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第42話 帰ってきた恋人

私は、固まっていた。


空港の、到着ロビーで、待っていた。

久しぶりに会うコウさんに、大きく手を振った。

そして、コウさんの疲れた顔が、嬉しそうな笑みを浮かべて、早足で、近づいてきた。

「おかえりなさい。」

嬉しくなてって、自然と涙目になった私。

でも、満面の笑みは、しっかり作って、コウさんを出迎えた。

そこまでは、記憶がある。


えっと・・・。

なつかしい香りが、する。

柑橘系の香り。

あまり身長差がないから、コウさんの顔が近い。

頭は、優しくなでられて、腰には、優しく手が、置かれている。

優しい抱擁。

いつものように、頭をなでてくれる。

なんだか落ち着く。

ああ。

コウさんが、帰ってきたんだ・・・。


そう、帰ってくるなり、コウさんは、ただいまハグを、したのである。

突然のことで、固まっていた私。


「ただいま。ゆうちゃん。」

優しい声が、降ってきた。

コウさん・・・。

私は、その声で、張り詰めていたものが、ぷつっと、切れてしまった。

そのまま、泣いてしまった。

公衆の面前で、抱擁して、注目をあびている。

平日とはいえ、そこそこ人はいる。

その中で、嗚咽をまじえて、本格的に泣き始めた私。

いい大人。

そんな私が、子供のように、泣きじゃくってしまった。

コウさんは、驚いて、優しく頭をなでてくれる。

しかし、悪化していく鳴き声。

慌てて、私を、まわりに見えないようにして、椅子がある方へ連れて行く。

完璧に決めてきたメイクが、崩れても、一向に泣き止まない私。

時折、「会いたかった。」、「寂しかった」と、私が発しては、頭をなでてくれる。

そして、「ゆうちゃん、ごめんね。」と「僕も会いたかったよ。」と、必ず、優しく告げてくれる。

椅子に、横並びに座り、私は、彼の胸に、顔をうずめている。

頭を優しくなでてくれる。

到着ロビーから少し離れている。

他に、椅子に腰かけている人もいないので、完全に陣取っている。

でも、一度泣きだしたら、止まらない。

そして、泣いてたかと思うと、コウさんに対して、怒りをぶつけだした。

「どして、急に行ったの?」、「長く一緒に居たあと、突然、遠く行くなんて、ありえない!」、「コウさんなんて、知らない!」

泣き出してしまった私は、いつもの自分ではなかった。

溢れだす想いのまま、コウさんに当たっている。

普段だったら、物凄く怖い視線と声をくれるコウさんだから、そこまで言うことはない。

でも、私は、自分の気持ちを理解していなかった。

会いたくてたまらなかった。

そして、会えなくて、凄く寂しかった。

自分が耐えきれないほどの思いだったことに。

それに対して、コウさんは、黙ったまま、頭をなでていた。

時折、優しいなで方が、強くなったが、愛おしいなで方には、変わりなかった。

泣いたり怒ったりを、何度も繰り返して、やっと落ち着いた私。

やっとまわりの状況が分かってきた。

すでに、到着のロビーには、人が居なくなっていた。

私たちの座る椅子の近くにも、もちろんいない。

あたりを見回すと、どうも、二人らしい。

すでに、帰宅の途についたのであろう。

あたりをキョロキョロ見渡している私に、コウさんが、聞いてきた。

「落ち着いた?」

私は、慌てて、コウさんを見る。

とても心配した瞳を向けられている。

初めて見る瞳。

いや。

前にもみた気がする・・・。

あれは、花火デートの時・・・。

高級な日本料理店に行った時、大事な話をしようとして・・・。

あの時も、こうやって慰めてくれたよね。

いつのまにかコウさんから受け取ったハンカチに、視線を落として、私は、うなずいた。

優しく、私の顔の骨格を、なでて、あごを、持ち上げて、私の視線をコウさんの方へ向けさせられた。

彼の人差し指は、あごにおいたまま、親指の腹で、私の下唇を何度もなぞる。

彼の瞳は、いつのまにか熱っぽいものに、変わっていた。

私は、捕獲されそうな小動物の気持ちになった。

ごくりとなまつばを飲んで、少し、逃げ腰になった。

「ゆうちゃん・・・。」

威嚇するような光を交えた瞳と声だった。

「うん・・・。」

なんとか答えた。

「誰もいないから・・・いいよね?」

私は、首を少し傾けて、問うた。

「なに・・・。」

「何が?」と、聞くはずだった。

しかし、傾けた顔を、コウさんは、自分の都合の良い角度に素早く固定して、私の言葉をふさいだ。

軽く触れるキス。

目を開けたままの私。

顔を離したコウさんの瞳が、ぶつかる。

「ゆうちゃん、愛している。」

甘い声で、伝えられる。

私は、何とも言えない幸福感が、広がった。

そして、同時に、熱い気持ちが、湧いてきた。

自然と、コウさんの首に両手をまわして、甘くささやき返した。

「私も、愛してる。」

深いキスも添えて。


到着ロビー。

すでに、人がいないことをいいことに、私たちは、少しの間、甘い恋人の時間を楽しんだ。


読んでくださって、ありがとうございます。

コウさん、優しい!

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