ホーリータウン④
第7章
窯づくりの為の3日間が遂にやって来た。その為に、グリークさんは、ホーリータウンの隣に位置している村の村長さんを紹介してくれた。
ホーリータウンと同じ広さくらいの村が、隣には存在しているらしく、今回は、その村から人足を調達したようだ。グリークさんの仕事の凄さが良くわかる。
「ホーリー、こちらはカーズ村のカーズさんで、村長です」
「カーズです。村と言っても親戚や知り合いで集まって村を作っているだけで、ただの農村ですよ」
「カーズ村は、優良村ですよ」とドットが、こっそり教えてくれる。
「今の時期は、種まきも終わって追肥と水まきだけだから、人足を借りられた。村で待ってくれているから、先に紹介しておこうと思って」
「ありがとうございます。これからも、よろしくお願いします」とホーリーは頭を下げる。
「内装業者は、この前の人足から選んだ。きっと、ホーリーの指示通りに働いてくれると思う」
「では、行きましょう」カイルが催促する。
◇◇◇◇◇◇
久しぶりのホーリータウン、秋に近づいて、過ごしやすい。本当は、この1か月の間にアレクサンダーと来たかったが、決定事項が多すぎて時間を作れなかった。
まずは、雨どいの説明をして、雨水が集まるとこの前の水瓶に入り、それを水道にする考えを伝えると、特許の申請が必要になった。ホーリーの名前を出したくなかったので、グリークさんがすべての責任を持つことで、合意した。
貴族学校に行けば、水は大気から集められて、魔石を投げ入れればお風呂にも困らないらしいが、水道に慣れた人間には不便に感じるものだ。
その後は小石集めだ。作業部屋の床下は一か所だけ穴を開けている。窯ができたら、レンガや小石で道を造る予定で、それまでは、大きな石を引いて土を避けながら歩く、床下の暖房の為にも、泥はね予防にも、小石が今は欲しい。窯でレンガが上手に焼けるかはわからないが、魔法で作る方法を、貴族学校で探す予定だ。
この世界の不便な日常生活の為、水魔法と土魔法はぜひとも受講したいと、思うようになった。
内装は、主に作業部屋の内装の説明に手間取った、窓の位置を指示した時に言ったはずなのに、もう一度説明する。
「床の上に60cmくらい大きな収納を作るのですね?窯が見える小窓前には壁一面にカウンタ―を作って?」
「反対側の壁はすべて棚にするでよろしいですか?」
「大丈夫です」
「それにしても、お一人で住むには、3つの窯と大きな作業部屋ですね?」
この作業部屋の事は、何度、説明しても、誰も、納得しない、陶器やレンガ等を売って生活したいと、力説しても無駄なのだ。
魔力持ちは、貴族絡みでいい仕事に就けるからだ。肉体労働をする必要がないらしい‥‥、それは魔力持ちの平民は、貴族学校に入金しても、卒業する必要もないらしい、お金になりそうな魔法を習得したら、退学するのが一般的で、文官になるのは下級貴族以上の身分が必要だからだ。
そして、ホーリーは、奉納でお金を得ているし、街で代筆屋の仕事もあるから、グリークさんでも理解できないらしい。
◇◇◇◇◇◇
ホーリータウンに到着してからは、グリークさんと内装業者に指示をだし、窯担当の責任者に現場を任せ、アレクサンダーに荷車を取り付け、カーズ村に村民を迎えに行く。
人足たちは、両方の村の境界に居て、村民全員に迎えられた。
「はじめまして、隣のホーリータウンのホーリー・ペーターです。よろしくお願いします」
村人たちは、温厚で、ホーリーと同じ年頃の子供たちも、珍しそうにホーリーたちを見ている。
カーズ村長の奥さんが、思いっきり歓迎してくれているらしく、
「なんて小さい村長でしょう?本当に一人であの広い場所に住むの?」
「住むのは、大人になってからで、病気の母が療養する為に買いました」
「そう、いい子ね。今回は、家の村の人足を使ってくれてありがとう。しっかり働くように言ってあるからね」
「小さい村長さん、私たちも行っていい?大きなお家を見てみたいの!」と子供たちが聞いて来る。
「いいですよ。でも、行き帰りは必ず大人と一緒にして下さい」
「は~~い!」と返事をして、3歳くらいの子供までもカーズ村の荷車に乗せられて出発した。
今回、村の女性たちは参加しない。町の女性と村の女性は領分を守っているらしく、町の女性がいる場合は、遠慮するらしい‥‥
すでに、町から持って来た小石が撒かれ、カーズ村からの小石も追加された。
人が歩く即席の小道が出来た後に窯を作る。燃焼室と3つの窯、最後は煙突になる。耐火煉瓦で丁寧に作ってもらう、魔法の有る世界なので、現代版とは少し違うが、魔法がなくても焼ける様に、これから研究して行く予定だ。まぁ、失敗しても時間はたくさんあるのだから‥‥
「不思議な形ですね」と、町の人足、村の人足、関係なく同じ感想だ。きっと、この世界にはないのだろう。
昼食は、それぞれのお弁当を食べて、午後からは子供達と水汲みに向かい、おばさん達が夕食の準備を始めると、村人たちは村に戻る。
夜は、いつもの馬車で寝泊まりして、町の人足たちは、家の中で雑魚寝だ。
次の日は、寸法を測り、壁に家具を作ってもらう。自分専用のテーブルや椅子、ベットにはこだわりがなく、この世界の物で注文したが、ベットの頭の上に棚だけはつけてもらった。
「色々な物を置けて便利でしょ?」と言ったが、家具職人の親方は納得していないようだった。まぁ、キッチンの吊戸棚も、中央に置く大きな薪ストーブも彼にとってはナンセンスなのだろう。
この世界の物を取り入れながら、ちょっぴり現代風も加えたホーリーの家は、何とか仕上がり、翌日の午前中に、窯が出来上がった後に、馬車に乗せていた荷物を少しだけ家の中に運び込んだ。
母が大切にしていたタペストリーとベットに引く布団、鍋とやかん、一人分の食器とカトラリーその他もろもろを運んでいると、女の子が話しかけて来た。
「お姉ちゃん、こんな大きなお家に一人で住むの?」
「そうよ。お母さんの病気が良くなって、ここに引っ越して来れるまでは一人よ。でも、毎月、1回は泊まりに来れそうなの、その時は、また、遊びにきてね?」
「うん、また来る」
ガテン系の人足たちが、耐火煉瓦を積み上げている間、持参してきた野菜の苗を植えようとしていると、子供のリーダーの男の子が、
「そんなんじゃ駄目だ、貸して見ろ!」と言って手伝ってくれた。他の子供たちも、一斉に、慣れた手つきで畑を耕し、どんどん植えて、水までもあげてくれた」
「ありがとう。これで、来月は食べられるかな?」
みんなはポカンとして、その男の子が、
「1か月で食べられる野菜はないから、3ヶ月後だなぁ、でも、あっちの芋は食べられるかもな‥」
「あぁ、そう?あれは先月おばさん達が、植えて行ってくれたの、じゃあ、来月はお芋は持ってこなくていいのね。教えてくれてありがとう」
「来月、また、来るのか?」
「そうよ。馬車で来るの、ねぇ、カーズ村には食料を売っている場所はある?」
「冬までは、商人が立ち寄る市場があるけど、冬の間は村も、宿屋意外は封鎖になる」
「そっか、冬まで数回は来たい、カーズ村は商人に開放しているんだね。良かった。それなら何とかアレクサンダーと来れそう。教えてくれてありがとう」
「ここは商人達に開放しないのか?」
「女子供の土地よ。しないわ」
「じゃあ、俺たちも入れないのか‥‥」
「私が居る時は隣人開放もいいかも‥。でも、夜は村に帰ってね」
「ああ、親が心配するからな、じゃあ、また、明日‥‥」
「ええ、またね」
3日目の朝、棚が出来上がったら、5テーブル、各テーブルにそれぞれ4脚の椅子、それから薪ストーブを囲むようにカウンターテーブルを作ってもらう、そのカウンターテーブルはキッチンカウンターに続いている。
「燃えないのか?」と言う声が聞かれるが、1m以上離れているので、多分、大丈夫だと思う‥‥
そして、親切な大工さんが、薪置き場まで作ってくれた。ありがとう!
「完成です。みなさん、本当にありがとうございました」ホーリーは、大勢の人たちに感謝の言葉を述べて、家づくりを終えた。
さぁ!ホーリータウンの完成だ!




