第20話 作戦会議
「だから、ゆうちゃん、ダメだって。」
私は、職場のセレブ御用達『ローズ』の一室で、優子のネイルを仕上げ中である。
ここは、ネイル専用の個室である。お客様がゆったりできるように、用途に分けて、すべて個室になっている。つまり、髪を切ったり、整えたり、メイクしたりする美容全般の専用個室、着付け専用個室、ネイル専用個室に分かれているのである。待つ場所は、共用ではあるが、すべて、リラックスできる様に、配慮して、個室にしてある。作りもおしゃれで、パリをイメージした部屋になっている。この部屋は白を基調にした壁に、アンティーク雑貨や絵が置いてある。
今は、土曜日の夕方。優子が、最後のお客様である。明後日に迫った、コウさんとの1泊2日の旅行の話をしている。
「やっぱり、一線を越える前に言うのが、礼儀でしょ?」
と、ネイルに集中しながらも、優子を、チラッと見て、答える。
「だから、纐纈雄海は、一気に、ゆうちゃんとの距離を詰めたいんだから、そこは、水をさしたら、ダメだって!ここは、更に、たらし込まなきゃ!」
いやいや。
それは、ダメでしょ?
「納得いきません!」と、目で、訴える。
「だって、この前の映画デートの帰りでも、キスまででしょ?大事にしてるから、徐々に詰めてるんだって!ここは、ラブラブ旅行して、纐纈雄海が、ゆうちゃんを離せなくなるくらいに、しなきゃ!」
「やっぱり、それって、詐欺じゃない?いつもお金払おうとしても、一切、出させてくれないし・・・」
「何言ってるの!たいした額じゃないんだから、当たり前。しかも、恋人なんだから、お礼さえ言っておけば良いのよ。」
え?
そういう物なの?
いやー。
庶民の私には、デート代金だけでも、結構するから、すでに、詐欺なのかと・・・。
ざっと・・・。
計算して、ゾッとした。
「でも・・・。」
「ゆうちゃん、旅行中は、嘘だっていう告白厳禁だよ!」
優子にしては、珍しく、強気に言われた。
それがいいのかしら?
たしかに、何も考えずに、コウさんと過ごしたい。
とにかく甘く甘く甘えたいって、思ってる。
許されることなら、恋人のまま、ずっといたい。
でも?
やっぱり・・・。
私は、いつもここで、踏ん切りがつかなくなってしまう。
恋って・・・やっかいだな。
好きになりすぎてしまった。
私の嘘をつかない誓いも、こんな簡単に、破り続けれるなんて・・・。
こんなに好きになったことは、初めてで、自分自身に、戸惑っている。
「じゃあ、いつ言ったら、いいの?」
優子に聞く。
「そうだね・・・。旅行で、関係が、更に親密になったら、次の機会に言うってことで、いいんじゃないかな。」
「本当に、それで、大丈夫かな?怒ると、もの凄く怖そうなんだけど・・・。」
私は、コウさんの怒った顔を想像して、寒気がした。
「一緒に、謝りに行こうか?」
優子は、大丈夫だと思うけど、何ならついて行くよと、軽い感じに声をかけてきた。
「うーん。心強いけど・・・。それは、こじれた時かな・・・。」
「うん。大丈夫だって!聞いてると、かなり、ゆうちゃんに惚れてるから、少し怒っても、ゆうちゃんを、絶対、離さないと思うよ!」
と、背中を押してくれた。
私って、ずるいのかな?
優子の話に、まったく納得していないのに、優子が言うから大丈夫!って、自分に言い聞かせている。
コウさん、もう少しだけ、優子だって、嘘ついたままでいい?
許してくれる?
私は、考えた。
やっぱり、許してくれない気がする。
じゃあ、せめて、旅行までは、嘘をつき通させて・・・。
私は、嘘をつきとおそうと、決意してしまった。
未来より、今、欲しいものを手に入れたい。
私の中に眠っていた悪魔が、ささいた。
そして、私は、その悪魔の手をとってしまった。
コウさんが、好き。
それが、純粋な気持ちだから、許されるよね?
自己嫌悪を、正しいことだと、自分にいいくるめて、私は、覚悟を決めた。
読んでくださってありがとうございます。
ここまでは、スムーズ更新でした。
次回更新は、ちょっとあくかもしれません。個人的には、早く更新できたらとは、思っています。
頑張ります!




