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5-2

 亮平が去って行ってから、数分が経っていた。体感では、とてつもなく長く感じた。このままずっと、明日香と一緒に居たいと思えた。


 その間、少しずつだけど、亮平が明日香に何をしたかが分かってきた。


 明日香が言うには、亮平が急に現れて、あと少しで風紀が来るから、それまでいっぱい泣いておけって言われたらしい。それで、あの状態になっていたわけだ。


 それにしても、亮平のやつ……なんでそんなこと。もしかして、俺たちのために? 俺が来なかったら、どうするつもりだったんだよ。


 色々考えていたら、もうどうでもよくなってきたや……。


「明日香……」


 ぎゅっと、腕に込める力を強める。


「い、痛い痛い!」


「あ、ごめん」


 急に叫んだ明日香にびっくりして、俺と明日香の間に少し空間をあけた。そこから、明日香は少しだけ顔を上に向けて、俺の顔をじっと見つめてきた。


「……風紀だよね?」


「うん」


「ばか」


「え」


「ばーか」


「は?」



「バカバカバカバカ!」


「え!?」


 一通り、俺に罵声を浴びせ終えると、再び明日香は俺の胸に顔を押し当てた。


「私、綺麗になった?」


「お、おう」


「風紀も、見ない間に恰好よくなっちゃって」


「ありがとう」


「……で、何か言うことはないですか?」


 くっつけていた頭を離したと思ったら、今度は強烈な衝撃をプラスさせて俺の胸に再び額を押しつけた。


 たぶん、明日香の怒っていますよ、アピールなのだろう。


「昔以上に綺麗になったね」


「うぅ、ありがと。それもあるけど、違うよねぇ」


「ごめんな」


「違うよぉ」


 俺は、大きく息を吸ってゆっくりと呟いた。


「……俺と一緒に居てくれる?」


「男らしく言ってくれなきゃ嫌なんだから」


「もう離さないから」


「いいの? 風紀と向き合うことを恐れた私でも? 離さないでいてくれる?」


「当たり前」


「風紀ぃ」


「一緒に居よう」


「……うん」


 再び、力を込めて抱きしめた。






「明日香、もういいかな」


 そう言ったのは俺ではない。明日香の、後方から聞こえてきた。


 俺も明日香も、その言葉で反射的に体を離した。


 スーツ姿の、見た目は二十代後半の男。見たことない人だった。


「渡利さん、これは……その」


 渡利さん? 誰だ、それ?


「明日香、帰るよ」


 名前を呼び捨て? こいつ、明日香の何なんだ? もしかして……


「ふ、風紀、マネージャーさんだからね! マネージャーの渡利さん! デビュー当時から、私の担当してくれているの」


 マネージャー?


 俺は、渡利さんという人と目があった。なんか、そらしたら負けな気がする。


「……香坂風紀君だね?」


「はい」


 俺のことを知っているみたいだ。……そりゃそうか。マネージャーってことは、明日香の過去のことも知っているよな。


 ということは、俺がここで明日香と一緒に居る所を見られるのは、非常にまずいことだってことだ。事務所の人ってことは、俺と明日香を引き離そうとするだろう。でも、もう離さないって決めた。


 しかし、明日香としっかりと話し合っていないのも事実。また、全部俺が一人で決めては、昔と何も変わっていない。


 もう少しだけ、明日香との時間がほしかった。


 一歩、渡利さんが俺に近づいてきた。……何か、言われる。ここは、乗り切らなくちゃ。


「今日はありがとう。明日香も息抜きできたと思う」


「は?」


 それは、予想外の言葉だった。感謝されるなんて思ってもいなかった。


「明日香は、最近多忙でね。少しは息抜きが必要だと思っていたんだ。ほら、明日香は頑張り屋だろう? 休むことを知らなくてね、この三カ月休みが一日も無いんだ。そして、明日は久々の休暇だ。若い女の子なのに、家でゆっくりするらしい」


 頭の整理が出来ないまま、渡利さんは勝手に話を進めていく。何を言いたいんだ、この人は。味方なのか? 敵なのか?


「渡利……さん?」


「プライベートまでは、私たちはもう関与できないからね。まぁ、さすがに海外に逃げられたり、急に居なくなったりしなければ、友達と遊ぶぐらい問題ない。友達とね」


 渡利さんは無表情のまま、そう告げてきた。


 明日香と顔を見合わせる。渡利さんが何を言いたいかは、なんとなく伝わってきた。明日、明日香に会ってもいい。見て見ぬ振りするってことなのだろう。


「風紀、あのね……」


 そっと、明日香が手が俺の手を握る。急に、鼓動が速くなってきた。さっきまでは大丈夫だったのに。


「え、もしかして――」


 明日香の言葉は、最後まで聞こえなかった。


ただ、呆れる明日香の顔を見るのも懐かしい。その懐かしさが、なんだか嬉しい。


 地面に倒れる感触と共に、俺の意識は途切れた。













 ごらんくださった皆様、本当にありがとうございます。

 まだ、Finalの続きはありますが、とりあえずはここまで。

 4月に入ると、Tokiはなんと社会人になります。新社会人なので、ちょっと忙しくなると思われます。

 本当は、完結まで持っていきたかったのですが、Tokiの実力と時間の少なさでは出来ませんでした。申し訳ございません。

 とりあえず、ここでお話が区切りつくので、いったん終了とさせていただきます。

 次回からは、明日香と風紀の協力のもとお話が始まります。Afterでバッドエンドを悲しまれた方、本当に申し訳ございませんでした。ひっつきましたよ! いぇい!

 展開が早すぎるような気がしますが……久しぶりに手をつけたので、大目に見てあげてください。


 では、また更新するときまで。

 ……感想、評価お待ちしております。orz

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