリまで、私たちはラブラブな世界にいた。あわててメイクを直して、席に着いたのは、新郎新婦が入場する少し前だった。
どうしよう!
友人祝辞の紹介の仕方を、司会の人と打ち合わせてない。
私の祝辞は、お色直しのあとだから、間に合うかな・・・。
コウさんの席票も隠せたし。
うまくごまかせるよね?
まだ甘い世界に酔っている私は、これから起きる悪夢のような出来事に、気づいていなかった。
読んで下さって、ありがとうございます。
更新、遅くなって、ごめんなさい。良い休日を☆




