第35話 突然のお別れと意外なお誘い
「うわぁぁぁ・・・・・・・・!」
深夜2時。
自分の部屋で叫んだ私。
自分のスマートフォンの留守電を聴いて、叫んでしまった。
留守電の相手は、コウさん。
気になる内容は・・・。
自分のお店にだすコーヒー豆を打診していた人と、連絡がとれて、急に、外国に立つということだった。
しかも、昨日の夜。
すでに、飛行機で飛んでいるのである。
昨日は、昼ごはんをコウさんと済ませて、14時ごろに帰宅した。
旅行の片付けをして、明日の仕事の準備をしていたら、睡魔に襲われて、目覚ましをかけて、仮眠をとった。
そのアラームが鳴らなかったのか、私は、今、起きたのである。
コウさんの外国滞在は2週間くらいらしい。
ただ、未定。
スマートフォンは、時差があって、連絡とれないといけないから、パソコンメールしてほしいとのこと。
そんな内容の留守電だった。
なんで、寝てしまったんだろう・・・。
昨日までは、あんな楽しいラブラブデートだったのに・・・。
まあ・・・。
甘い時間も多かったし、夜も遅く、朝も早かったから、睡眠不足だったのはたしか・・・。
寝ても仕方ないとはいえ、何故、このタイミングで、外国に行くのかしら。
やっと連絡とれたみたいで、今を逃したくないと言っていたから、仕方ないとはいえ・・・。
急に、いなくなられると・・・。
なんだか寂しい。
二人とも忙しいから、2週間くらい会わないのは普通かもしれないけど、近くにいるのといないのでは、気持ちのもちようが違う・・・。
あんな甘い時間を過ごしたのに・・・。
コウさんは、寂しくないのかしら?
すっかりコウさんの虜になった私は、急にいなくなった恋人に対して嘆いていた。
夜中2時すぎである。
「はあああああ・・・・・。」
今日、何度か目のため息を、私は、ついた。
ここは、ワタル珈琲店。
夜中2時に起きて、コウさんへ、パソコンメールで、返信したあと、寝て、通常通り、仕事して、今に至る。
コウさんの作ってくれた小倉どらやきを食べたばかりだが、いつものとおり、同じものを頼んだ、私。
「何か悩みですか?」
いつものとおり、耀輔君が、ワタルブレンドと小倉あんどらやきを置きながら、聞いてきた。
「うん・・・。ちょっと・・・。」
店舗は違うとはいえ、同じ系列店で、働いているなら、コウさんのこと知ってるかもしれないし、知るかもしれないしね。
いくら何でも、言えないよね。
彼氏が、突然外国行って、寂しいとか。
そうじゃなくても、のろけになるか・・・。
「そうですか・・・。」
何か言いたそうにしている耀輔君。
いつもみたいに余裕があれば、気づいてあげたんだろうけど、今の私には余裕がなく、耀輔君の違いには、気づかなかった。
しばらくして、去って行く耀輔君。
私は、コーヒーを飲み、そして、小倉あんどらやきを、食べた。
あれ?
いつもと違う。
この味・・・。
昨日、コウさんが作ってくれた小倉あんどらやきに、近い!
生地のもちもち感が、アップしていて、小倉あんの甘さもバランスが取れている。
もしかして、あのあと、友人にお店のこと言ったのかしら?
スピーディーな対応。
まるで、社長みたいな迅速な対応。
やはり、お店を持とうとするだけあって、コウさんって、凄いな。
夢中になって、小倉あんどらやきを食べていた私。
耀輔君が、店長の久米さんに背中を何度か押されている。
珍しく、私以外、お客がいなくなったのを見計らって、再度背中を押された耀輔君は、私のところに来た。
もちろん、店長の久米さんと耀輔君とのやり取りは知らない。
「あ、あの・・・。」
いつもだったら、コーヒーだした後は、私のところに来ることはない、耀輔君。
ああ。
小倉どらやきのことかしら?
「おいしいね」
「え?」
「小倉どらやき。前もおいしかったけど、更に、おいしくなったね。」
「あ・・・。はい。今日から、新しくなったんです。やっぱり、こっちのが、おいしいですか?」
「うん。前も良かったけど、今日のが、一番かな。」
ワタル珈琲店での、一番だけどね・・・。
あ、コウさんも、ワタル珈琲店か。
ま、コウさんが、一番なのは、置いておこう。
「そっか!嬉しいです。」
耀輔君は、嬉しそうに、にっこり笑った。
あ、かわいい。
この耀輔君の顔、好きなんだよね。
長身なのに、童顔で甘いかわいらしいマスクが、たまらない。
この身長の高さとかわいらしさのギャップが、素敵!
その顔で、笑われると、胸キュンするかわいらしさなのである。
私の大事な弟みたいな母性本能くすぐられる、守ってあげたくなるタイプである。
もちろん恋愛対象ではなく、一種のお気に入りの部類に入るタイプである。
「あ、あの・・。」
「ん?何?」
笑顔に、見とれていた私は、すぐ我に返って聞いた。
「今日、お時間ありませんか?」
「今日?今?」
「あ・・・。今日の夜。ワタル珈琲店のメンバーで、親睦会やるんです。」
ああ。
なるほど。
しかし、私は、行く理由がない。
一応、常連だが、それだけである。
「私は・・・部外者だし・・・」
断ろうとした。
当然である。
「ゆう子さんに、来てほしいんです!」
真剣な瞳で、耀輔君が、言う。
えっと・・・。
「でも・・・。」
そんな瞳で、言われると、断り辛いんですけど・・・。
「みんな奥さんや恋人連れてきてOkだから、みんな連れて来るんです!でも、僕、一人だから、ゆう子さんに、来てほしくって・・・。」
「・・・そっか・・・。でも、耀輔君だったら、女の子の友人居るんじゃない?」
今日の耀介君は、アピールが凄くて、弱気になっている私。
なんとか断る様に、話を持っていく。
「女の友人はいないです。俺、ゆう子さんに、来てほしいです。」
な・・・。
なんで、私。
こんなかわいい弟みたいな耀輔君に言われたら、断りにくいんですけど・・・。
「一人って、寂しいよね。でも、ね・・・。」
なんて、心情に訴えようとしたけど、ききめなし。
うーん。
「ゆう子さん、落ち込んでいたみたいだから、気晴らしになるかなって。」
「うん・・・。まあ・・・。」
「それに、俺、ゆう子さんと、仲良くなりたいんです!」
そうなの?
私も、こんなかわいい弟みたいな友人ほしかった!
そんなかわいい小動物みたいな瞳を向けられると、弱いのですが・・・。
「私も・・・。耀輔君と、仲良く・・・友人?に、なりたいなって思ってたよ。」
「じゃあ!ぜひ!」
いや・・・。
でも・・・。
耀輔君のアピールは、物凄くて、その後も続いた。
何とか回避しようとした私だけど、耀輔君の粘り勝ちだった。
嬉しそうに、私の手をとり、ぶんぶん振って、喜んでいた。
まあ・・・。
いっか・・・。
親睦会は、今日の夜7時。
ワタル珈琲店は、今日は早く店じまいするらしい。
私は、7時まで仕事なので、そのあと、遅れて行くことで、了承した。
たまには、こういう会も楽しいかなっと思い、少し気分が晴れて、私は、職場の『ローズ』に、戻った。
読んで下さって、ありがとうございます。
まさかのコウさん不在、続きます。




