第39話 つながる気持ち
「ごめんね。」
号泣する私に、何度も何度も、優しく声をかけるコウさん。
パソコンの画面には、心配するコウさんが、映し出されている。
しかし、号泣している私には、見えていない。
ただ、大好きなコウさんの声が聴こえるだけ。
そう、あれから、2日後、コウさんから連絡があった。
コーヒー豆の調達は、問題なくできることになった。
良いのか悪いのか、ホテルも取らずに、急いできたコウさんを、いたく感激して、自分の家に招待して、パーティーやら、コーヒー豆の農園などを見せてくれたりと、1週間、コーヒー豆の調達できた人のお世話になったことが、メールに書いてあった。その為、インターネットをつなげる環境になかったことで、連絡ができなかったらしい。あと一週間、別の農園をまわって、別の国の農園もまわるから、戻りは、10月頭になるということだった。ただ、別の国は、日本との時差が、1時間なので、インターネットを使ったテレビ電話をしたいとコウさんは、言ってきた。
それが、今、実現している。
コウさんが、日本をたって、三週間くらいたった今、テレビ電話しているのである。
久しぶりに会話をしていたら、急に、張り詰めていたものが、溢れ出しでしまって、泣いてしまった。
結構長いこと、泣いていた私に、「ごめんね。」と、謝り続けているコウさん。
優しい。
いい大人が、号泣って、ありえないよね。
ちょっと会えないだけで・・・。
そんな子供じみた私を、優しく声をかけてくれる。
本当に、コウさん、優しい。
好き。
本当に、好きだよ。
会いたい!
早く、会いたい!
落ち着き始めた涙が、また、溢れだす。
何をやっているのだか・・・。
30分くらい、泣いたあと、うさぎさんの瞳になった私を、優しく微笑んでみつめてくれるコウさんがいた。
「落ち着いた?」
「うん。ごめんなさい。」
「謝らないで。僕、思い立つと、後先考えずに、行動して・・・。寂しい思いさせて、ごめんね。」
初めてみる、しおらしいコウさん。
母性本能がくすぐられる。
会いたくて、また泣きそうになるのを、ぐっとこらえる私。
「嬉しいよ。」
コウさんの甘い声が聴こえて、パソコン画面のコウさんを見る。
「僕のことを、そこまで想ってくれることが。」
とろけるような熱い瞳とうっすら微笑むコウさん。
私は、心を鷲づかみされる。
顔が、真っ赤になってしまう。
それが、恥ずかしくて、ごまかす様に、マシンガントークを始めた。
「コウさんだったら、今までだって、そういう人いたでしょ?!」「それに、コウさん、モテるから、外国で、女の人と、その・・・いい感じに、なってたんじゃないの?!」「そんな甘い言葉、言っても、だまされません。」
などなど。
何故か、挑発する発言を、連発してしまった。
自ら、自爆して、どうする!私。
「やっと言い終わったか」と、ボソッと言い、コウさんが、鋭い瞳を向けてくる。
冷たい瞳。
やばい!
怒らせた?
「心外だな。僕の気持ちが、わからない?」
とても、冷たい声。
「今まで、ゆうちゃんみたいに、泣いて、寂しがってもらったことないよ。」
いくぶん、優しく言おうとしているが、冷たい声。
「それに、僕は、ゆうちゃんのことが、好きだよ。」
これは、力強い声で、言われた。
「この前のデートで、お互いの気持ちを確かめあったと思ってたけど・・・。違ったの?」
責めるような口調。
「でも、今回は、急に、外国にたった、僕が悪いから、許してあげる。」
優しく言っているようだが、恩着せがましい。そんな言い方だった。
でも、愛って怖い。
そんなコウさんを、やっぱり好きだなって思ってしまう自分がいる。
「コウさん、会いたい。」
私は、つぶやいた。
突然の言葉に、コウさんは、驚いた顔をしたが、愛おしそうな瞳を向けた。
「僕も。」
しばし、見つめ合った。
そのあと、たわいない話をした。
そして、帰国の日、空港まで、迎えにきてほしいとお願いされた。
月曜日のお昼頃。
ちょうど仕事が休みの日。
私は、快く、了承した。
チケットも、取ってあるので、帰国日は、変わらないことも伝えられた。
あと、5日後。
コウさんが、帰ってくる。
10月頭。
ああ、楽しみ。
早く、その日にならないかしら。
「泊りだからね?」
「え?」
会える日を楽しみにして、妄想を膨らましていた私に、コウさんが、言った。
「仕事で、無理そう・・・?」
月曜夜、お泊り。
仕事は、休みの日だから、問題ない。
「朝、急ぐかな・・・?」
会社に行くのに急ぐってことかな?
いや、休みだし・・・。
「だ・・・。大丈夫!」
と、答えた。
空港迎えに来てもらってからは、コウさんが、段取りしてくれるから、身、ひとつで、来てくれと言われた。
まさかのお泊り?!
大人ですから!
構いません!
明らかに、動揺する私に、更に、動揺する甘い言葉をかけてきた。
ゆでたこに変身した私を、おかしそうに、笑っているコウさん。
睨んでやった。
が、更に、笑っている。
絶対、私の反応、楽しんでるでしょ!
いつまでも、笑っているコウさんに、聞こうと思っていたことを、思い出して、聞いてみた。
そしたら、ピタリと、笑いが止まった。
「なんで?」
と、少し怖い声で、聞かれた。
「ワタル珈琲店のオーナーのワタルさんと、一緒に行っているの?」と、聞いたのである。
「うん。私の行ってるお店の店長の久米さんが、ワタルさん、海外行っていることを聞いたから。しかも、国も一緒だったし。」
と、説明した。
コウさんは、表情の読めない顔で、
「いや。一人だよ。」
と、言った。
「友人なんでしょ?」と、聞きたかったが、聞ける雰囲気ではなかった。
そのあと、「そろそろ寝る時間だよね?」と、言われ、そうそうに、テレビ電話を終了した。
私は、何だかふに落ちなかったが、コウさんに会える楽しみがまさっていた為、それ以上、気にしなかった。
読んで下さってありがとうございます。




