ホーリータウン①
第4章
初めての移動は、少し酔って、ぐったりしたが、体が資本の人足たちはいち早く仕事を始める。
領主様が管理している起点は、意外にも小さな石像で、その石像から距離や角度を測定して家の位置が決まる。勿論、その為に、見習い文官二人が同行しているのだが、彼らより慣れているのは、グリークさんだ。残りの人足たちは、今晩の為に土地を整地している。
一応、建築前に役人が点検に来て、土魔法が使える魔術師がある程度は整地してくれたらしく、伐採や草むしりから始める必要はないようで、整地には時間がかからない。
「ホーリー、建物の位置を決めたい。磁石ではこっちが南になるが、南向きでいいか?」
「はい、お願いします。石を1階の間取りと同じに組み立ててもらっていいですか?」
「面倒だけど、そうしよう。珍しい建築方法で楽しみだ」
「強度は保てそうですか?」
「あぁ、砂と水と粘土を混ぜて石を固定するから大丈夫だ」
「そんな方法があるのですね」
「固まる砂が発見されてから王都でも使われてらしい、今回、試しに仕入れて来た。ホーリーの資金のおかげだ。今日は、整地が終われば、昼食でその後は石積みになる」
「わかりました。私は、邪魔にならないようにホーリータウンを散策してます」
「おい、必ず、シママを連れて行け」
「はい、わかりました」
大人の邪魔にならないように、シママと二人でその場を離れる。
「ここは、涼しいね?」
「うん、僕もそれは思った郊外はこんなに気持ち良くて涼しいんだね」
「こっちにいってみる?生えてる草も違うし、ほら、実がなってるよ。ホラ?」
「これって、ラズベリー?かしら?」
ホーリーはパクリと食べて、「酸っぱい!!」と叫ぶ。
「ホーリー、なんでも食べてはいけないよ。ここで倒れたら大変だからね」
「あまり美味しい食べ物がなっていると、野生動物が食べに来るかと思って、でも、これなら来なそうだわ‥‥」
「水の音がするから、川を見に行く?」
「いいね、バケツを持ってくるから、待っていて!」
バケツを取りに言ったシママは、大量のバケツを持たされて戻って来た。
「人足のおじさん達に、昼までに水汲みの仕事を任された。戻らなければ良かったよ」
二人は大量のバケツを見てため息をついた。
「仕方ない、遊びに来たのではないから、水汲み頑張りましょう」
その後、二人ですべてのバケツに水を汲み、人足が簡単に作った荷車に乗せて、アレキサンダーに運んでもらった。
アレキサンダーは不機嫌そうだったが、この量は、子供では無理だったので何とかお願いした。昼前に、現場に戻ると、人足たちは喜び、大きな水瓶に水を流し込み、綺麗な石も入れて蛇口も付けてくれた。水瓶の構造がどうなっているかはわからないけど、これで飲み水になるらしい。
「明日も頼むな」と言われたが、返事は濁した。とにかく疲れたからだ。
ホーリーは、そのまま馬車に入り、水筒の水を飲み、持って来たお弁当を食べて寝てしまった。シママが様子を見に来た時は、すでに夢の中で、いびきをかいて寝ていたらしい。
3時頃に目が覚めると、外で石を積み上げている音が聞こえた。
「シマッタ!寝過ごした!」
馬車から起きると、石積み作業は終盤に差し掛かっていて、人足のおじさんはテント貼り、人足のおばさんは夕食の支度を始めていた。
「ホーリー、おばさん達が一緒に料理してくれるから材料を渡さないか?」
グリークさんは、ホーリーの体力の無さを目のあたりにして、提案してくれた。
シママが
「ちょっと水汲みしただけで倒れるようでは困るらしい‥‥」
「倒れたのではなく、ちょっとお昼寝‥‥しただけです」
グリークが済まなそうに話す、
「明日は水をいっぱい使うから、アレクサンダーが、いや、ホーリーが必要なんだよ。皆の食事は嫌かい?」
「いいえ、助かります。食材を提供したら、食事の心配はないのですか?」
「そうだ、僕たちも、文官達も提供してお願いした」
ホーリーは馬車の中からソーセージとパンとトマト6個、大根1本、チーズを持っておばさん達の所に向かった。
箱いっぱいのソーセージを見た大人たちは、
「1週間、毎食、ソーセージを食べるつもりだったのかい?」と聞いたので、「はい」と答えた。
「まぁ、いいだろう。1週間で栄養をつければいい。まだまだ子供だ」とおじさん達は言う。
「美味しいですよ。大根とトマトも塩をかければ美味しいですよ」と反論するが、誰も聞いてくれなかったので諦めた。
初日は早めに終了し、食事を取りながら明日の説明を聞く、並べられた食事は、レストラン並みに料理と酒種類が豊富で、人足さんからの提案を受けて良かったと思った。
「ホーリーは荷車に乗せた水をアレクサンダーと一緒に運んでもらいたい。できるか?」
「はい、アレクサンダーにお願いしてみます」
食後はみんなは川で体を流すらしいが、ホーリーは遠慮して、夜食のお菓子をもらって馬車に入った。
トイレは箱馬車に携帯トイレがあって、処理はスライムが処理してくれる。きっと各自のテントにもあると信じたい。
シママが寝る前に訪ねてきて、
「ホーリー大丈夫か?」と聞いたので、「大丈夫だよ。でも、もう眠りたいから寝るね。おやすみ」
疲れているのは、アレクサンダーのご機嫌を取っている為か、それとも興奮しすぎたか?今は、ただ眠りたいと思った。
翌朝は、朝早く目が覚めた。当然だが10時間くらい寝たのだから疲れもとれている。
「おはようございます」とおばさん達に声をかけると、スープとパンをくれた。食べ終わると果物とお茶まで用意されていた。
「皆さんのお食事は素晴らしいですね」
「こういった仕事は1年に何度もないからね。ちょっとしたイベントさ、この話が出てからみんな楽しみにしていたんだよ。食事も各々の自慢料理だからね。美味しかったかい?」
「はい、生まれて初めて食べた物ばかりでした」
ここの人達は、こんな子供が大金を持っている理由を知っている。知っていて普通にしてくれる優しさが感じ取れる。
「街に戻っても食事に気をつけるんだよ。さぁ、そこの人参を洗ってくれ」と、ホーリーの頭を撫でる。
おばさん達は、料理や、川でどのように洗濯するかなど教えてくれる。朝食が終わるとアレクサンダーの出番だ。昨日のバケツの量を3回運ぶそれが今日のノルマだ。」
アレクサンダーが、今日は機嫌よく働いてくれているのは、昨晩、見張りのおじさん達から、たっぷりの水とクズ野菜をもらったらしい‥‥。
「ごめんね、アレキサンダー、魔馬は、魔力だけで生きているのではなく、どうやら餌も水も必要だったのね。反省してます。許してね、反省、反省」
アレクサンダーはチラッとこちらを見たが、重たい荷車を簡単に運搬してくれた。
1回目は生活用水、2回目は固まる砂の為、3回目は基礎の掃除に使うらしい。基礎は区切られた空間だが、色々な用途に使う予定があるので、綺麗にしてもらうと助かる。
3回目が終わった後に川に戻ると、最初のバケツたちに水が汲まれていたので、明日の分もついでに運んだ。運び終わると昼食が始まり、ホーリーは、満腹には勝てずに昼寝に入った。
翌日からは材木組み立てが始まったが、この人たち達人だ。グリークさんが丁寧に指示書を描いてくれたとしても、仕事が早い、どんどん家の形になって行く、人数も多いけど阿吽の呼吸だ。
「グリークさん、本当に1週間で窓まで出来そうですね」
「当たり前だ、ホーリーもお母さんが心配だろう?」
(あっ!そうだ、1週間、ミルサーチを療養所に入れているのだ。健康体で、あの演技力)
「はい、療養所で、少しでも元気になってくれればいいのですが‥‥心配です」




