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7枚目

 


 夕ご飯が終わって、なんだかんだ、月曜日まで泊まることになった。

 一人ってゆーのも慣れてた。でも、ちょっと寂しかったりしてたから、維澄兄がああ言ってくれて嬉しいっちゃ嬉しかったけど。

 ……いや、うん。嘘。

 めっちゃ嬉しい。

 で、家から洋服とか取って戻ってきたとき、のんこがちょうどお風呂から出てきたところだった。

 いやね?のんこって、なんでもかんでも早いから、いちいち驚かないけどさ。

 この短時間で入ったんですか。


「天音のタオル、置いといたから」

「あ、ありがとー」


 わしゃわしゃ髪をタオルで拭きながら、二階に上がってくのんこと入れ違いで洗面所へ。

 私のお風呂タイム一時間で、のんこは髪乾かして竹刀の手入れして漫画を一冊読み終わるぐらいしてみせるもんだから、とんでもないなと思う。


 ──で、お風呂から上がって部屋のドア開けたら、案の定乾いた髪でベッドに寝っ転がって漫画を読んでるのんこを見つけた。

 まあ、私と違ってショートヘアだから、乾かすもなにもないんだろうけど。


「のんこ、アイス」


 洗面所から出たとき、維澄兄がアイス二個くれた。のんこにソーダ、私にバニラアイス買ってきてくれたみたい。好みを覚えててくれるとかほんとやばい。


「私、雪村家マジで好き」

「みんなが可愛い言ってくれるからっしょ?」

「そーです」

「単純だよね。可愛いよ」

「そんなおざなりの可愛いはいらない」


 ワガママ〜、と寝っ転がった体勢でアイス食べはじめたお行儀悪い子の、足元に腰掛けて私もアイス開けた。

 基本、のんこが私を「可愛い」って言うときは、私をからかってるときだから。それで喜ばないから!ほんとに!


「天音って分かりやすいよね」

「なに?」

「べっつにー?」


 にやにやして、なに?


「天音って、ナルシはナルシでも、可愛いナルシだよね」

「え? 私が可愛すぎてなに?」

「あんたのそーゆーとこ、あたし好きだよ」


 てか、漫画読みながらアイスとか、汚しても知らないよ。

 と言いつつ、のんこは器用だからそんなことなく食べきるんだろうけどね。私だったら零しちゃうから絶対やんない。私が不器用とかではなく。


「なに読んでんの?」

「しょーじょまんが」

「のんこが? 珍しいね」


 男兄弟ばっかりだからなのか、のんこの性格なのか、両方なのか、のんこの本棚には少年漫画しか置いてないのに。


「友達がね、貸してくれた。あたしはこーゆうの読んで、レンアイを学ばないといけないんだと」

「……あー、うん。そうだね」


 実はのんこにはカレシがいんだけど。それがまたイケメンなんだけど。

 かわいそーなくらい雑な扱われ方で、それでものんこに尽くしてる誠意ある姿には、ほんと涙が出そうになる。

 ちなみにそのカレシ九コ年上。

 その人に、犯罪だよねって言うと異常に慌てて、下手すると涙ぐんでくる。そこが面白いんだけど、あんまりやってるとのんこに怒られちゃうからほどぼどに弄ってる。


「この女、勘違いしすぎじゃない? なんで他人の言うこと信じるの? この状況で『でも好き!』とかおかしくない?」


 ……のんこが、カレシを優しく扱う日は来るのだろうか。

 まあ、カレシさんも幸せそうだし、のんこだって、扱いがどうであれ、好きなんだろうなと思うからいーのかな。


「で?」

「ん?」


 私はこれは当然の反応だと思うんだけど。

 ただ、のんこはそうは思わなかったみたいで。そんな、「はあ?」みたいな顔しないでほしい。お願いだから。


「九条那月だよ」


 ……いや、わかるか!文章作って!


「気になんでしょ?」


 気になるって、そんな。


「だからぁ、九条くんにはちょっと失礼なことされて、頭にきたってだけ」

「泣き顔、撮られた?」

「……」

「おお、マジか。当たり?」


 濁した意味!

 面白そうに笑ったのんこは、漫画を閉じて壁にもたれるようにして座った。


「ま、あんなキザ男と付き合い続けるより、別れてよかったんじゃん? これを機に、新しい男探しなよ」


 いや、あなた。新しい男って、フラれて間もない女の子になに言うの!?

 そりゃ、別に本気じゃなかったし?今はもうあんなヤツのこと好きでもなんでもないし?ただ、ちょっと顔がよくて気が利いて、デートもいろんな所に連れてってくれて甲斐甲斐しく世話してくれる、まるで維澄兄や亜澄兄みたいな人だったけど。


「あんた、兄貴たちのことほんっと好きだよねー」

「えっ」

「全部、口に出してたから」


 のんこエスパーやばいっ!って思ったけど、やばいのは私な。


「あ、ねえ。そういえば、なんで亜澄兄のこと言ってくれなかったのー?」

「ん? あー、忘れてた」


 ……まあ、わかってたけど。

 にしても、ホストかぁ。似合ってるけど、なんで佳代ちゃんに言わないかなぁ。


「アズ兄も馬鹿だよねー。『俺、ホストでてっぺん取っから!』とかって、大学辞めてから報告してんの


 うわぁ……。大学、勝手に辞めたんだ。

 佳代ちゃんが怒ると恐ろしいの、わかってただろうに、事後報告か。


「アズ兄、稼いでるみたいで、けっこーいいとこ住んでんだよね。あたしらの学校まで電車で五分んとこ」


 アズ兄の家に住まわせてもらおっかなぁ、ってちょっと待て。確かに、ここから学校まで一時間もかかるんだから、五分とか魅力的だけど、そこじゃない。


「あの辺、高いじゃん。え? 亜澄兄、いつからホストやってんの?」

「んー? 三……、四ヶ月前かなぁ」

「おい」


 なんで言わない。

 結構、つーか、かなり前じゃん!


「そんなことより


 そんなことよりって、あんた。


「ほら、目の前にいんじゃん。新しい出会い」


 話の転換の仕方。雑すぎる。

 えー。目の前って──……。


「のんこ?」

「馬鹿」


 そんなガチで言わなくても。冗談だよ。九条くんのことでしょ。

 でもさぁ、出会ったばっかの人間に、それも最悪な出会い方したヤツに、恋愛感情が生まれると思います?

 ……思ってたより悪い人ではなかったけど。


「そーだ。あたし明日は部活行っちゃうけど」

「あ、そーなの? ドレス、のんこの部屋でやっていい?」

「針、あたしの部屋でなくさないでね」


 ……いつかの、針一本紛失事件inのんこの部屋を思い出した。その節はどうもご迷惑をお掛けいたしました。

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