告白の計画
「というか、俺よりも女子の友人に頼めよ」
紫乃の応援はするが、こういう相談は女子同士のほうがいい気がする。
「うん・・・もうだいぶ前に、相談はしてるの。
アドバイスをくれて、何度かチャンスも作ってくれたのだけど、
サトシ君の側にいる友人が怖くて・・・失敗ばかりで。
2月のバレンタインで渡せなかったら、あきらめろって言われたの。
・・・だから今更、お願いできなくて・・・」
何度も挑戦して、何度も失敗して、それでもあきらめきれなくて。
それで、藁にもすがる思いで俺の協力を求めたわけか。
下を向いてうなだれる紫乃に、俺は声をかけた。
「わかったよ」
俺の言葉に、紫乃が顔を上げる。
「え?」
「俺が協力してやる。だから紫乃も勇気を出せ」
「大介君、ありがとう。
それで・・・どうしたらいいと思う・・・?」
「電話番号、D組のやつに聞けば分かるけど、
電話で伝えたら?」
「私、自分の電話もってないし、・・・直接お礼を言いたいの」
「まだ持ってなかったのか。
うーん・・・直接、かあ」
学校でのサトシの姿を思い浮かべてみる。
サトシにはいつも一緒に行動している仲間が3人いる。4人の家の方向が同じなのかは知らないが、登校から下校まで、ずっと一緒にいる。
おそらく、靴箱に呼び出しの手紙でも入れたら、他の3人が茶化すことだろう。
「サトシの友人が側にいたら、告白できないよな?」
紫乃は、当然とばかりに頷く。
「サトシ君だけを、呼び出したいの。
裏の川が見える、景色のきれいな体育館裏に・・・と思って、
書いた手紙は持ち歩いていたんだけど、渡せなかった・・・」
「手紙を渡すのに何かきっかけがあればいいんだけどな」
段々弱々しくなる紫乃の声を聞き終わって視線を下げると、クッキーが入っていた皿が目に入った。
「なあ、このクッキー、お前が焼いたんだろ?」
小学校の高学年になった頃から、紫乃は度々お菓子を作るようになった。遊びにくる度に味見をしていたが、紫乃のお菓子作りの腕前はどんどん上達していった。
目の前にあるクッキーもとても美味しい。これならば贈り物としては十分だろう。
「クッキーの包みに手紙つけて渡せば?
あ、むしろその手紙にお礼を書いておけばあの3人のこと考えなくてもいいんじゃないか?」
卒業式は10時に始まり、1時間ほどで終わる。その後はHRでクラスメイトと別れを済まし、下校になる。
卒業式から帰る生徒と保護者の群れの中で、サトシを見つけて「これあげる」と言って渡して逃げる。
これなら紫乃でもできるのではないか。
その計画を伝えると、紫乃はもじもじとしながら言う。
「それも・・・悪くないんだけど、でも、私は直接言いたいの・・・」
あくまで彼女は対面して、直接告白したいようだ。
「いつも一緒にいる3人を離して、サトシだけを呼び出せばいいんだな?」
「うん・・・ずっと見ていたけど、なかなか一人にならなくて、困っていたの・・・」
サトシだけを呼び出す作戦を考えねばならないが、どうしたものか。
心配そうに俺の顔を覗きこむ紫乃から目をそらし、俺は腕を組んで目を瞑る。
一人で来るように言っても、他の3人がこっそりついて来たら?
ついて来た時は、どうやって3人を抑える?
そもそも、伝言や手紙で呼び出したとして、サトシが来る保証はない。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「わ、わたし、お茶とクッキーのおかわり持って来るね」
沈黙に耐えかねて、紫乃が言った。
「ああ。俺は考えておく・・・って、まだクッキーあるのか?」
俺は目を開けて、コタツから立ち上がる紫乃を見た。
「うん、作る時は、一度にオーブンに入るだけは焼くから。
20個くらいはあるよ。・・・家に持って帰る?」
「いや。
それより、これからクッキー焼けるか?何枚くらい焼ける?」
勢いよく尋ねる俺に気圧されながら紫乃は答える。
「う、うん。
無塩バターはあと一箱あるし、
他の材料もまだあるから・・・あと60枚くらいは焼けると思う」
よし、いけるぞ。60枚あれば十分だ。
俺はニヤリと笑いながら紫乃に告げた。
「紫乃、作戦を思い付いた」
「えっ」
驚く紫乃にかまわずに続ける。
「まず、サトシを呼び出す手紙を書いてくれ。
卒業式の後に、体育館裏で話があるから来てくれって」
「わ、分かった」
「そして、クッキーを焼けるだけ焼いてくれ!」
大介が何か思いついたようです。




