1泊目 「神様の温泉旅館」
季節は春、桜が少し咲き始めた頃だ。俺こと「ヒノエ」は登り始めたばかりの朝日を全身に浴びて、自分の営む旅館の玄関回りを箒ではいていた。2階建てで旅館の玄関からし少しだが雨避け用の屋根があって、左右の柱に「迦」と書かれた大きな提灯が、吊るされており、玄関扉の真上には「迦具土温泉」と書かれた大きな看板が掲げられている。旅館の広さは…そうだなぁ、そこまで広くはないかな……見た目はな。ま、想像に任せるさ。
当旅館は従業員達が住み込みで働いていて、俺は1番に起きて掃除をするのが日課というわけだ。遠くに聞こえる鶯の鳴き声に耳を傾けながら黙々と掃除をしていると、近付いて来る足音に気が付く。
「おはようヒノエ」
と声をかけてきたのは旅館の番頭で俺の1番の理解者でもある
「竜御-たつみ-」だ。見た目が20歳位の蒼く短髪の髪に空色の瞳を持ち、彼を正面から見て右に前髪を流し白いヘアピンでクロスにとめてある、細身だが身体から漂う不思議な安心感と人当たりの良さそうな顔…俗に言う「好青年」というやつか。
「おはよ、竜御。」
「いつもご苦労様!何か手伝おうか?」
「大丈夫もう終わるから」と断り、「皆揃ってるか?」と聞くと竜御が苦笑して答えた。
「まだお休み中の二人が…」
やれまたか、と毎日過ぎて最早何とも思わない。これもまた日課の1つ…さ、起こしにいこうか。
場所が変わってここは従業員達が暮らす部屋の前、旅館の中に専用の部屋を設けてあって5部屋あり全て和室。ほぼ個室で、内1部屋は皆で食事をしたりする所だ、部屋を出ると長い廊下で繋がっていてちょっとした庭もある。風呂はお客様も使う、うち自慢の露天風呂で俺達が入れる時間を設定してある。
おっと話が横にそれたな、今お寝坊さんの部屋の前…名前プレートには「テマリ」「イマリ」と可愛らしい幼い字で書いてある。
障子を開け中へ入ると布団が1枚、俺が勢いよく引っぺがしてやると狐が2匹…陰陽対極図のような感じで寝ていた。
ん?狐が従業員なのがおかしいって?おいおい最初に言ったろ、ここは「神々の営む温泉旅館」だって。狐がいたってなんら不思議じゃあない。分かった、ちゃんと説明しよう。
ここで働く全ての従業員は神か妖のどちらかだ、人間は1人もいない。そして俺はこの旅館の主ヒノエであり…お前達人間がよく知ってる日本神話の1柱「炎神・火之迦具土神-ほのかぐづちのかみ-」だ。
そして俺の隣にいる好青年番頭こと竜御は、「龍神・闇御津羽神-くらみつはのかみ-」つまり龍だ。…で、この狐達はー
「とある稲荷神社のはぐれ御使い狐でーっす!」
と、いつの間にか人型に化けたさっきまで寝ていた狐達が声を揃えて言った。
二人共見た目は10歳位の男の子、あくまでも見た目の話で歳は人間で言うと、もうかなり上になる。狐色の少し長めの髪を後ろで束ねており、茶色の瞳に双子の如く瓜二つの子供。違いを挙げるなら結ってる髪のリボンの色位だ。ちなみに説明すると赤いリボンが「テマリ」青いリボンが「イマリ」である。2人は旅館の内務を担当している看板娘ならぬ看板狐達。どうして双子の如くと言ったかは、2人曰く双子ではないからだ。
これで全員起きたわけで、「今日もいっちょ頑張りますかぁ~」
「ますかぁ~」と話す2人を連れて営業を開始するために朝礼場であるロビーに向かった。
今日の客人になろう者が近付く気配を感じつつ…
ここまで読んで頂きありがとうございました‼
ちょっと無理やりな進ませ方な所もありますが、何とか書き上げました。満足です(笑)
さて、次話から初のお客様が登場します。神か妖か、それとも人間か…本人が一番悩んでいますよw
お暇な時にでもまた読んで頂けると有難いです。




