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楽しい、村生活①

 

 第8章


 その日、帰宅すると、ミルサーチは留守だった。彼女の移動魔法陣を利用できないと、荷物は自分で運ぶ事になる。


 「留守か‥‥」と呟くと、ホーリーは、床にドップリ座り、意識が飛んで、その後、2日間は寝込んだ。


 寝込むと手持ちのお金がなくなり、3日目には代筆屋に出勤し、帰りには奉納もした。日銭のお金を工面したが、仕事終わりに、布を扱う専門店に足を運び、大量の布を購入して帰って、モチベを上げる為と言い訳しながら、カーテン、ベットカバー、クッションなどの作製に入った。


 その間、ミルサーチは不在のまま、ホーリーは勤勉に過ごし、アレクサンダーとホーリータウンへ向けて出発した。


 出発前に、

 「アレクサンダー、お願いよ、私をホーリータウンに連れて行って、お願いします」とお願いしたら、アレクサンダーは久しぶりの遠出が嬉しいようで、元気いっぱいに『ヒヒィ~』と鳴いた。


 領主門が開門されると、人々はそれぞれの方向に進んで行く、ホーリーはアレクサンダーの箱馬車に、たくさんの荷物を詰め込み、魔馬のアレクサンダーは、その砂ぼこりの中に紛れ込んだ。


 途中では、アレクサンダーと一緒に昼食を取り、水分補給も済ませ、何とか、ホーリータウンまで辿り着いた。


 今回の通った道は、領主様が許可を出している川沿いの有料道で、領民ならば格安料金で通れるが、他領の者は高額に設定されている。まぁ、何か所かある村を通行出来れば、時間は短縮されるが、お互いに結界がある為に信用がないとできない事だ。


 「カーズ村の村長さんに許してもらうだけでも、ちょっとは違うのかな?でも、そうすると、お互い様で、カーズ村の人達もこっちに入ってこれるんだよね‥‥、う~~ん、少し考えよう‥‥」


 夕暮れに到着したので、急いで、荷物を運び込む。


 持ち物は、布団一式、スリッパ、魔石の光ランプ、食料、キッチン用品等、諸々だ。到着後は、お風呂にも入りたいし、洗濯もしたい、やりたい事がいっぱいあるが、まずは、家の中の点検だ。


 「特に変化なし、貴族学校では、家に結界を張る魔術も教えてくれるので、家に結界を張ったら、カーズ村との交流も出来るかも‥‥」と考えながら、キッチン周りに荷物を置き、アレクサンダー専用の馬小屋に水と餌を運び、魔力も与えた。


 「おやすみ、アレクサンダー、お疲れ様です」


 その後は、軽く食事をして、入浴する。水瓶から取り込んだ水を魔石で沸かし、慣れない浴室で洗濯をして、そのまま浴室に干した。


 「疲れたよ~~、後は、明日、お日様に当てればいい、さぁ、私も寝よう、おやすみなさい」


 初めてのお泊りは、泥のように眠り、ドキドキ感は全くなかったが、早朝の、大声で飛び起きた。


 「ホーリー、来てる?来てるなら、こっち、こっちに来て~~~、ホーリー!ホーリー!!」


 その声は、この前の男の子の声と、隣にいた小さな女の子の声だった。


 「ど、どうして、私の到着がわかったの?」


 ホーリーは着替えて、声のする方向へ向かうと、この前、来ていた小学生くらいの子供たちが5人も立っていた。彼らが立っている場所は、ホーリーの家から200mもない、騒音の無い世界では、子供の声がこんなにも通るのだと、感心したのと、その距離の近さにも驚いた。


 「どうしたの?こんなに早く、どうして、私が来たってわかったの?」

 「夜の見回りのおじさんが、朝の仕事前に村長に報告してたから‥‥」


 「ここは、カーズさんの村なの?」

 「そうだよ、ホーリーの家が見える様に切り開いたんだよ」


 (なんて、余計な事を‥‥)


 「昨日の夜、お姉さんの家に、明かりが点いたって、おじさんが言ってた」


 ここから見える場所は、ああ、浴室だ!確かに昨晩は、浴室に2時間は滞在していた。中まで見えるか夜に確認しなくては!乙女の危機だ。


 「ねぇ、入ってもいい?」


 「‥‥まず、名前と年齢を教えてくれる?」


 5人の子供は、カーズ村長の息子、ケルフ(魔力持ち)

               娘、アデル

         ケルフの従兄弟、プレジー

         ケルフの従妹、 ミル

         アデルの友達、 リウス


 「男の子は10歳で、女の子はほぼ8歳なのね?」


 平民の女性は、年を明かさないらしい、そうする事で色々と、自分を守る為だそうだ。貴族には戸籍が存在していて、国や領主が管理しているが、平民にそのような制度は存在しないようだ。


 「私は、ホーリー、8歳よ、よろしくね。とりあえず家に行きましょう。親御さんには言って来た?」


 「当然!早く、行けって言われた」

 「???」


◇◇◇◇◇◇


 ホーリーは、魔石のコンロで、差し入れのスープを温め直して頂いた。

 「美味しい、生き返るわ、ありがとう!」

 「いいよ、それじゃ、畑を見て来るね」と、5人は急いで畑の方に向かった。


 「???畑なんてあった?」


 彼らの目的は、家の点検、この前の畑の成長を見る事、ホーリータウンの果物の収穫、家を出てからは、男子チームと女子チームに分かれて行動していた。その間、ホーリーは、洗濯物を外に干し、部屋の掃除などをし、持って来た食料の保存方法を考えていた。


 「小麦粉はここ、砂糖はここ、塩はここで・・」と考えていると、また、あの場所から、大きな音が聞こえてきた。誰かが、木を叩いて音を出している。


 「お姉さん、多分、父さんです。今、行けますか?」とアデルがドアを開けて告げる。

 「カーズ村長?」


 カーズ村長は、あの場所に立っていた。お供に二人もいる。(入口とは認めたくない)

 「ホーリーさん、朝から申し訳ない。村の連中は、あなたが来るのを楽しみに待っていたからね‥‥」


 「はい?」


 「実は、この前、ここの土地を訪れてみて、驚いた。まず、土がいい、そして果物が豊富、後、ウサギも生息しているし、川の水も汲みやすい、ほら、大きな岩が平らで安全に水汲みができるでしょ?」


 カーズ村長たちを家に招き入れ、お茶を出す。


 「先月の工事の時に、初めてこの土地に入りました。我々は、ここはずっと森の一部と思っていましたので、所有者が現れるとは思ってもいませんでした」とお供の一人は言う。


 (商人は?‥‥商人は通行していたと聞いたが、隣村の人たちはこの場所を知らないの?)


 ホーリーが考え込んでいると、カーズ村長が真剣な顔で、

 「ホーリーさん、是非とも我々に、この村の開拓をさせて頂きたいと思いました」

 「???開拓ってどのようにですか?」


 「畑を作る予定はありますか?」

 「ありません」

 「果実を増やす予定も‥‥」

 「ありません」


 「窯での試作を始める予定も‥‥」

 「まだ、ありません‥‥」


 「窯を燃やすのは冬の間だけと思っています。春から秋は制作と乾燥を行い、冬に、火を入れたいと思っていますけど、まずは粘土探しで、色々な事は貴族学校に通ってからになると思います」


 「やはり、貴族学校にご入学されるのですね?」

 「多分、そうなると思います。貴族学校で家に結界を張る魔術を覚えたら後なら、お互いに行き来する事も出来ると思いますが、今すぐは難しいと思います。ーー決して、皆さんを信用していないのではなく‥‥」


 「わかります。いきなり言われてもそうでしょう。‥‥‥、あのぅ、ケルフはどうでしょうか?」


 「はい??なぜ、今、ケルフ?」


 「ケルフには魔力があると、この前の文官さんから言われました。その後、冬前に、神殿で魔力検査を受ける様にと通達が来たのです。ケルフも貴族学校に行かせた方がいいのでしょうか?」


 「‥‥私もまだ通っていないのでわかりませんが、神殿の魔力検査の後、領主様の推薦で行くようですよ、その後、奉納も習い、奨学金も貰えるのではないでしょうか‥‥」


 「行った方がいいのでしょうか?」

 「それは、魔力量によって、決まります。事情があれば免除されますが、私の場合は、領主様にお世話になってますし、母も健康を取り戻しつつあるので、強制的に行く事になると思います。それに、陶芸の為に、土魔法や水魔法、ここでの生活に役立つ魔法を覚えたいと、今は、思ってます」


 「魔法を覚えても、ここで暮らすのですね‥‥」3人は嬉しそうにホーリーを見る。


 「ええ、‥‥ケルフは、農業を継ぐのですか?」

 「我々一族は世襲制で、多分、ケルフはここを継いでくれると思います。私にお金があればもっと土地を広げて子供たちに残したかったのですが、それも出来ず、実は、働き手のケルフが抜ける事も痛手です」


 お供の人が、ソワソワしながら、話を戻す。

 「今、我々は、商人たちへの対応が一番の仕事で、例年ですと、外の仕事に出たりもしますが、先月、こちらの手伝いをさせて頂いたので、今年は、懐も温かく、外に行く必要もありません。それに、土を耕し、作物を育てる事が、我々の生きがいです。それで‥‥ご相談なのですが、ホーリータウンで植え付けをすれば、冬になるまでには芋類が収穫できると思いますが、どうでしょうか?」


 ここで、芋を作りたいって事?そんなに農業好きなの?



              

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