ホーリータウン③
第6章
今日からは、ホーリーが直接指示をだす。ホーリーの面倒な注文を聞く大工は5人、仲介にはグリークさんとカイルとドットに、シママも加わる。
「先ずは、貼って頂いた床の一部を、くり抜いて欲しいです」
「どうゆう事だ?」
「床にドアをつける感じですかね‥‥、基礎で仕切った場所は下に部屋があると思って頂いて‥‥」
「ああ、そうか、下に物を置くんだな?」
「はいそうです。その為に地面も固めて頂きました」
「玄関から入ってすぐに食堂のような場所と、でっかいカウンターキッチン、奥には階段と寝床、キッチン横に薪ストーブでいいのか?」
「はい、キッチンは将来の為ですし、冬は、魔石の節約の為にストーブで何か作ります」
「トイレと風呂の位置が決まったから、下水の工事に取り掛かるか」
「お願いします」
「2階はどうする?」
「2階は、適当に残った材料で区切って下さい。何年も使わないと思いますし、母が2階に行く事もないでしょう」
「じゃあ、2階は、皆んなにおまかせだな、1階の床下に入る為の階段は、どうする?」
「できたら、4か所すべてにお願いしたいです」
「了解した。じゃあ、水汲みに行っていいぞ」
◇◇◇◇◇◇
今日は本格的に食料調達だ。明日の昼にはここを出発するので、何とか食材を確保したい。
「シママ、今日は馬車で移動するから、馬車に乗る?」
「イヤ、馬車だと外の様子が見えないから、歩くよ」
「小さい窓があるんだよ」
「小さすぎるよ。あれじゃ、食べ物を探せない」
「まあね、灯りとりに付けてもらっただけだからね」
「しかし、魔馬が箱を引いているの初めてみたよ」
「箱って、その言い方‥‥」
「じゃあ、ゆっくり行きましょう。そう言えば、家から小麦粉を持って来ていたのを忘れてた。おばさん達に渡してから行きましょう」
おばさん達に大袋の小麦粉を渡すと大喜びされた。やはり、思いのほか食材不足だったようだ。
「シママ、今日は二人だけだけど、頑張ろうね」
「うん、かなりまずい状態だもんな‥‥」
シママは歩きなので、ゆっくり探索をはじめると、意外に、薬草や芋、菜の花のような植物、それに、山ぶどうも見つけた。
「シママ、これはどうするの?食べられる?」
「これは、乾燥させてお茶にするんだよ」
「へー、良く知っているね」
「母さんが薬師なんだ」
「すごい!シママも薬師になるの?」
「考え中、ホーリーの家を見たら、建築家もいいかなって思えた。あの家、でかくて面白いよな」
「来月は内装と、窯づくりでしょ。来月の方が面白いかもよ」
「来月か‥‥、来月は学校なんだよな‥‥」
「シママ、学校に行っているの?」
「これから入学するんだ。平民学校だけど、仕事をしながらでも通える。いい学校だよ」
町の子供は通えるけど、郊外の子供たちはどうするのだろう?
「農村の子供はどうするの?」
「遠くから通う子は、町の親戚を頼るか、たまに通ってもいいらしいよ。出席は自由だから、でも、家の親はうるさいから休むと怒られる」
「そうだよ、休むのは良くないよ」
「平民でも学校にいくんだね‥‥」
「ホーリーはどうするの?」
「お母さんが良くなったら考えるよ」
二人はおしゃべりしながら、たくさんの食料を馬車に積んで、帰りはシママも、箱馬車に積んでお昼前には戻ってきた。
すでに、食事を終えている人足もいたが、それでも積んできた食材は喜ばれた。
「今日中にほとんど終わりそうだが、窓の位置は設計図通りで良さそうか?」
「はい、大きな窓は全面だけで、後は、小さな窓でいいです。樹脂窓は高いし、大きな窓は心配ですから、雨戸だけは丈夫なものをお願いします」
人足のおじさんが、それを聞いてしっかりした雨戸を取り付けてくれた。夕方にはほぼ家が出来上がり。最後の夜は、お酒が振る舞われた。
まずは、新築の家に献上し、後は、皆さんでいただく、小麦粉が手に入ったおばさん達は、たくさんのパンやピザを焼いたりして、最後の夜は、けっこう豪華な晩さんで締めくくった。
出発の日は、片付けと、来月の予定の点検、おばさん達は、勝手に畑を作って芋を植えていた。来月にまた会えるメンバーはそんなにいないだろうが、みんなと無事に戻れる事は嬉しかった。
「さぁ、戻ろう、お母さんが待ってるよ」
◇◇◇◇◇◇
「それじゃあ、領主様の馬専用舎にアレクサンダーを預けてくるわね。さようなら~」
「それでは行きましょう」
3人は馬に乗り、領主邸に向かった。馬専用舎の馬番にアレクサンダーを預けた後、馬車の中の掃除をして、荷物をまとめ、ついでに奉納もして小銭を稼ぎ、療養所に向かった。
神殿の療養所でミルサーチは、驚くほど回復していた。
「お母さん‥‥どうしたの?」
療養所の所長さんは、とても親切な方で、お母さんの為に神殿から神官を派遣してもらったようで、一人で歩けるまで回復していた。
神官の治療が終わると、丁寧なリハビリが施され、ここまで回復したと言う事だ。
(お母さん、余程ここの生活が嫌だったのか、来月はここに居たくないみたいね‥‥)
「ホーリー、今まで、迷惑かけたわね。こんないい療養所に入れてもらって、こんなに回復したわ」
「お母さん‥‥」
二人は抱き合い肩を揺らして笑っていた。
「とにかく戻りましょ。流しの馬車を待たせてるから」
母親と一緒に所長に頭をさげ、荷物を馬車に詰め込み、急いでボロアパートに戻った。出かけた時は、何人も介助人を雇ったが、帰りは二人で戻って来た。
「お母さん、お風呂に入る?」
「ええ、入りたいわ。体が不自由な生活を1週間もしたから‥‥」
まぁまぁ、そうでしょうとも、びっくりするくらい回復しちゃって、また、狙われたらどうするのよ!
彼女は現在、滅亡した某国の皇女と言う設定、今は、自由気ままに色々な国に行けるらしい。そんな美味しいチート能力を持っていながら、この国をホームランドにしているには、何か理由があると思ってる。お互いの仕事内容は秘密の為、聞けないが、‥‥興味はある。
ミルサーチの後にホーリーも入る。結局、一度も川には入らなかったが、馬車の中でお湯をもらって拭いていたので、特に不自由は感じなかった。
ミルサーチが、どこかから料理を出し、それを食べながら聞く、
「そんなに療養所の生活は辛かったのですか?」
「トイレがね‥‥」
「クリーンで切り抜けなかったの?」
「バケツに溜めるのよ‥‥、それを処理するシスターもいて、メンタルが持たなかったの‥‥」
ミルサーチは魔法が使える。貴族学校で習えばホーリーも使える様になるらしいが、まだ、ホーリーは原始状態だ。
「だから、所長さんに、ちょっと助けてもらったの」
領主様からの紹介だから個人情報は所長に伝わっているはずで、少しでも魔力回復が望めたので、神官の派遣も許可が下りたのだろう。
「来月から、2、3日の外泊はだいじょうそう?」
「大丈夫よ、貴族学校へ行くまでには、外にも出て、奉納にもいけるくらいに回復する予定よ」
「すいません、ありがとう、助かります」
「じゃあ、そうね、食後にあなたの家に行ってみたいわ」
「え?今日?」
「今後の為よ」
◇◇◇◇◇◇
その日の午後、まだ太陽があるうちに2人で移動して、ミルサーチは色々な所に、魔法陣を仕掛ける。
「魔法陣の意味はわからないけど、他の魔術師がきたら怪しまれない?」
「私の魔法陣は他国の物だし、ちょっと古いのよね。それでも安全は大切。あなたに命の危険がおとずれたら、必ず、この場所に戻るようにしておくから、安心しなさい」
「ありがとう。でも、貴族学校は危険なの‥‥?」
「‥‥‥、ブレスレット出せる?」
ホーリーは、土地所有者のブレスレットをミルサーチに渡し、保護魔法をかけてもらう」
今回の目的は、この土地に保護魔法を施す為で、その後は、広いウッドデッキで、二人でお茶を楽しみ日常へ戻った。
ホーリーは、その日の夜、静かな部屋で、眠りに落ちる寸前に、今日のミルサーチを思い出した。
「‥‥‥、まさかね、彼女は母親役が得意だからよね」




