第44話 告白
ホテルの一室。
45平米くらいの広さ。
天井と壁は、白色。
絨毯は、黒と灰色と白の縞模様。全体的にグレイ調。
足に優しい感触。
入口入って、右側が、浴室や洗面室など水場まわりのものがあり、左側手前に、やや薄めの灰色の2人掛けソファ。目の前には、TVがある。左側には、大きめのダブルベット。壁は、木目調の濃い茶色。そこに、絵画が掛けてある。テレビ側のベット横には、大きめの窓がある。薄い白いカーテンがひいてあるが、おそらくそこからは、飛行機が見えるのであろう。
防音も、しっかりしていて、飛行機の音も聴こえない。
私たちは、荷物を置いて、ウエルカムドリンクを飲むことにした。
お湯の沸いたポットが、TV横の棚に置いてる。コーヒーと緑茶と紅茶があり、マグカップと湯のみが2人分ある。コウさんに、飲むのをきき、私は、準備した。
3分くらい蒸らして、すでに、ソファに座って、TVを見ていたコウさんの元に置く。
ソファの前に小さなテーブルがあったので、実際は、そのテーブルに置いた。
私もコウさんも、緑茶にしたので、湯のみが、2つ、仲良く並んでいる。
私は、意を決してコウさんに、声をかけた。
「コウさん、この前話してた、大事な話を、今、聞いてもらえないですか?」
ソファの横に立っている私を、見上げるコウさん。
意外そうな瞳を向けられた。何か考えているようにも見える。
私は、返事を待つ。
きっと少しの時間なんだろうけど、緊張して、その返事が、とても長く感じた。
「ゆうちゃん、僕をだましてたの?」
冷たい声が、部屋に響く。
「ごめんなさい。」
すでに、コウさんの隣に座って、今までのことを、説明して、頭を下げて謝った。
いつのまにかTVも消して、私とコウさんの声だけが悲しく響く。
怖くて、下げた頭があげれない私。
でも、許してくれるって、言ってたから、大丈夫だよね?
大丈夫って、安心したいから、コウさんの表情を見たいと思い、私は、頭をあげ、彼を見た。
!
今までに見たことのない。
冷たい瞳。
凍り付いた表情。
一瞬目があったが、コウさんが、視線をはずす。
その顔は、怒りもにじんでいるのが、わかった。
あまりにも予想外の表情に、私は、何を言えばいいのか、わからなかった。
ひたすら、謝るべきなのか?
コウさんの返事を待つべきなのか?
彼の今の表情を見たら、何も言えない。
どれくらいたっただろう。
コウさんが、私に言葉を発する。
「お金が、目当てだったの?」
え?
「それとも、僕との恋愛ごっこを、楽しんでたの?」
え?
え?
え?
意味がわからない。
すべて、違う。
でも、責める瞳と口調で、私に迫ってくるコウさんが、怖くて、言葉にできない。
「何も言わないってことは、認めるんだね?」
すでに、蒼白な顔に、涙がにじんでいる私。
そんな私に、怒りからか、責めてくるコウさん。
「違う!」と、叫びたいのに、声がでない。
なんとか、頭を横に振って、「違う!」って、歌えるのが、精一杯だ。
「違うの?でも、ゆうちゃんが、僕に見せていた態度も演技だったんでしょ?楽しかった?思い通り、君に、夢中になってる僕を見て。」
炎のような怒りの瞳を、向けられる。すでに、私の心臓には、矢が射ち込まれているようで、私は、瀕死の状態。もちろん、そういう気持ちだっていうことだ。
ねえ!
コウさん、許してくれるって、言ったよね?
言ったよね?
優子、今日が、チャンスって言ったよね?
もう、遅かったの?
ねえ!
誰か、教えて!
コウさんのこと好きすぎて、本当のこと言えなかった私が、悪かったの?
違うよね?
私、悪くないよね?
悪く・・・。
私の瞳から、涙が、あふれだした。
悪いのは、私。
本当は・・・。
分かっている。
でも、でも、許してほしかった。
大好きなコウさんだから、許してくれるって、信じてた。
コウさん・・・。
「泣いたって、ダメだよ。許さないから。」
怒りがまじった凍てついた声が、発せられた。
私の涙は、更にあふれだして、止まらない。
嗚咽まじりに泣き出す私に、冷たい瞳をおとす。
いつもなでてくれる手は、なく、冷たい空気だけが流れ、私は、狂いだすくらい泣き出した。
「う・・・、う・・・。うわーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
大きな声を出して、目が覚めた。
あたりは、真っ暗。
素肌に、柔らかい生地が当たっている。
うん。
私は、ベットに寝ている。
つまり・・・。
今のは、夢?
リアルすぎるほどの夢・・・。
夢か・・・。
夢とわかって、ホッとしたが、ゆううつな気持ちが残る。
あり得る話である。
途中までは、現実に起きてたから。
ホテルの部屋に入って、大事な話を聞いてほしいといったところまでは、昨日、実際あったこと。
しかし、コウさんは、次回にしてほしいと言った。
「今度会う時に、ゆっくり話そう。」って。
だから、次の月曜日夜に、私のアパートの部屋で、話す約束をした。
今から、アパートの場所を教えておくと、来てくれないと思って、最寄りのコインパーキング場に着いたら、連絡してと、言った。迎えに行くという話をしたのだ。
やはり、そういうのが、ずるいのかな?
現実に、起こりそうで、不安になった。
横をみると、となりで、コウさんが、あおむけで、寝ている。
目も慣れてきて、暗闇でも、コウさんの位置とある程度の表情は、わかった。
ぐっすり寝てるようだった。
そういえば、寝顔、はじめて見た。
前回のお泊りデートの時は、先に寝てしまって、起きたのもあとだったので、コウさんの寝顔を見れなかった。
整った顔立ち。
額にかかている黒髪に隠れている、整った眉。
いつもは眼光が強い瞳も、目をとじていると気にならない。
なんだか、かわいらしい、天使みたいな寝顔だ。
私は、吸い込まれる様に、コウさんに、近づく。
手をのばし、コウさんの整った胸板に、手を置き、肩に顔をうずめた。
コウさんの体温を感じて、幸せな気持ちになった。
もう一度、顔を見たくて、少し、上体を起こして、コウさんの顔をのぞき込む。
まつげが長いことに気づく。
すやすやと寝ている。
なんだか、いたずらしたくなってきた。
どうしようかな?
まずは、頬をなでる。
意外に、つやつや。
そういえば、お風呂あがりに、化粧水塗っていたことを思い出す。
最近、男性も、お肌に気をつけているときくが、コウさんも、そのタイプのようだ。
今度は、いつもコウさんが、やるように、下唇をなぞる。
なんだか、熱い気持ちが湧いてきて、そのまま、唇を落とした。
「コウさん・・・。好きだよ・・・。」
私は、再度、コウさんを見上げて、つぶやいた。
「お金目当てでもないし、演技だってしてないし、楽しんでもいない!ただ・・・本気で好きだから・・・。私自身のままで、コウさんに向き合ってるよ・・・。」
夢の中では言えなかったことを、何故か、今、寝ているコウさんに、伝える。
「ひとつだけ・・・。嘘をついているの。」
コウさんの頭をなでながら、つぶやく。
「ユウコはユウコでも、林優子でないの・・・。」
優しくなでながら、一人つぶやく私。
「許してくれるかな・・・。」
私は、なでる手を止めて、コウさんをのぞき込む。
「愛してる。」
眠るコウさんに、再度口づけた。
少し、長めに、口づけて、離そうとした瞬間、何かが、私の行動を制した。
頭に置かれた手。背中にまわされている手。
コウさんは、すばやく、自分に抱き寄せ、私の体をなでる。
思いがけない行動に、なされるままの私。
熱っぽい瞳が、更に熱を帯びて、大人の時間へと誘いこまれる。
そのまま受け入れようとして、突然思い出した。
「コウさん、さっきの聞いてた?」
大きな声をだして、コウさんから離れようとする私。
引き戻されて、機嫌悪そうな声が返ってきた。
「何が?」
「え・・・。その・・・。」
聞いていたのだろうか?
どっちかわからず、言葉に、詰まっていると・・・。
「おとぎ話みたいに、キスで、お姫様でなくて、男が目覚めたんだよ。」
と、めんどくさそうに言う。
おとぎ話・・・。
つまり、その前のことは、聞いてないのね・・・。
良かった!
安心して、息をはくと、
「僕の悪口言ってたの?」
と、にやりとして、コウさんが、聞いてきた。
「なっ!違う!」
ムキになって、否定する。
凄く意地悪そうな笑みを浮かべて、私の頬にキスを落とし、耳元でささやいた。
「冗談だよ。」
更に、ムキになって怒ろうとした私を、制して、甘い時間へと誘った。
甘く甘く・・・幸せな時間へ・・・。
私は、まだ知らなかった。
今回、コウさんに告白しなかったことを、後悔することを・・・。
その時は、着実に、近づいているのに・・・。
私は、まったく気づいていなかった。
ただ、この甘い時間が、ずっと続くのだと思っていたのだった。
読んでくださって、ありがとうございます。甘い時間は、ずっと続いてほしいですね。ゆう子、頑張れ!




