第17話 突然のお誘い①
「お待たせしました。」
私は、息を少し切らせながら、車の中のコウさんに、声をかけた。
ただいまお昼1時をまわろうとしたところだった。
コウさんは、黒い高級車で、お出迎えだった。国産の有名なシリーズのがっしりとした美しいボディの車だ。
乗ったことないのですけど・・・。
『助手席に乗って。』と、コウさんは、ポーズで私に訴えていたので、助手席を開けて、乗ろうとした。
息をきらした私に気づいて、
「ゆうちゃん、走らなくて大丈夫だよ。」
と、笑いながら言った。
だって、間に合わないと思ったんだから・・・。
ぎりぎりセーフだったけど。
少し頬が膨らむのを見たからか、ますます笑って、
「早く乗って」
と、促してきた。
今日の私の服装は、黒のノースリーブ。胸より少し上は、透ける素材で、お花などの刺繍が前後にあしらわれて、胸には、黒のリボン。スカートは、藍色で、花柄レースのフレアースカート、ウエストは、銀のラメゴム。白のカーディガン、背中は金の色が入った花柄レースになったのを羽織っている。靴は、シックな赤のラメのパンプス。少し大きめの大人しいピンク色のエナメルのカバンを、肩に掛けていた。すべて、私の私物。高級ブランド品はないが、私がめいっぱいできるおしゃれをしてきた。似合ってれば、ごまかせるよね?
すかさず、乗り込む。
コウさんは、仕事の帰りらしく、スーツの上着を脱いで、ネクタイをとった青みかかった水色のワイシャツのボタンを少し外して、下は、濃いグレイのパンツ。
上着は着てないけど、スーツ姿のコウさんは、本当にかっこよかった。
似合っている。
自分がスーツ好きなのを、思い出した。
スーツを着てればいいわけではなく、スーツが似合っているのが、必須である。明確な基準はなく、自分が素敵と思うかが、基準である。最近、このときめきを覚えることが少なくなった私だったが、彼のスーツ姿に、見惚れてしまった。
あまりに、見つめすぎて、「どうかした?」と、コウさんが、聞いてきた。
「スーツ、かっこいい。」
と、夢見がちな視線と甘いため息をはいた私。
ぶはっ
声を大きくして、コウさんは、笑いだした。
何度か、笑っているところを見たが、ここまで笑っているのをみたのは、初めてではないだろうか?
と、考えつつ、自分が言ったことを思い出して、頬が赤くなった。
もの凄く、うっとりした顔で、言ったことに、気づいた。
まだ笑い続けているコウさんに、睨みつけながら、彼の肩を揺さぶろうとした時、彼が動いた。
「きゃっ」
膝を車のどこかで、打ち、彼の上半身にしがみつくように、倒れてしまった。
何をやってるのだろうか。
乗ったら、すぐ、シートベルトすれば良かったと思っていると。
「大胆だね。」
と、柑橘系の香りがするコウさんは、言った。
今日は、長い髪を、横に束ねて、カバンと同じピンク色ののバラのシュシュをつけている。縁取りに、金のラメの刺繍がしてあるお気に入りのシュシュである。
私の後ろ髪をなでなでしている。
少しだけ上目遣いをして、彼を見ると、私の前髪を少しよけて、額に、唇を落とされた。
「髪、キレイだね。」
そういって、彼の唇が、下へ下へと触れながら、落ちてきた。
物凄い体勢で、抱き着いているので、少し体勢をなおして、彼のシートに手をまわして、自分から、コウさんへ口づけした。しかも、深く激しいキスを・・・・。
大胆にも。
彼がまわしていた手が腰から、下に移ったことも気づかないくらい、夢中に、コウさんを求めて口づけた。
彼の手が、私の肌に、直接触れる寸前、コウさんのスマートフォンが、鳴った。
バイブレーションだったが、車の中では、大きく響いた!
その音で、我に返った私は、急いで、助手席に座り直そうとした。
「いったぁ!」
お約束である。
ドジな私は、車内で、頭をぶってしまった。
コウさんは、微かに笑いながら、
「ゆうちゃん、おもしろいね。」
と、言ってきた。
嬉しくない。
ここでは、『大丈夫?』でしょ。
頬を膨らましながら、シートベルトを締めて、彼とは、反対方向を見た。
コウさんは、スマートフォンをチェックしていたが、「急ぎのメールじゃないから。」と、言い、車は、静かに動き出した。
読んでくださってありがとうございます。
まだまだ二人のデートは続きます。少しでもお楽しみ頂けたら、幸いです。




