第12話 花火デート③
あたりは、すでに真っ暗になっていた。
何とか、本日の告白を決行するべく、勇気を奮い起こしていた。
何度か、悪魔のささやきがあって、めげそうになったのも事実だ。
ようやく時間になった。
花火大会。ここの花火大会は、初めてだ。
さっきコウさんと話してたら、彼は小さい時以来らしい。
大人になって、初めて!
デートで、初めて!
嬉しいではないか!
この歳になって、初めてって言われると、とても『貴重』な気がして嬉しくなってしまった。
音楽が、流れはじめ、真っ暗な海面と空に、砂浜から、レーザー光線を四方八方に流していた。色は、最初は、白、次は、青、紫、緑・・・七色へと変わっていく。
音楽も、盛り上がってきたと、思ったら・・・・。
海上から、花火が、大きく一発。続いて、数発、打ち上げられた。
海面から打ち上げられる花火は、海面にも、鏡のように映って、対比が、とてもキレイだ。
その後も、様様な花火が打ち上げられていった。
時折、ハートや星など、ユニークな花火が打ち上げられた。
中でも、浜辺から、海面へ、道の様に、レーザー光線をあてて、打ち上がる花火は、物凄く壮大だった。
音楽に合わせて打ち上がったりと、初めて見る花火とのコラボの連続は、とても楽しかった。
時々、嬉しそうな瞳をしたコウさんを、盗み見して、ドキドキと、胸が高鳴っていた私。
それでも、しっかりカメラに花火を写したり、動画をとったりしていた。
コウさんがそれを見て、何度か笑っていたことには、気づかなかった。
花火の音が大きかったことにしておこう。ただ、没頭していただけなのだが・・・。
あっという間に、終盤を迎える少し前に、声をかけられた。
「ちょっと早いけど、終わると混むから、そろそろでない?」
本当は、最後までみたいけど、浴衣姿で、満員電車は嫌なので、仕方なくうなづいた。
コウさんは、早々に、歩き出していた。この人込みを、足早に出ていく彼を必死に追いかけた。
こういう時は、物凄く足が早いんだなと思った。
駅まで、15分くらい歩く。
薄暗くて、人もほとんどいない。
やっとコウさんに、追いついた。
静かに隣を歩く。
どうしよう。
やっぱり、今がチャンスかな・・・
この人気のなさ。
つまり二人っきり。
話しやすいよね。
そう、私は、林優子ではないという告白。
これが、本当の今日のデートの目的だから・・・
「優子、力を貸して!」と、心の中で、叫んだ。
「コウさん!」
いつのまにか、半歩前に居た彼を呼び止めた。
彼は、歩きながら振り向いた。
「あの・・・大事な話が、あるんですけど・・・」
私は、勇気を振り絞って、話し始めた。
あまりにも、真剣だった為、後ろから来た車に気づかなかった。歩道がないので、道路脇を歩いていた私たち。私は、いつのまにか、脇から外れていた。
勢いよく私に突っ込んでくる車。
ふいに、腕を掴まれた。
上体が、浮いた。
ぽふっ
やわらかい様な、がっしりしたものに、体を預けた状態で、なんとか車からは、逃げれたようだ。
ほのかに、柑橘系のにおいがする。
顔にあたっているのは、浴衣みたいな生地のような・・・
私は、気づくのが遅かった。
コウさんが、腕をひいてくれて、車をよけさせてくれたのだが・・・
私は、しっかり彼の胸の中に、おさまっている。
腕は、まだ掴まれている。
頭の上から、
「大丈夫?」
コウさんは、言った。
私は、上を見上げて、答えようとした。
これを止めるべきだった。
「だ・・・」
大丈夫!と、言いたかったが、声にならなかった。
今は、バランスを崩しているが、もともと5センチくらいしか身長差がない私たち。
起き上がろうと上を見上げたら・・・
もの凄く、コウさん顔に近づいてしまった。
あと少しで、唇が触れそうな距離。
思わず止まってしまったが、慌てて、離れようとする前に、柔らかいものが、唇にあたった。
少し、触れた。
そんなキスだった。
そして、まだ私の腕を握っている手とは反対の手で、私の頬を優しく触れた。
彼の瞳がぶつかる。
熱を帯びた瞳に、吸い込まれながら、二人は目をとじた。
その少しあとに、優しいキスが、何度も降り注いだ。
少し深くなったキスも、夢中で、こたえてしまった。
私の背中のむこうで、最後の花火が何発も打ち上げられていた。
私たちの気持ちを表すかのように・・・。
激しく、美しく・・・何度も・・・。
読んでくださってありがとうございます!
ちょっとドキドキ場面が、書けて嬉しいです。まだまだ花火デート続きます。




