楽しい、村生活②
第9章
「芋が収穫できます!」
「どういう事??」と思っていると、女の子たちが、川で洗って来た芋を持って現れた。
「お父さん、すごく大きくなっていたよ!」
「え?あれは、先月、植えた物ですか?」
「まさか、先々月の物でしょう。後2、3週間くらい置いても良かったかも知れませんね」
(あ~~それ、おばさん達の芋だ。それも、余った芋が成長したんだ)
「それに、ホーリーさんは、窯を利用して皿などを作る仕事をしたいのですよね?」
「まぁ、趣味と言うか、10年くらいの計画になると思いますけどね。素人ですし‥‥、土魔法が使える様になってから始動する予定です」
「実は、村の子供達は、このような窯を見た事がなく、勿論、私達もですが、何かお手伝いできればと、みんなが期待してまして‥‥」
「みなさんのご期待には応えられませんよ。ほんと!商機はありません!!趣味ですからね‥‥」
「‥‥‥」
不穏な空気を感じたアデルが「お父さん、お芋どうする?」と聞いた。
ホーリーが、
「とにかく、食べて見ましょう」と提案する。
みんなは外に出て、芋を蒸し始める。自前の大鍋に、簡易的な蒸篭を作ってもらい芋を適当に切って入れる。
この方法はどうやら一般的ではないようで、大人たちは驚いていた。
「鍋で煮ないのですか?」
「ええ、蒸した方がホクホクして美味しいですよ。それにいっぱいできますし」
蒸し芋は人数分出来上がり、塩を振ったり、バターをのせたりして試食会が始まった。
「美味い、今まで食べてた芋は何だったんだ!!」と村長が大声で話していると、ケルフとプレジーが、ウサギを狩って戻ってきた。
二匹のウサギを見てホーリーが青ざめていると、ケルフはサッと後ろに隠してくれた。
「二人とも、外にも水瓶があるから手を洗って来て」とホーリーは促す。
「ああ」
なんとも不愛想に二人は手を洗い、村長から手渡された芋を食らう、そう、彼らは食らうのだ!
「うっ、美味いな」
女の子たち3人はすでに食べ終わっていて、二人のお芋を恨めしそうに見ている。
「なんだ!この芋、何が違うんだ?」
そんな事言われても、農業をしたことない私は、まったくわからない。
しばらくの間、村長たちはじっと考えてるようで、私が「芋の種類が違うのでは?」と言うと、全員が首を横に思いっきり振った。
あまりにも長い沈黙に耐え切れず、
「では、私が居る間に植えて、最終的に冬前に収穫するのはどうでしょうか?私が滞在する間は、お互い隣人開放を結びますか?隣人開放ですので、商人の侵入は許可できませんが‥」
「いいのですか?」
「はい、私もカーズ村を通った方が、時間短縮になります」
その後、カーズ村長と色々な取り決めを行って、借地代は、色々な労働や食料で返してもらって、ウサギは必ず川で処理して来る事も条件に入れた。ケルフの今後は、彼が何をしたいかで、学校生活が決まると助言もした。
ちなみに、出入り口は、朝から日没までの開放にして、浴槽の安全も確認し、非常時は、木や鍋を鳴らす事になった。
やっと眠りにつき、貴重な2日目も早朝から目覚めた。嫌、目覚めるしかなかった、外がうるさいからだ。
「早い、農家の皆さんの本気度は凄い!」それでも何とか二度寝をして、ゆっくりと起き上がり、近くのキッチンまで辿り着き、お湯を沸かしてお茶を入れる。
パジャマのままお茶を飲んでると、玄関脇の窓からアデルの顔が見える。アデルの身長が妙に高くなっているように思えて、玄関を開けると、しっかり、台を作ってもらったようだ。
「おはよう、アデル、早いね」
「うん、お父さんたちは、2時間前から働いているよ。はい、朝食だよ」
「ありがとう、これからは、この台に置いておいてね」
「わかった。また来るね~~」アデルは急ぎ足で皆の所に向かって行った。
いやいや、来なくてもいいよ。ゆっくりしたいからとは、言えない。ご飯は大切だ!
アデルのお弁当を持って、室内に戻ると、昨日の芋を持ち、バケツに水を汲んで、アレクサンダーの所に向かう。昨日は休めたようで、機嫌がいい。
「アレクサンダー、今日は、少し走ろうか?村の点検だよ」と言うと嬉しそうだ。
家に戻り、食事を取り、身支度をして、アレクサンダーに水汲み台車を取り付けて、出発すると、ケルフとプレジーが追っかけて来た。
「水汲みに行くのか?」
「そうよ。1週間分は汲まないとね」
「手伝うよ」
「ありがとう。助かる、みんなすごいね、草を毟りながら一斉に耕すんだね」
「ああ、男たちは慣れてるからな、それに、ここの土は、いい土だからやりがいがあるって」
「そうなんだ」
3人で話しながら川まで来て、二人がリレー方式で水を荷台ひ乗せてくれる。楽だ~~
「ウサギの肉は食べた?」
「まだ、調味料に漬けてるのお昼にでも焼いて食べるね。ありがとう」
「まだ、いる?」
「う~~ん、果物の方がいいかな」
「あっちの方に、ぶどうが残っていた。こっちには、柿の木と栗の木があったから、もう少しで食べれるな」
「そう?栗は好きだわ、楽しみだ」
「来月も来るだろう?」
「ええ、来月には食べられる?」
「どうかな‥‥」
「再来月は大丈夫じゃねぇ?」
3人は食べ物の話ばかりして、収穫計画を立てるが、2人は村長たちに呼ばれ、水瓶に移し替えると別れた。
「じゃ、アレクサンダーと見回りに行って来るね~~バイバイ~~」
◇◇◇◇◇◇
アレクサンダーとの散歩は、至福の時間で、走っては喜び、止まっては喜ぶ。大きな木の下でお菓子を食べたり、昼寝もして家に戻る。
さあ、今度こそ、家の中のお片付けだ。鍋を出し、調味料を並べ、食器も出す。この世界は調味料は豊富で、他国との貿易も容易いらしい。貴重な砂糖も低価格で手に入れられる。街のレストランは入った事はないが、庶民の出店は良く利用しているので、どこも美味しいと思う。
カーズ村の差し入れ弁当も美味しいが、ここでしかできない料理にも挑戦したい。
「まぁ、当分は芋料理だけどね‥‥」
昨日蒸した芋の欠片がごっそり残っている。これを糸で薄く切ってザルに並べる予定、ザル作ることから始める。
大工さん達が残して行った建築資材は、大きな食堂の一角に揃っていて、山ぶどうの蔓もある。彼らはこれで何をしたのかはわからないが、とにかく豊富だ。ざっくり編んで、どんどん干して行こう!
5つのテーブルに大きな不揃いのザル、とにかく井桁にして形を作る。意外に可愛く出来て木の実とか飾ったらインテリアになったりして?野菜の収穫にも使えそうだ。
芋を削いで、並べて、残りは鶏肉と一緒に炒めて昼食にする。朝から働いてお腹がいっぱいになって、昼寝をしたら、もう、夕方だ。
目が覚めた頃、カーズさんの奥さんのリリーさんが、やって来た。
「これは、何?」
「芋ですよ。街に帰るまで干して置いて持ち帰ります。母へのお土産です。結構、日持ちもしますよ」
「そ、そう、お昼はウサギを食べると聞いたから、これは夕食にどうぞ」
リリーさんが持って来てくれたのは、牛乳と卵とパンや果物、獲れたての野菜、豆、色々だ。
「こんなにもらっていいのですか?牛乳まで‥‥」
「ええ、たくさん食べて。ホーリータウンが出来て、私達は、とっても助かってるのよ。土地を借りられて収穫量が増えるでしょ、それに、男衆が街に出稼ぎに行かなくても仕事があるし、珍しい果物も収穫させてもらって、子供たちも大喜びよ」
「それに‥‥、ケルフの事を相談できる人が、今はいないから、どうしていいかわからなった」
「‥‥カーズさんの村に魔力持ちはいないのですか?」
「魔力持ちは、街に住むようになるのよ、お給金が貰えて、いい暮らしができるのだから、当然と言えば、当然よ。でも、ケルフが村を継がないと、村は、存続できないかも‥‥」
「大丈夫ですよ、ケルフが土魔法を習得すれば、ホーリータウンに頼らなくても農地は広げられると思いますよ。水魔法もあれば、水まきは楽になるでしょうし、街まで転移する事も、可能になるかも知れません」
「‥‥できる事は、魔力量によって違いますから、検査後に知り合いの文官に聞いてみましょうか?」
「本当?」
リリーさんは、ホーリーの手を取り、何度も頭を下げる。ケルフを、思いっきり愛しているのが伝わる。多分、カーズさんとリリーさんは、何度も何度も話し合い、ホーリーに相談すると決めていたのだろう。
愛されてるケルフが少し羨ましい。




